[PA-1-14] 脳卒中後の無気力に対する評価と介入および効果:スコーピングレビュー
【はじめに】
脳卒中患者の約3人に一人はメンタルヘルスの問題を抱えており,特に脳卒中の後遺症である無気力はうつ病よりも頻度が高く,重篤なうつ病や認知障害を引き起こす.先行研究から,脳卒中後無気力は,機能回復に悪影響を及ぼし,QOLを低下させ,介護者の疲労を招く可能性があると報告されている.現在脳卒中後無気力に対する,薬物療法や行動アプローチなどの介入効果が報告されている.しかし,脳卒中後の無気力に対する治療の指針となる質の高いエビデンスは報告されていない.本研究の目的は,脳卒中後の無気力の評価,介入とその効果のマッピングである.
【方法】
本研究はスコーピングレビューのPRISMA-ScRに基づき実施した.検索エンジンはPubMed, CINAHL,検索は,2000年以降の査読付きの介入研究,使用言語は英語,形態はJournal Articleの文献とした.検索式は,((apathy)OR (post stroke OR post-stroke OR poststroke OR after stroke)OR (treatment OR approach OR intervention OR drug OR program OR pharmacy OR therapy ))とした.検索された論文のうち,重複論文を除外し,タイトルとアブストラクトでスクリーニングを実施した.適合基準は以下とした:➀実験的研究,②脳卒中後無気力の患者,③無気力の改善を目的とした薬物療法もしくは非薬物療法,④検証されたツールを用いて無気力を評価している.検索された論文を独立した2名の研究者が精読し対象文献を抽出し,マッピングした.
【結果】
検索エンジンを用いて上記のキーワードで検索した結果,172件が抽出された(検索日:2023年10月4日).重複と解説総説である32件を削除し,適合基準に基づきタイトルと要旨に対するスクリーニングを通して,本研究と関連のない論文95件を除外した.最終的に7件が適合論文として抽出された.7件の論文の中で,Apathy Scale(AS)の機能尺度が最も多く使用されていた.運動再学習プログラムとBobathアプローチを比較し,運動再学習プログラムは無気力を抑制する効果がみられた.薬物療法の効果を検証した論文は4本であった.エスシタロプラム,900mgネフィラセタム投与群は,ASスコアは減少し,無気力を抑制する効果が得られた.さらに問題解決療法群は,薬物療法よりASスコアの減少が大きかった.一方で,フルオキセチンは無気力の予防には効果がないことが示唆された.戦略トレーニングは,リフレクティブリスニングと比較して,3か月目と6か月目に無気力のスコアの減少がみられた.また,rTMSは,慢性脳卒中患者の無気力を改善する可能性が示唆された.
【考察】
本研究の結果,対象文献ではASが多く使用されていた.しかし,無気力の評価は,臨床現場では観察が主体であり評価尺度の使用が少ないことが報告されている.今後はASを用いた客観的な評価が必要と考えられる.薬物療法では,無気力の改善に対して一定の効果が得られる薬剤と得られない薬剤があるため,薬剤の選択は慎重に行われるべきである.次に,運動再学習プログラムは対象者が特定の技能を習得するために用いられる理論であり,有効であると報告されている.また,リハビリテーションにおいても導入可能な方法であり,将来的に脳卒中後の無気力への有用性が期待される.最後に,rTMSは治療効果が明瞭であるが,機器や治療者は十分に普及しておらず,治療を受ける機会に制限があることが課題となる.本研究の限界として,2つの検索エンジンを使用し,英語のみを対象にしている点が挙げられる.また,脳卒中後のうつなどの重複を除外したため,今後の研究ではこれらを含めた検討が必要である.
脳卒中患者の約3人に一人はメンタルヘルスの問題を抱えており,特に脳卒中の後遺症である無気力はうつ病よりも頻度が高く,重篤なうつ病や認知障害を引き起こす.先行研究から,脳卒中後無気力は,機能回復に悪影響を及ぼし,QOLを低下させ,介護者の疲労を招く可能性があると報告されている.現在脳卒中後無気力に対する,薬物療法や行動アプローチなどの介入効果が報告されている.しかし,脳卒中後の無気力に対する治療の指針となる質の高いエビデンスは報告されていない.本研究の目的は,脳卒中後の無気力の評価,介入とその効果のマッピングである.
【方法】
本研究はスコーピングレビューのPRISMA-ScRに基づき実施した.検索エンジンはPubMed, CINAHL,検索は,2000年以降の査読付きの介入研究,使用言語は英語,形態はJournal Articleの文献とした.検索式は,((apathy)OR (post stroke OR post-stroke OR poststroke OR after stroke)OR (treatment OR approach OR intervention OR drug OR program OR pharmacy OR therapy ))とした.検索された論文のうち,重複論文を除外し,タイトルとアブストラクトでスクリーニングを実施した.適合基準は以下とした:➀実験的研究,②脳卒中後無気力の患者,③無気力の改善を目的とした薬物療法もしくは非薬物療法,④検証されたツールを用いて無気力を評価している.検索された論文を独立した2名の研究者が精読し対象文献を抽出し,マッピングした.
【結果】
検索エンジンを用いて上記のキーワードで検索した結果,172件が抽出された(検索日:2023年10月4日).重複と解説総説である32件を削除し,適合基準に基づきタイトルと要旨に対するスクリーニングを通して,本研究と関連のない論文95件を除外した.最終的に7件が適合論文として抽出された.7件の論文の中で,Apathy Scale(AS)の機能尺度が最も多く使用されていた.運動再学習プログラムとBobathアプローチを比較し,運動再学習プログラムは無気力を抑制する効果がみられた.薬物療法の効果を検証した論文は4本であった.エスシタロプラム,900mgネフィラセタム投与群は,ASスコアは減少し,無気力を抑制する効果が得られた.さらに問題解決療法群は,薬物療法よりASスコアの減少が大きかった.一方で,フルオキセチンは無気力の予防には効果がないことが示唆された.戦略トレーニングは,リフレクティブリスニングと比較して,3か月目と6か月目に無気力のスコアの減少がみられた.また,rTMSは,慢性脳卒中患者の無気力を改善する可能性が示唆された.
【考察】
本研究の結果,対象文献ではASが多く使用されていた.しかし,無気力の評価は,臨床現場では観察が主体であり評価尺度の使用が少ないことが報告されている.今後はASを用いた客観的な評価が必要と考えられる.薬物療法では,無気力の改善に対して一定の効果が得られる薬剤と得られない薬剤があるため,薬剤の選択は慎重に行われるべきである.次に,運動再学習プログラムは対象者が特定の技能を習得するために用いられる理論であり,有効であると報告されている.また,リハビリテーションにおいても導入可能な方法であり,将来的に脳卒中後の無気力への有用性が期待される.最後に,rTMSは治療効果が明瞭であるが,機器や治療者は十分に普及しておらず,治療を受ける機会に制限があることが課題となる.本研究の限界として,2つの検索エンジンを使用し,英語のみを対象にしている点が挙げられる.また,脳卒中後のうつなどの重複を除外したため,今後の研究ではこれらを含めた検討が必要である.