[OR-2-5] 訪問看護師の身体的リハビリテーションプログラムに対する技術介入
~マニュアルを用いた有効性検証:ランダム化並行群間比較試験~
背景:
先進国では高齢化に伴い地域医療のニーズは高まり,それと同時に訪問看護ニーズも高まっている.また訪問看護師には幅広い役割が求められ,その中にリハビリプログラムの提供も含まれている.しかし,看護師がリハビリに関する教育を受ける機会は少ない.そのような中で,看護師へ集中的もしくは長期的にリハビリプログラムの教育を施した研究報告は世界でもわずかにはあるが,現実的に全ての看護師がそのような教育を受けることは難しい.これまでのところ,訪問看護師に疾患を問わず,効率的に短期間に均一化したリハビリの教育を受けることの有効性について検討した研究は見当たらない.
目的:
地域医療における患者と訪問看護師を対象として,訪問看護師に動画を活用したマニュアルを使用し,簡便な身体的リハビリプログラムの教育を提供することで,介入前後で患者の日常生活動作や生活の質を評価し,その有効性を明確にする.
方法:対象は共同研究機関の訪問看護を利用する全ての患者と,共同研究機関に勤務する訪問看護師とした.症例数は患者150名,訪問看護師17名を目標数とした.3か月間,患者をマニュアルを用いた介入群と用いないコントロール群に分けたランダム化並行群間比較試験を実施した.訪問看護師には単純前後比較試験を実施した.
主要評価項目は,患者のADLに対する効果として介入群とコントロール群における患者のFIMの介入前後の平均の差,患者のQOLに対する効果として介入群とコントロール群における患者のEQ-5D-5Lの介入前後の平均の差の2つとした.
副次的評価項目は,訪問看護師自身が提供するリハビリプログラムに対する満足度として,訪問看護師のVASの介入前後の平均の差とした.
結果:
基準を満たした患者95名を解析した結果,患者のFIMの介入前後の平均の差は,介入群が2.33点,コントロール群-5.91点で介入群が有意に高かった(p<0.001,d=0.78).患者のEQ5D-5Lの介入前後の平均の差は,介入群とコントロール群の間で有意差はなかった(介入群0.01点,コントロール群-0.01点,p=0.376,d=0.14).
基準を満たした訪問看護師13名を解析した結果,訪問看護師のVASは介入前30mm,介入後50mmで,介入後が有意に高かった(p=0.010,Δ=0.71).
本研究により,マニュアルを用いて教育を受けた訪問看護師の身体的リハビリプログラムは,患者のADLにおいて,また看護師自身のリハビリプログラム技術に対する満足度向上に有効性を示した.
結語:
訪問看護師のリハビリプログラム技術に対して,動画を活用し簡便に教育し,疾患を問わず患者にそのプログラムを提供することで,訪問看護師の身体的リハビリプログラムの有効性を明確にできた.本研究は訪問看護師に対して実施した点,対象疾患を問わない点,動画を活用したマニュアルという比較的簡便な教育方法を用いた点に新規性があった.動画という簡便性からリハビリに関する教育が少ない訪問看護師の多くが,無理なくリハビリプログラムを学習し,リハビリに参加することで,より多くの地域医療における患者のADL向上に貢献できることに社会的意義がある.
先進国では高齢化に伴い地域医療のニーズは高まり,それと同時に訪問看護ニーズも高まっている.また訪問看護師には幅広い役割が求められ,その中にリハビリプログラムの提供も含まれている.しかし,看護師がリハビリに関する教育を受ける機会は少ない.そのような中で,看護師へ集中的もしくは長期的にリハビリプログラムの教育を施した研究報告は世界でもわずかにはあるが,現実的に全ての看護師がそのような教育を受けることは難しい.これまでのところ,訪問看護師に疾患を問わず,効率的に短期間に均一化したリハビリの教育を受けることの有効性について検討した研究は見当たらない.
目的:
地域医療における患者と訪問看護師を対象として,訪問看護師に動画を活用したマニュアルを使用し,簡便な身体的リハビリプログラムの教育を提供することで,介入前後で患者の日常生活動作や生活の質を評価し,その有効性を明確にする.
方法:対象は共同研究機関の訪問看護を利用する全ての患者と,共同研究機関に勤務する訪問看護師とした.症例数は患者150名,訪問看護師17名を目標数とした.3か月間,患者をマニュアルを用いた介入群と用いないコントロール群に分けたランダム化並行群間比較試験を実施した.訪問看護師には単純前後比較試験を実施した.
主要評価項目は,患者のADLに対する効果として介入群とコントロール群における患者のFIMの介入前後の平均の差,患者のQOLに対する効果として介入群とコントロール群における患者のEQ-5D-5Lの介入前後の平均の差の2つとした.
副次的評価項目は,訪問看護師自身が提供するリハビリプログラムに対する満足度として,訪問看護師のVASの介入前後の平均の差とした.
結果:
基準を満たした患者95名を解析した結果,患者のFIMの介入前後の平均の差は,介入群が2.33点,コントロール群-5.91点で介入群が有意に高かった(p<0.001,d=0.78).患者のEQ5D-5Lの介入前後の平均の差は,介入群とコントロール群の間で有意差はなかった(介入群0.01点,コントロール群-0.01点,p=0.376,d=0.14).
基準を満たした訪問看護師13名を解析した結果,訪問看護師のVASは介入前30mm,介入後50mmで,介入後が有意に高かった(p=0.010,Δ=0.71).
本研究により,マニュアルを用いて教育を受けた訪問看護師の身体的リハビリプログラムは,患者のADLにおいて,また看護師自身のリハビリプログラム技術に対する満足度向上に有効性を示した.
結語:
訪問看護師のリハビリプログラム技術に対して,動画を活用し簡便に教育し,疾患を問わず患者にそのプログラムを提供することで,訪問看護師の身体的リハビリプログラムの有効性を明確にできた.本研究は訪問看護師に対して実施した点,対象疾患を問わない点,動画を活用したマニュアルという比較的簡便な教育方法を用いた点に新規性があった.動画という簡便性からリハビリに関する教育が少ない訪問看護師の多くが,無理なくリハビリプログラムを学習し,リハビリに参加することで,より多くの地域医療における患者のADL向上に貢献できることに社会的意義がある.