第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

2024年11月9日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-1-17] コロナワクチン接種後にギラン・バレー症候群を来した症例

経過報告及び心理機能が与える影響

久保 祥太郎1, 川嶋 優希1, 西川 舞1, 池松 恭平2 (1.社会医療法人 青洲会 青洲会クリニック 外来リハビリテーション, 2.社会医療法人 青洲会 介護老人保健施設 青洲の里 訪問リハビリテーション)

【はじめに】
コロナワクチン接種後のギラン・バレー症候群(以下GBS)疑いを含めた症例報告がある.一般的に予後は良好で6ヶ月以内に完全回復することが多い.コロナワクチン接種後にGBSを発症した症例を担当し,経過報告を含め趣味活動再開へ向けたリハビリを考察する.
【症例紹介】
年齢:70歳代 性別:女性 主訴:足の力が入らない.ふらふらする.
経過:0病日に5回目新型コロナワクチン接種施行.20病日の午後から筋力低下による起立困難や歩行障害,構音障害が出現し当院受診.22病日にA病院に精査目的で検査入院しGBS診断.23病日A病院リハビリ加療開始.25病日退院.33病日より当院外来リハビリ開始.
家族歴:夫と2人暮らし.介護力あり.病前ADL:自立.
趣味:グランドゴルフ.目標:グランドゴルフが行える.病前ADLまで改善.
【結果】(初期評価33病日→中間評価77病日→最終評価140病日の順に変化点のみ記載)
握力検査:(右/左)18.8㎏/14.6㎏→18.4㎏/16.8㎏→18.5㎏/19.4㎏.
10m歩行テスト:12.23秒→8.20秒→7.44秒.
Time up go test(以下TUG):24.48秒→9.97秒→6.75秒.
Berg Balance Scale(以下BBS):49/56点→55点→56点.
Functional Independence Measure(以下FIM):123/126点→124点→125点.
心理面:ふらつきなど身体面からネガティブな発言がきかれる→身体面の改善から自信がつき,表情も明るく笑顔が増えた→目標を達成し自ら動き出す
【考察】
外来リハビリ開始時は歩行障害があり,筋力低下・バランス能力低下が見られ杖歩行近位監視~軽介助レベルであった.発症1ヶ月で起坐・起立が自立し,かつ握力の回復があると早期回復群となると報告1)がある.本症例に該当し短期間の機能回復が示唆された.週2回40分のリハビリを実施.介入初期は,悲観的訴えが多く聞かれたが,リハビリ毎に少しずつバランス向上が見られ,43病日には杖歩行見守りレベルとなり,出来るようになったことを報告するなど心理機能が安定したことで意欲的にリハビリを取り組まれる.自宅でのリハビリとして夫と行う屋外歩行や生活動作も積極的に参加してもらった.77病日で中間評価を実施し,BBS・TUG・10m歩行テスト・FIMで向上し,連続歩行では1㎞以上可能となる.自宅での運動が定着できており,リハビリ頻度を週1回に調整する.108病日よりグランドゴルフに参加.140病日で病前レベルへ身体機能改善しリハビリ卒業となる.
本症例は,ワクチン投与後20日より発症し140日に症状改善した回復過程となり,先行感染がコロナワクチン接種後以外のGBSと同様の経過となった.外来リハビリ開始が病院退院後翌日より出来たことが要因の1つである.外来リハビリとして社会参加へのリハビリに対する予後推定因子として,退院後から外来リハビリへの連携及び心理機能の安定が必要であると考える.課題として,評価日が一定間隔を保てなかったため,今後研究を進めていく上でスタッフ間での共有を強化し円滑な研究を目指していきたい.
【参考文献】
1)間嶋満:ギラン・バレー症候群の予後推定因子.リハビリテーション医学.1981.18巻6号.357-358