[PA-1-18] 就労の決断を後押し
語りでつなぐ作業療法
【目的】今回,脳出血を発症した50代男性(以下A氏)を担当する機会を得た.当院回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ病棟)への入退院,外来作業療法(以下外来OT),就労支援へと移行し,社会復帰を目指した経過について,クリニカルリーズニング(以下CR)を用いてまとめたため,以下に報告する.報告に際し,本人,家族の承諾を得ている.
【方法】物語的CR:20-30代にバーを経営するため海外修行し,帰国後バーテンダーとしてホテル勤務を開始.A氏の希望は,①右手を使いたい②病前生活に戻りたい③もう一度働きたい.妻の希望は,できる限り元の状態に戻ってほしい.復職は不安だが,できる事から頑張ってほしい.科学的CR:疾患の特性,予後予測は,被殻は脳出血好発部位であり,上肢機能予後不良かつ高次脳機能障害の合併がある.また,血腫量が12.5-20mlかつ60代以下の左被殻出血症例の機能的自立度評価法(以下FIM)運動項目平均89点,失語症の軽度残存と報告がある.他部門情報では,主治医より血腫量20ml以下,右上肢痛は神経障害性疼痛で慢性化する,失語,高次脳機能障害の長期残存の可能性が高い.言語聴覚士より喚語困難,錯書がある.文献情報は,脳卒中および作業療法ガイドラインのエビデンスレベル高,推奨レベルA,就労に関しては,就労支援と作業療法,職業準備性ピラミッドを参考とした.検査結果(入院時/退院時)より,Motor Activity Log:AOU,QOM0/AOU2.2,QOM2.4.Fugl-Meyer Assessment上肢項目:19/60, Numerical Ratin Scale:4-10/4-7,右前腕しびれ,上腕周囲の神経障害性疼痛あり/しびれ,神経障害性疼痛が残存.Trail Making Test日本版-A102秒,-B285秒 /-A73秒,-B132秒.FIM72/120実際的,倫理的CR:A氏の希望①より,機能および実動作訓練が可能,上肢機能予後が未知数.A氏の希望②③より,退院後生活のイメージ不足,復職に対する諦め,入院中の就労支援の限界.妻は週1回の面会で積極的な関わりが可能.相互交流的CR:入院中の思いを聴取し,早期対応,解決に努めた.A氏,妻と方針,合意目標を一致させた.作業療法計画の実践 では,A氏の希望①②に対して,低周波療法の活用,CI療法を参考とした実践的介入,機能予後の説明を実施.A氏の希望③に対して,就労の意向を段階的に確認し,退院後フォローアップの提案.妻の希望に対して,進捗報告を密に行い,退院支援開始時期やフォローアップについて共有した.全体を通し,語りを用いて,A氏が経験している疾病や障害の意味,妻の支援者としての立場を考慮した.
【経過】回リハ病棟入院から5カ月後,自宅退院し,当院外来OT開始.介入2カ月頃,生活リズムの再構築,失語症の改善を認めた.そこで,作業療法士(以下OTR)が近隣の職業能力開発校と連携を図り,職業評価,準備支援の時期を確認し,A氏,妻,OTRでの三者面接の中で就労準備を提案した.提案の際,OTRが外来OT終了後も,復職まで支援することを約束した.面談より,本人は「不安はあるけど今できることを頑張りたい」,妻は「一緒に頑張ります」という発言が聞かれた.介入3ヶ月で外来OTを終了し,近隣の職業能力開発校への通所利用が決定した.決定の際,A氏と妻より,OTRが支援を継続してくれることで「安心して決断できた」という発言が聞かれた.
【考察】今回,A氏の入退院から就労準備まで作業療法CRを根幹にA氏,妻の希望に対する支援ができた.A氏は,就労準備期にあり,医療機関での支援に限界がある.今後は間接的支援が中心となるが, 職業能力開発校と連携しA氏の「もう一度働きたい」を支援していきたい.作業療法CRに関して, 丸山らによると,実践報告は少ない現状があることから,有効性について明らかにし,実践報告を蓄積していきたい.
【方法】物語的CR:20-30代にバーを経営するため海外修行し,帰国後バーテンダーとしてホテル勤務を開始.A氏の希望は,①右手を使いたい②病前生活に戻りたい③もう一度働きたい.妻の希望は,できる限り元の状態に戻ってほしい.復職は不安だが,できる事から頑張ってほしい.科学的CR:疾患の特性,予後予測は,被殻は脳出血好発部位であり,上肢機能予後不良かつ高次脳機能障害の合併がある.また,血腫量が12.5-20mlかつ60代以下の左被殻出血症例の機能的自立度評価法(以下FIM)運動項目平均89点,失語症の軽度残存と報告がある.他部門情報では,主治医より血腫量20ml以下,右上肢痛は神経障害性疼痛で慢性化する,失語,高次脳機能障害の長期残存の可能性が高い.言語聴覚士より喚語困難,錯書がある.文献情報は,脳卒中および作業療法ガイドラインのエビデンスレベル高,推奨レベルA,就労に関しては,就労支援と作業療法,職業準備性ピラミッドを参考とした.検査結果(入院時/退院時)より,Motor Activity Log:AOU,QOM0/AOU2.2,QOM2.4.Fugl-Meyer Assessment上肢項目:19/60, Numerical Ratin Scale:4-10/4-7,右前腕しびれ,上腕周囲の神経障害性疼痛あり/しびれ,神経障害性疼痛が残存.Trail Making Test日本版-A102秒,-B285秒 /-A73秒,-B132秒.FIM72/120実際的,倫理的CR:A氏の希望①より,機能および実動作訓練が可能,上肢機能予後が未知数.A氏の希望②③より,退院後生活のイメージ不足,復職に対する諦め,入院中の就労支援の限界.妻は週1回の面会で積極的な関わりが可能.相互交流的CR:入院中の思いを聴取し,早期対応,解決に努めた.A氏,妻と方針,合意目標を一致させた.作業療法計画の実践 では,A氏の希望①②に対して,低周波療法の活用,CI療法を参考とした実践的介入,機能予後の説明を実施.A氏の希望③に対して,就労の意向を段階的に確認し,退院後フォローアップの提案.妻の希望に対して,進捗報告を密に行い,退院支援開始時期やフォローアップについて共有した.全体を通し,語りを用いて,A氏が経験している疾病や障害の意味,妻の支援者としての立場を考慮した.
【経過】回リハ病棟入院から5カ月後,自宅退院し,当院外来OT開始.介入2カ月頃,生活リズムの再構築,失語症の改善を認めた.そこで,作業療法士(以下OTR)が近隣の職業能力開発校と連携を図り,職業評価,準備支援の時期を確認し,A氏,妻,OTRでの三者面接の中で就労準備を提案した.提案の際,OTRが外来OT終了後も,復職まで支援することを約束した.面談より,本人は「不安はあるけど今できることを頑張りたい」,妻は「一緒に頑張ります」という発言が聞かれた.介入3ヶ月で外来OTを終了し,近隣の職業能力開発校への通所利用が決定した.決定の際,A氏と妻より,OTRが支援を継続してくれることで「安心して決断できた」という発言が聞かれた.
【考察】今回,A氏の入退院から就労準備まで作業療法CRを根幹にA氏,妻の希望に対する支援ができた.A氏は,就労準備期にあり,医療機関での支援に限界がある.今後は間接的支援が中心となるが, 職業能力開発校と連携しA氏の「もう一度働きたい」を支援していきたい.作業療法CRに関して, 丸山らによると,実践報告は少ない現状があることから,有効性について明らかにし,実践報告を蓄積していきたい.