[PA-1-11] 重度片麻痺と高次脳機能障害に加えPusher症状を認めた症例に対する作業療法介入
トイレ誘導に向けた取り組み
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下:回リハ)において,脳梗塞後の症例(以下:A氏)を担当した.重度片麻痺と高次脳機能障害に加え,Pusher症状の影響で,ADL全介助レベルだった.本間(2021)らは,Pusher症状のある症例に対して,長期間の作業療法介入により,ADL向上を認めたと報告している.今回,A氏に対して多面的な作業療法介入により,トイレ誘導が可能になったため以下に報告する.本人,家族には口頭,書類にて説明し同意を得ている.
【症例紹介・作業療法初回評価】A氏,70代後半の女性.入院前は独居でADL自立レベル.X年Y月Z日,胆管炎のため当院に入院するも,Z+2日,脳梗塞(左片麻痺)を発症.他院にて脳血管治療を実施.Z+21日,当院に再入院し,リハビリテーション開始.Z+37日,回リハに転棟.Z+39日,担当OTR介入開始.Brunnstrom Recovery Stage(以下:BRS)上肢・手指I・下肢Ⅱ,Burke Lateropulsion Scale(以下:BLS)6/6点(座位と移乗),Trunk Impairment Scale(以下:TIS)0点.高次脳機能障害は線分抹消,模写,線分二等分線の結果より半側空間無視ありと判断した.また,観察から注意障害を認めていた.ADLはFunctional Independence Measure(以下:FIM)25/124点(運動13点/認知12点).重度の片麻痺とPusher症状の影響で座位姿勢の崩れが著明であった.加えて,高次脳機能障害の影響でPusher症状がさらに強く出現していた.結果,座位保持から不安定性を認めているため移乗動作が困難で,離床を進めることができていない状況であった.介入当初より,「一人で歩いてトイレに行きたい」と希望が挙がった.
【介入経過・結果】トイレ誘導に向けた介入は①端座位保持・起立練習②実際場面でのトイレ動作練習③高次脳機能訓練を実施.①の工夫として,点滴棒や鏡の使用による視覚的手がかりと右側に把持物を置いて末梢からの手がかりとOTRの介助により安定性を保証した.また,注意がそれないように時間の目安を視覚化,OTRは姿勢の崩れが生じた際の声かけや正中への姿勢の促し,介助下で誘導を実施.②は初期から尿意や便意の訴えがあったため,看護師と2人介助でトイレ誘導を実施.便座座位の崩れが著明で,常に介助を要したが,手すりに健側前腕を置くことで,比較的安定した座位保持が可能であった.座位・立位保持や移乗動作の介助量軽減に伴い,担当OTR介入時は1人介助でトイレ誘導が可能になる.離床促進とトイレ誘導に向けて,Z+106日に車椅子移乗,Z+113日にトイレ動作の介助方法とA氏のできる能力を看護師へ伝達し実践を依頼.③は机上活動を中心に実施.左側へ注意を向ける課題を反復し,徐々に難易度を上げた.Z+148日,再評価ではBLS3/6点(座位1/3点,移乗2/3点),TIS5/7点(静止座位),BIT72/146(通常検査),FIM44/126点(運動23点/認知21点).Pusher症状軽減,体幹機能,高次脳機能障害の改善に伴い,端座位保持が安定し移乗動作の介助量が軽減.日中は本人からナースコールもあり,トイレ誘導が可能となる.
【考察】重度の麻痺,高次脳機能障害,Pusher症状を伴うADL全介助レベルの症例に対して病棟でのトイレ誘導に向けて作業療法介入を行った.視覚的手がかりを利用し,身体垂直性の再学習を目標にした長期間の作業療法介入でPusher症状の改善を認めた症例が報告されている(本間ら,2021).今回,視覚的手がかりの利用による端座位保持練習により座位能力が向上した.結果,移乗動作の介助量が軽減しトイレ誘導につながったと考える.しかし,連携面においては細かい動作介助方法の共有が不十分で課題を残した.
【症例紹介・作業療法初回評価】A氏,70代後半の女性.入院前は独居でADL自立レベル.X年Y月Z日,胆管炎のため当院に入院するも,Z+2日,脳梗塞(左片麻痺)を発症.他院にて脳血管治療を実施.Z+21日,当院に再入院し,リハビリテーション開始.Z+37日,回リハに転棟.Z+39日,担当OTR介入開始.Brunnstrom Recovery Stage(以下:BRS)上肢・手指I・下肢Ⅱ,Burke Lateropulsion Scale(以下:BLS)6/6点(座位と移乗),Trunk Impairment Scale(以下:TIS)0点.高次脳機能障害は線分抹消,模写,線分二等分線の結果より半側空間無視ありと判断した.また,観察から注意障害を認めていた.ADLはFunctional Independence Measure(以下:FIM)25/124点(運動13点/認知12点).重度の片麻痺とPusher症状の影響で座位姿勢の崩れが著明であった.加えて,高次脳機能障害の影響でPusher症状がさらに強く出現していた.結果,座位保持から不安定性を認めているため移乗動作が困難で,離床を進めることができていない状況であった.介入当初より,「一人で歩いてトイレに行きたい」と希望が挙がった.
【介入経過・結果】トイレ誘導に向けた介入は①端座位保持・起立練習②実際場面でのトイレ動作練習③高次脳機能訓練を実施.①の工夫として,点滴棒や鏡の使用による視覚的手がかりと右側に把持物を置いて末梢からの手がかりとOTRの介助により安定性を保証した.また,注意がそれないように時間の目安を視覚化,OTRは姿勢の崩れが生じた際の声かけや正中への姿勢の促し,介助下で誘導を実施.②は初期から尿意や便意の訴えがあったため,看護師と2人介助でトイレ誘導を実施.便座座位の崩れが著明で,常に介助を要したが,手すりに健側前腕を置くことで,比較的安定した座位保持が可能であった.座位・立位保持や移乗動作の介助量軽減に伴い,担当OTR介入時は1人介助でトイレ誘導が可能になる.離床促進とトイレ誘導に向けて,Z+106日に車椅子移乗,Z+113日にトイレ動作の介助方法とA氏のできる能力を看護師へ伝達し実践を依頼.③は机上活動を中心に実施.左側へ注意を向ける課題を反復し,徐々に難易度を上げた.Z+148日,再評価ではBLS3/6点(座位1/3点,移乗2/3点),TIS5/7点(静止座位),BIT72/146(通常検査),FIM44/126点(運動23点/認知21点).Pusher症状軽減,体幹機能,高次脳機能障害の改善に伴い,端座位保持が安定し移乗動作の介助量が軽減.日中は本人からナースコールもあり,トイレ誘導が可能となる.
【考察】重度の麻痺,高次脳機能障害,Pusher症状を伴うADL全介助レベルの症例に対して病棟でのトイレ誘導に向けて作業療法介入を行った.視覚的手がかりを利用し,身体垂直性の再学習を目標にした長期間の作業療法介入でPusher症状の改善を認めた症例が報告されている(本間ら,2021).今回,視覚的手がかりの利用による端座位保持練習により座位能力が向上した.結果,移乗動作の介助量が軽減しトイレ誘導につながったと考える.しかし,連携面においては細かい動作介助方法の共有が不十分で課題を残した.