[PA-1-19] 当院入院中に代替的コミュニケーションの獲得および動作介助量軽減を認めたBickerstaff脳幹脳炎の一例
【はじめに】Bickerstaff脳幹脳炎(以下,BBE)は,眼球運動障害,運動失調,意識障害の特徴的な臨床徴候を示し,脳幹を病変の首座とする自己免疫疾患で,症状は4週間以内にピークを迎え,その後徐々に回復に向かうとされている.今回,急性期からリハビリテーションを開始し,比較的良好な経過を辿り回復期リハビリテーション病院への転院に繋がった一例を報告する.なお,発表について書面にて説明を行い本人の同意を得て,当院の倫理審査委員会の承認(管理No.2023-10)を受けている.
【症例】40代男性.職業:調理師.独居.
【現病歴】構音障害,四肢脱力出現し本人が救急要請.当院に搬送され,精査・加療目的に同日入院(第1病日).第2病日に気管内挿管.血漿交換療法,ステロイドパルス療法開始.第11病日に気管切開術施行.第12病日に理学療法,作業療法,言語聴覚療法開始.
【初回評価(第12病日)】JCSⅢ-300.四肢は弛緩.左右足関節背屈制限あり.人工呼吸器:換気モードSPN-CPAP,酸素濃度:30%,PEEP:5,PS:5.ADL:FIM;18/126点(運動項目13点,認知項目5点)
【経過】
<身体機能>第12~18病日はベッド上でのROM練習,ポジショニング中心に介入.第17病日に人工呼吸器離脱.意識レベル改善に伴い,理学療法士とともに第25病日に端座位練習開始.第28病日からベッドサイドで起立台での立位練習開始.第33病日に室内気に変更.起立(第36病日~),平行棒内歩行(第42病日~),車椅子駆動・歩行器歩行(第46病日~),立位作業・立位バランス(第51病日~),杖歩行(第56病日)等の練習を施行した.
<コミュニケーション>第24病日にClosed Questionに対して頷き・首振りの反応が出現.第31病日にハンドサイン(ピース,グッド)を用いるなど表出の種類が増加.第36病日にベッドアップ座位で書字が行えるように書見台を作成.運動失調による振戦の影響で描線の歪みが大きくカタカナ書字が何とか行える状態から,第49病日には平仮名・漢字の書字,自身のスマートフォンの使用まで可能となった.その後,筆談は単語から文章に変化,更にスマートフォンでの動画視聴およびメッセージの送受信やリハビリ日誌の作成を始めた.第57病日に回復期リハビリテーション病院転院.
【最終評価(第56病日)】JCS0.呼吸:人工鼻.基本動作:自立.ADL:FIM94/126点(運動項目60点,認知項目34点).MMT:右肩周囲3,左肩周囲4・その他5.握力:右12.2㎏,左11.8㎏
【結語】BBEは,本邦では指定難病疾患であり,年間発症は人口100万人当たり1人弱,脳幹脳炎の約4割を占めるという.今回,比較的早期に良好な回復経過を辿ったBBE患者のコミュニケーションの代替手段の獲得,動作介助量軽減に至った症例を経験した.病棟の協力も得ながら介入初期にベッドサイドから起立台での起立練習を開始でき,その後の動作練習をスムーズに展開できたことで,基本動作・移乗など動作能力向上およびADLの介助量軽減に繋がったと考える.また,書字やスマートフォン操作を行いやすいように書見台の作成や環境調整を行い,比較的早期から病棟生活で実践的に意思表示・表出の代替的手段を用いることができたということが,上肢・手指の使用頻度向上,筋力・操作性向上や,更なる回復への意欲向上にも繋がったと考える.そして何よりも症例本人が練習や提供した自主練習に非常に積極的に取り組むなど日々努力を欠かさなかったことも,当院入院中に基本動作自立までに至った大きな要因であると考える.その後,第127病日に回復期リハビリテーション病院退院し,第128病日に外来予約のため自転車で当院に来院され,元気な姿を見ることができた.
【症例】40代男性.職業:調理師.独居.
【現病歴】構音障害,四肢脱力出現し本人が救急要請.当院に搬送され,精査・加療目的に同日入院(第1病日).第2病日に気管内挿管.血漿交換療法,ステロイドパルス療法開始.第11病日に気管切開術施行.第12病日に理学療法,作業療法,言語聴覚療法開始.
【初回評価(第12病日)】JCSⅢ-300.四肢は弛緩.左右足関節背屈制限あり.人工呼吸器:換気モードSPN-CPAP,酸素濃度:30%,PEEP:5,PS:5.ADL:FIM;18/126点(運動項目13点,認知項目5点)
【経過】
<身体機能>第12~18病日はベッド上でのROM練習,ポジショニング中心に介入.第17病日に人工呼吸器離脱.意識レベル改善に伴い,理学療法士とともに第25病日に端座位練習開始.第28病日からベッドサイドで起立台での立位練習開始.第33病日に室内気に変更.起立(第36病日~),平行棒内歩行(第42病日~),車椅子駆動・歩行器歩行(第46病日~),立位作業・立位バランス(第51病日~),杖歩行(第56病日)等の練習を施行した.
<コミュニケーション>第24病日にClosed Questionに対して頷き・首振りの反応が出現.第31病日にハンドサイン(ピース,グッド)を用いるなど表出の種類が増加.第36病日にベッドアップ座位で書字が行えるように書見台を作成.運動失調による振戦の影響で描線の歪みが大きくカタカナ書字が何とか行える状態から,第49病日には平仮名・漢字の書字,自身のスマートフォンの使用まで可能となった.その後,筆談は単語から文章に変化,更にスマートフォンでの動画視聴およびメッセージの送受信やリハビリ日誌の作成を始めた.第57病日に回復期リハビリテーション病院転院.
【最終評価(第56病日)】JCS0.呼吸:人工鼻.基本動作:自立.ADL:FIM94/126点(運動項目60点,認知項目34点).MMT:右肩周囲3,左肩周囲4・その他5.握力:右12.2㎏,左11.8㎏
【結語】BBEは,本邦では指定難病疾患であり,年間発症は人口100万人当たり1人弱,脳幹脳炎の約4割を占めるという.今回,比較的早期に良好な回復経過を辿ったBBE患者のコミュニケーションの代替手段の獲得,動作介助量軽減に至った症例を経験した.病棟の協力も得ながら介入初期にベッドサイドから起立台での起立練習を開始でき,その後の動作練習をスムーズに展開できたことで,基本動作・移乗など動作能力向上およびADLの介助量軽減に繋がったと考える.また,書字やスマートフォン操作を行いやすいように書見台の作成や環境調整を行い,比較的早期から病棟生活で実践的に意思表示・表出の代替的手段を用いることができたということが,上肢・手指の使用頻度向上,筋力・操作性向上や,更なる回復への意欲向上にも繋がったと考える.そして何よりも症例本人が練習や提供した自主練習に非常に積極的に取り組むなど日々努力を欠かさなかったことも,当院入院中に基本動作自立までに至った大きな要因であると考える.その後,第127病日に回復期リハビリテーション病院退院し,第128病日に外来予約のため自転車で当院に来院され,元気な姿を見ることができた.