[PA-1-20] 反復練習と早期からのトイレ誘導によりトイレ動作獲得に至った重度片麻痺・感覚障害を呈した1例~下衣操作に焦点を当てて~
【はじめに】今回,左視床出血を発症し右片麻痺と感覚障害を呈した患者に作業療法での反復練習に加え,早期からトイレ誘導を導入した事でトイレ動作見守りとなったため以下に報告する.尚,報告に関して患者本人に口頭と書面で同意を得た.
【事例紹介】60歳代女性,右利き[診断名]左視床出血[現病歴]X日発症し当院に搬送,左視床出血の診断で入院.X+1日作業療法開始[生活]独居,入院前ADL自立,生活保護受給[デマンド]トイレに1人で行きたい
【初期評価】[性格]運動意欲高い[コミュニケーション]日常生活レベル[認知機能]HDS-R20点,MMSE15点[高次脳機能]FAB15点[身体機能(R/L)]BRS:上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅱ.ROM-T:制限なし.感覚:右肩から2~5指指尖に痺れあり,表在覚;右肩から2~4指,下腿~足部中等度鈍麻,母指軽度鈍麻,深部覚;上肢脱失,足部中等度鈍麻.MMT:肩関節外転・内旋2,肩関節屈曲・外旋1,肘関節屈曲2,手関節・手指1/左上肢粗大筋力4.握力:-/14.9kg MAS:肩0,肘2,手指1+,筋緊張:体動で右上下肢屈曲パターンに緊張亢進[ADL]FIM49点(運動29点,認知20点)トイレ移乗:3点(左下肢への荷重優位)トイレ:2点(立位保持中等度介助,下衣操作全介助).
【介入の基本方針】本症例は重度右片麻痺や感覚障害により立位が不安定となり,立位での上肢動作やリーチが困難であったため食事以外のADLに介助が必要であった.デマンドのトイレ動作自立希望に加え,尿便意があったためトイレ動作に着目した.
【作業療法実践計画】[長期目標(1M)]#1トイレ動作を見守りで行える#2右上肢が下衣の引き上げ動作で参加することができる [短期目標(2W)]##1左上肢で下衣操作を行える##2右肩関節の分離運動ができる##3右手指の集団屈曲・集団伸展ができる##4自主練習指導[プログラム]①モビライゼーション②神経筋再教育③トイレ動作練習④自主練習指導
【経過】X+2日トイレ動作評価を行い現状確認,トイレ動作自立を目標とすることで合意.X+4日に立位が安定し病棟へトイレ誘導を導入,病棟での離床,自主練習開始.X+8日下衣操作練習を開始.X+20日に下衣操作が安定し病棟へ導入,右手指分離可能となりトイレ動作への参加を試みる場面あり.X+22日トイレ動作見守り,右上肢を空間位で保持することが可能.
【結果】 [認知機能]HDS-R28点,MMSE24点[高次脳機能]FAB17点[身体機能(R/L)]BRS:上肢Ⅲ手指Ⅴ下肢Ⅳ.感覚:痺れ軽減も持続,表在覚:右上下肢軽度鈍麻,深部覚:上下肢軽度鈍麻.MMT:肩関節外転・内旋3,肩関節屈曲・外旋2,肘関節屈曲3,手関節2,手指3/左上肢粗大筋力4.握力:7.0kg/21.2kg.MAS:肩・肘1,手指0[ADL]FIM71点(運動43点,認知28点)トイレ移乗:5点(左上肢で手すり把持)トイレ:5点(下方リーチ可能.右上肢が下衣の引き上げに参加).
【考察】早期離床は体幹機能の維持や廃用症候群の予防が可能であり,脳梗塞の機能回復は介入時期に関与すると報告されおり発症直後の早期介入は不動による廃用の進行を抑制し,ADLや身体機能の向上が期待される.今回,トイレ動作が見守りとなった理由は①介入初期に動作確認を行い,患者本人と目標を共有できたこと,②病棟と連携し早期から病棟生活でもトイレ誘導を行うことができたこと,③早期から離床を図ることができ,廃用予防に繋がったためと考える.山﨑らは動作学習過程では反復練習が必須であり,練習に対する動機づけが重要となると述べており,患者自身のトイレ動作獲得への高い意欲と反復練習により早期の動作獲得に至ったと考えられる.
【事例紹介】60歳代女性,右利き[診断名]左視床出血[現病歴]X日発症し当院に搬送,左視床出血の診断で入院.X+1日作業療法開始[生活]独居,入院前ADL自立,生活保護受給[デマンド]トイレに1人で行きたい
【初期評価】[性格]運動意欲高い[コミュニケーション]日常生活レベル[認知機能]HDS-R20点,MMSE15点[高次脳機能]FAB15点[身体機能(R/L)]BRS:上肢Ⅱ手指Ⅱ下肢Ⅱ.ROM-T:制限なし.感覚:右肩から2~5指指尖に痺れあり,表在覚;右肩から2~4指,下腿~足部中等度鈍麻,母指軽度鈍麻,深部覚;上肢脱失,足部中等度鈍麻.MMT:肩関節外転・内旋2,肩関節屈曲・外旋1,肘関節屈曲2,手関節・手指1/左上肢粗大筋力4.握力:-/14.9kg MAS:肩0,肘2,手指1+,筋緊張:体動で右上下肢屈曲パターンに緊張亢進[ADL]FIM49点(運動29点,認知20点)トイレ移乗:3点(左下肢への荷重優位)トイレ:2点(立位保持中等度介助,下衣操作全介助).
【介入の基本方針】本症例は重度右片麻痺や感覚障害により立位が不安定となり,立位での上肢動作やリーチが困難であったため食事以外のADLに介助が必要であった.デマンドのトイレ動作自立希望に加え,尿便意があったためトイレ動作に着目した.
【作業療法実践計画】[長期目標(1M)]#1トイレ動作を見守りで行える#2右上肢が下衣の引き上げ動作で参加することができる [短期目標(2W)]##1左上肢で下衣操作を行える##2右肩関節の分離運動ができる##3右手指の集団屈曲・集団伸展ができる##4自主練習指導[プログラム]①モビライゼーション②神経筋再教育③トイレ動作練習④自主練習指導
【経過】X+2日トイレ動作評価を行い現状確認,トイレ動作自立を目標とすることで合意.X+4日に立位が安定し病棟へトイレ誘導を導入,病棟での離床,自主練習開始.X+8日下衣操作練習を開始.X+20日に下衣操作が安定し病棟へ導入,右手指分離可能となりトイレ動作への参加を試みる場面あり.X+22日トイレ動作見守り,右上肢を空間位で保持することが可能.
【結果】 [認知機能]HDS-R28点,MMSE24点[高次脳機能]FAB17点[身体機能(R/L)]BRS:上肢Ⅲ手指Ⅴ下肢Ⅳ.感覚:痺れ軽減も持続,表在覚:右上下肢軽度鈍麻,深部覚:上下肢軽度鈍麻.MMT:肩関節外転・内旋3,肩関節屈曲・外旋2,肘関節屈曲3,手関節2,手指3/左上肢粗大筋力4.握力:7.0kg/21.2kg.MAS:肩・肘1,手指0[ADL]FIM71点(運動43点,認知28点)トイレ移乗:5点(左上肢で手すり把持)トイレ:5点(下方リーチ可能.右上肢が下衣の引き上げに参加).
【考察】早期離床は体幹機能の維持や廃用症候群の予防が可能であり,脳梗塞の機能回復は介入時期に関与すると報告されおり発症直後の早期介入は不動による廃用の進行を抑制し,ADLや身体機能の向上が期待される.今回,トイレ動作が見守りとなった理由は①介入初期に動作確認を行い,患者本人と目標を共有できたこと,②病棟と連携し早期から病棟生活でもトイレ誘導を行うことができたこと,③早期から離床を図ることができ,廃用予防に繋がったためと考える.山﨑らは動作学習過程では反復練習が必須であり,練習に対する動機づけが重要となると述べており,患者自身のトイレ動作獲得への高い意欲と反復練習により早期の動作獲得に至ったと考えられる.