[PA-1-12] 回復期脳卒中患者に対しgoal based shared decision makingモデルを用いて上肢訓練を進めた事例報告
【はじめに】近年Evidence based practice(EBP)が普及しており,EBPを提供するためにはShared decision making(SDM)が重要視されている.SDMを促進するツールとしてGoal based SDMモデルが開発されたが,回復期脳卒中患者に対して導入した報告は少ない.今回,Goal based SDMモデルを用いてEBPに基づき,事例と協働的に上肢訓練を進めた結果,主体的に訓練へ参加する様子が見られ,上肢機能改善と,目標動作の一部獲得に至ったため報告する.尚,本報告に当たり事例に書面にて同意を得ている.
【事例紹介】事例は右視床出血により左片麻痺を呈した50代の男性である.子供と妻と三人で暮らし,カメラマン,ディレクターとして勤務していた.62病日に回復期へ入院となり,Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity(FMA-UE)は12点,表在・深部感覚は重度鈍麻であった.1.5横指の亜脱臼も認め,Modified Ashworth Scale(MAS)が肘屈筋に1+,肘伸筋・手関節1であった.また,Motor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)とQuality of Movement(QOM)はともに0点だった.
【方法と経過】goal team talkでは,goal boardを用いて優先度をつけて目標設定を行った.基本的目標では夢であった仕事の再開,父親として役割の再獲得が挙がり,機能的目標では書類を書く際に左手で紙を押さえる,子供に教える立場や会食でのマナーとして左手で食器を持つ,仕事の鞄を左手で持って歩く,カメラを構えるなどが挙がった.疾患固有の目標は,左手を動かせる,亜脱臼の改善が聴取された.goal option talkでは目標の実現に向けた介入方法を,特徴や目標への影響,リスクについて説明し,症例の好みや考えを交えて相談した.goal decision talkでは介入に対して同意を示し,約4Wごとに再評価と目標や介入方法の検討を行うこととした.
Ⅰ期(64~118病日)では随意性向上に向け,肩や肘,前腕に対し電気刺激療法併用下での反復促通訓練を行い,ミラーセラピーを自主練習として導入した.また,亜脱臼改善目的に,電気刺激療法を行った.経過の中で積極的に自主練習を行う様子や訓練に対する質問が増えていった.
Ⅱ期(120~146病日)ではさらに随意性向上を目指し,肩に対して促通反復療法を行い,自主練習として手関節,手指伸展に対する電気刺激療法を導入した.また,痙縮抑制に振動刺激療法を行った.機能的目標の達成に向け,課題指向型訓練(TOT)を電気刺激療法と装具療法を併用して行った.
Ⅲ期(148~168病日)では振動刺激療法とTOTは継続し,機能的目標の動作を生活場面で行う為,Transfer packageを導入した.また,自主練習としてTOTを指導した.すると,事例が主体的に麻痺手の使用場面の相談をする様子や,積極的に麻痺手を使用する場面がみられた.
【結果】FMA-UEは42点,亜脱臼は0.5横指以下に改善され,表在と深部感覚は重度鈍麻,MASは肘関節・手関節・手指2であった.MALのAOUは1.2点,QOMは1.1点と麻痺手の生活内使用が増加し,左手で紙を押さえて書く,鞄を持って歩く,食器を持ち食事が可能となり,目標動作の一部獲得に至った.
【考察】回復期における臨床的に意義のある最小変化量(MCID)はFMA-UEが10〜11点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.1点と報告されている.本介入の結果,MCIDを超える変化を認めており,効果的な介入であったことが示唆される.また,SDMによるEBPを提供した場合,介入に対するアドヒアランスを高めると報告されており,本症例も積極的に自主練習を行う様子や主体的に訓練へ参加する様子が見られた.Goal based SDMモデルを用いて,事例の目標を引き出し,介入方法と整合させ,意思決定を促進することができたため,主体的な参加へと繋がり,上肢機能の改善と目標動作の一部獲得に寄与したのではないかと考える.
【事例紹介】事例は右視床出血により左片麻痺を呈した50代の男性である.子供と妻と三人で暮らし,カメラマン,ディレクターとして勤務していた.62病日に回復期へ入院となり,Fugl-Meyer Assessment-Upper Extremity(FMA-UE)は12点,表在・深部感覚は重度鈍麻であった.1.5横指の亜脱臼も認め,Modified Ashworth Scale(MAS)が肘屈筋に1+,肘伸筋・手関節1であった.また,Motor Activity Log(MAL)のAmount of Use(AOU)とQuality of Movement(QOM)はともに0点だった.
【方法と経過】goal team talkでは,goal boardを用いて優先度をつけて目標設定を行った.基本的目標では夢であった仕事の再開,父親として役割の再獲得が挙がり,機能的目標では書類を書く際に左手で紙を押さえる,子供に教える立場や会食でのマナーとして左手で食器を持つ,仕事の鞄を左手で持って歩く,カメラを構えるなどが挙がった.疾患固有の目標は,左手を動かせる,亜脱臼の改善が聴取された.goal option talkでは目標の実現に向けた介入方法を,特徴や目標への影響,リスクについて説明し,症例の好みや考えを交えて相談した.goal decision talkでは介入に対して同意を示し,約4Wごとに再評価と目標や介入方法の検討を行うこととした.
Ⅰ期(64~118病日)では随意性向上に向け,肩や肘,前腕に対し電気刺激療法併用下での反復促通訓練を行い,ミラーセラピーを自主練習として導入した.また,亜脱臼改善目的に,電気刺激療法を行った.経過の中で積極的に自主練習を行う様子や訓練に対する質問が増えていった.
Ⅱ期(120~146病日)ではさらに随意性向上を目指し,肩に対して促通反復療法を行い,自主練習として手関節,手指伸展に対する電気刺激療法を導入した.また,痙縮抑制に振動刺激療法を行った.機能的目標の達成に向け,課題指向型訓練(TOT)を電気刺激療法と装具療法を併用して行った.
Ⅲ期(148~168病日)では振動刺激療法とTOTは継続し,機能的目標の動作を生活場面で行う為,Transfer packageを導入した.また,自主練習としてTOTを指導した.すると,事例が主体的に麻痺手の使用場面の相談をする様子や,積極的に麻痺手を使用する場面がみられた.
【結果】FMA-UEは42点,亜脱臼は0.5横指以下に改善され,表在と深部感覚は重度鈍麻,MASは肘関節・手関節・手指2であった.MALのAOUは1.2点,QOMは1.1点と麻痺手の生活内使用が増加し,左手で紙を押さえて書く,鞄を持って歩く,食器を持ち食事が可能となり,目標動作の一部獲得に至った.
【考察】回復期における臨床的に意義のある最小変化量(MCID)はFMA-UEが10〜11点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.1点と報告されている.本介入の結果,MCIDを超える変化を認めており,効果的な介入であったことが示唆される.また,SDMによるEBPを提供した場合,介入に対するアドヒアランスを高めると報告されており,本症例も積極的に自主練習を行う様子や主体的に訓練へ参加する様子が見られた.Goal based SDMモデルを用いて,事例の目標を引き出し,介入方法と整合させ,意思決定を促進することができたため,主体的な参加へと繋がり,上肢機能の改善と目標動作の一部獲得に寄与したのではないかと考える.