[PA-1-10] 脳卒中患者の日常生活における麻痺側上肢の使用の質に影響を及ぼす要因
【目的】脳卒中による上肢運動麻痺は,日常生活動作における上肢機能の質を示すMotor Activity Log Quality of Movement(以下MAL-QOM)の低下やそれに伴う生活の質の低下と関連があるとされている.(Stinear C.M)先行研究では行動変容を促すとされているtransfer packageなど上肢機能に対する練習内容や上肢麻痺の重症度がMotor Activity Log Amount of Use(以下MAL-AOU)に効果があると報告(佐々木,唐渡ら)はされているが,具体的な上肢練習時間との関連,動作の質の向上に関する因子の報告は少ない.そこで本研究ではMAL-QOMと関連する因子について上肢機能練習時間を含めた調査をすることを目的とする.
【対象と方法】対象は2019年4月から2024年2月までに脳神経外科又は脳神経内科に入院し,回復期病棟を介し退院した脳出血または,脳梗塞の診断を受けた者とした. MALの評価が可能であり, 発症3か月時点でのFugel-Meyer Assessment upper examination(以下FMA-UE)が,Woodburyらの提唱する重症度分類を基準に47点以上を対象とした.除外基準は指示理解が困難な高次脳機能障害および認知症を呈する者,欠損データのある者とした.調査項目はFMA-UE,MAL-AOU,MAL-QOMの入院時より1か月,3か月目時点とその利得,入院時から3か月時点までの上肢機能総練習時間(促通運動,shaping課題,Task practiceの合計),性別,年齢,病型,麻痺手が利き手か,疼痛の有無,感覚障害(異常感覚及び表在深部感覚障害)の有無をカルテより後方視的に取得した.統計解析は傾向スコアマッチングにより群間の背景因子として入院時から1か月時点のFMA-UE,MAL-AOU,MAL-QOMを調整し, MAL-QOMの利得を中央値で2群に分け,調査項目に対して差の検定を行った.有意水準は5%とした.統計ソフトはEZRを用いた.本研究は,当院の倫理委員会(承認番号1198)の承認を得て実施した.
【結果】
解析対象は62名で,傾向スコアマッチングにより対象者は20名(男性10名,平均年齢66.6±14.0歳,右片麻痺8名,脳梗塞14名)であった.QOM利得高値群でAOU利得が有意に高い結果であった.(P値;<0.001)
【考察】
MAL-QOM利得高値群はMAL-AOUの利得が有意に高かった.一方,FMA-UEの3か月時点,FMA-UEの利得は差がなかった.このことよりMAL-QOMは,運動麻痺の回復程度に左右されず,使用頻度の向上に伴い改善することが示唆された. 上肢機能総練習時間に差がなかったことは, 課題指向型訓練が機能指向型訓練と比較してMALの改善に影響があると報告(唐渡ら)されているなど,今後は練習内容毎の調査も必要であると考える. また, MALは主観的評価でもあり,麻痺側上肢が比較的改善している脳卒中患者においても,麻痺側上肢を生活上で使用できない理由として心理的要因が関与(北村)していることや,麻痺側上肢が役に立っているのかなどの主観的有用度とMAL-AOUとの強い関連(松岡ら)も報告されている.今回は,理解度や心理面などの客観的指標を考慮出来ていない為,今後はVASなどの尺度を用いた追加検証が必要である. 本研究は傾向スコアマッチングにより背景因子を調整した中で,MAL-QOMの改善には,MAL-AOUの改善が関連することを明らかにした.MAL-QOMは,QOLの向上にも繋がる重要な要素であり,日常生活での上肢使用を促す動機付けや行動変容(竹林ら)を図り,日常生活での上肢の使用頻度の向上と合わせて動作の質の改善を目指した介入が求められると考える.
【対象と方法】対象は2019年4月から2024年2月までに脳神経外科又は脳神経内科に入院し,回復期病棟を介し退院した脳出血または,脳梗塞の診断を受けた者とした. MALの評価が可能であり, 発症3か月時点でのFugel-Meyer Assessment upper examination(以下FMA-UE)が,Woodburyらの提唱する重症度分類を基準に47点以上を対象とした.除外基準は指示理解が困難な高次脳機能障害および認知症を呈する者,欠損データのある者とした.調査項目はFMA-UE,MAL-AOU,MAL-QOMの入院時より1か月,3か月目時点とその利得,入院時から3か月時点までの上肢機能総練習時間(促通運動,shaping課題,Task practiceの合計),性別,年齢,病型,麻痺手が利き手か,疼痛の有無,感覚障害(異常感覚及び表在深部感覚障害)の有無をカルテより後方視的に取得した.統計解析は傾向スコアマッチングにより群間の背景因子として入院時から1か月時点のFMA-UE,MAL-AOU,MAL-QOMを調整し, MAL-QOMの利得を中央値で2群に分け,調査項目に対して差の検定を行った.有意水準は5%とした.統計ソフトはEZRを用いた.本研究は,当院の倫理委員会(承認番号1198)の承認を得て実施した.
【結果】
解析対象は62名で,傾向スコアマッチングにより対象者は20名(男性10名,平均年齢66.6±14.0歳,右片麻痺8名,脳梗塞14名)であった.QOM利得高値群でAOU利得が有意に高い結果であった.(P値;<0.001)
【考察】
MAL-QOM利得高値群はMAL-AOUの利得が有意に高かった.一方,FMA-UEの3か月時点,FMA-UEの利得は差がなかった.このことよりMAL-QOMは,運動麻痺の回復程度に左右されず,使用頻度の向上に伴い改善することが示唆された. 上肢機能総練習時間に差がなかったことは, 課題指向型訓練が機能指向型訓練と比較してMALの改善に影響があると報告(唐渡ら)されているなど,今後は練習内容毎の調査も必要であると考える. また, MALは主観的評価でもあり,麻痺側上肢が比較的改善している脳卒中患者においても,麻痺側上肢を生活上で使用できない理由として心理的要因が関与(北村)していることや,麻痺側上肢が役に立っているのかなどの主観的有用度とMAL-AOUとの強い関連(松岡ら)も報告されている.今回は,理解度や心理面などの客観的指標を考慮出来ていない為,今後はVASなどの尺度を用いた追加検証が必要である. 本研究は傾向スコアマッチングにより背景因子を調整した中で,MAL-QOMの改善には,MAL-AOUの改善が関連することを明らかにした.MAL-QOMは,QOLの向上にも繋がる重要な要素であり,日常生活での上肢使用を促す動機付けや行動変容(竹林ら)を図り,日常生活での上肢の使用頻度の向上と合わせて動作の質の改善を目指した介入が求められると考える.