第58回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-1-13] 亜急性期脳卒中患者におけるSimple Test for Evaluating Hand Functionの最小可検変化量の検討

今井 卓也1, 善養寺 航耶1, 榊原 望1, 小林 壮太1, 小林 昭博2 (1.富岡地域医療企業団 公立七日市病院 リハビリテーション部, 2.群馬医療福祉大学 リハビリテーション学部)

【はじめに】本邦では上肢麻痺の運動機能評価に簡易上肢機能検査(Simple Test for Evaluating Hand Function;STEF)が広く普及している.STEFはFugl-Meyer Assessment,Action Research Arm Testや,Motor Activity Logとの間に高い相関を認め,優れた内的一貫性を示すと報告されている(Shindo,2015).一方で,尺度評価の国際基準であるConsensus-based standards for the selection of health measurementでは,解釈可能性について検証されることが望ましいとされている.STEFは再検査の信頼性の報告はあるものの(Kaneko,1990),解釈可能性の一つである最小可検変化量(Minimal Detectable Change;MDC)の報告はなく,臨床使用における阻害因子となることが想定される.
【目的】本研究の目的は,亜急性期脳卒中患者におけるSTEFのMDCを明らかにすることである.
【方法】本研究は単一施設による横断的研究であり,対象は2022年10月から2023年12月の間に当院へ入院した脳卒中患者29名とした.取り込み基準は,(1)初発の脳卒中患者,(2)STEFが評価可能な者,(3)年齢が40~89歳,(4)病前生活が自立していた者とした.除外基準は,(1)意識障害および失語症や認知症にて指示理解が困難な者,(2)椅子座位が困難な者とした.STEFは,1回目の評価の翌日に2回目の評価を実施した.1回目と2回目の評価は同一検者とし,椅子・机は同じものを使用した.評価は各担当療法士がSTEFの検査マニュアルを厳守して実施した.統計解析は,級内相関係数(intraclass correlation coefficient;ICC)にて信頼性を検証した.本研究では,検者間でマニュアルを厳守して測定方法を統一したため,ICC(1,1)を使用した.またBland Altman分析を用いて対応する2群の測定値間の平均と差から,測定値が内包する加算誤差の有無を可視化した.比例誤差は,2群の測定値の差を従属変数,2群の測定値の平均値を独立変数とし,回帰分析を用いて有意性を確認した.偶然誤差の検証には,MDCの95%信頼区間(MDC95)を求めた.MDC95は測定の標準誤差(Standard Error of Measurement;SEM)×1.96×√2を使用することとした.本研究は「人を対象とする医学的研究に関する倫理指針」に基づいて実施し,対象者には研究の主旨について口頭および紙面にて説明した上で書面にて同意を得た.また,倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:20220080).
【結果】対象の内訳は,男性18名/女性11名,脳出血5名/脳梗塞24名であった.平均年齢は72.8±10.9歳,発症からの期間は21.9±8.3日であった.STEF麻痺側の平均は1回目54.9±34.6点,2回目58.2±34.1であり,ICC(1,1)は0.99であった.Bland Altman Plotは負の方向へ分布の偏りを認めたが,横軸の増加にともなう2つの測定値の差の増加は認めなかった.SEMは2.59点,95% limit of agree(LOA)は-10.513から3.823点,回帰分析では有意差を認めなかった.MDC95は7.17点であった.
【考察】亜急性期脳卒中患者におけるSTEFのMDCは7.17点であった.Bland Altman Plotは負の方向への偏りを認めたが,LOAは信頼区間に0が含まれる結果であり,加算誤差は認めなかった.また,比例誤差はBland Altman Plotでは比例誤差の所見を認めず,回帰式も有意差はなかった.これらのことから,系統誤差は確認されず,STEF測定の際に生じた誤差は偶然誤差であったと考える.本研究で明らかになったMDCは臨床での解釈を促進させる一助となる.