[PA-1-21] 脳卒中後上肢麻痺に対し多種同時感覚入力を用いたミラーセラピーを使用した症例
【はじめに】
ミラーセラピー(Mirror Therapy:以下MT)は,脳卒中後の上肢機能障害の改善に応用されている治療方法である.多種同時感覚入力を用いると錯視を起こしやすく(Blanchard C,at al,2013),MTの効果を高める可能性がある.今回我々は,右被殻出血により左片麻痺を呈した患者に対して超急性期に多種同時感覚入力を用いたMTによる介入を行うことで,上肢・手指機能の改善を認めたため報告する.発表に際し,本人に口頭で了承を得ている.
【事例紹介】
60歳代男性,右利き.右被殻出血を発症し,保存的治療で当院へ入院加療となった.入院後,出血の増大はなく,作業療法は発症後4病日より開始した.ADLは改善したが,軽度左片麻痺が残存しており,職業復帰を目的に回復期病院へ25病日に転院となった.
【方法】
上肢機能評価は開始時,1週後,2週後にFugl Meyer Assessment(以下FMA)と簡易上肢機能検査(以下STEF),錯視はVisual Analog Scale(以下VAS)を用いた.介入方法は,発症6日目より通常の作業療法に加えて多種同時感覚入力(固有感覚,触覚)を用いたMTを1日20分,2週間(計10日間)実施した.
【OT所見と経過】
開始時より,意識は清明.Br.stage上肢Ⅳ,手指Ⅴの左片麻痺を呈し,表在感覚軽度鈍麻も見受けられた.FMAは上肢54/66,STEFは右88点,左24点と巧緻性の低下が認められた.認知機能面はMMSE-J30/30点,FAB16/18点,ADLはBarthel Index(以下BI)55点であった.通常の作業療法(上肢機能訓練やADL動作訓練)とMTを実施し,MT実施時のVASは3-4/10と錯視は強くなかった.左上肢機能は徐々に改善を示し,1週後にFMA上肢64/66,STEF右92点,左78点と,2週後にはFMA上肢65/66,STEF右94点,左83点,Br.Stage上肢Ⅵ,手指Ⅵとなった.ADLはBI100点で自立した.
【考察・結論】
左片麻痺を呈した脳卒中患者に対して,急性期より多種同時感覚入力を用いたMTを通常の作業療法と合わせて行ったところ,麻痺側上肢・手指機能の改善を認めた.多種同時感覚入力を用いたMTは錯視を起こしやすくし(Blanchard C,at al,2013),MTの効果を高める可能性がある.本症例では錯視は強く認められなかったが,2週間の介入により上肢機能の改善を認め,多種同時感覚入力を用いたMTを急性期から用いることで上肢機能改善の効果を高める可能性が示唆された.本報告はシングルケースであり,今後は,被検者数を増やして検討を行い,介入効果の信頼性を高めていく必要がある.
ミラーセラピー(Mirror Therapy:以下MT)は,脳卒中後の上肢機能障害の改善に応用されている治療方法である.多種同時感覚入力を用いると錯視を起こしやすく(Blanchard C,at al,2013),MTの効果を高める可能性がある.今回我々は,右被殻出血により左片麻痺を呈した患者に対して超急性期に多種同時感覚入力を用いたMTによる介入を行うことで,上肢・手指機能の改善を認めたため報告する.発表に際し,本人に口頭で了承を得ている.
【事例紹介】
60歳代男性,右利き.右被殻出血を発症し,保存的治療で当院へ入院加療となった.入院後,出血の増大はなく,作業療法は発症後4病日より開始した.ADLは改善したが,軽度左片麻痺が残存しており,職業復帰を目的に回復期病院へ25病日に転院となった.
【方法】
上肢機能評価は開始時,1週後,2週後にFugl Meyer Assessment(以下FMA)と簡易上肢機能検査(以下STEF),錯視はVisual Analog Scale(以下VAS)を用いた.介入方法は,発症6日目より通常の作業療法に加えて多種同時感覚入力(固有感覚,触覚)を用いたMTを1日20分,2週間(計10日間)実施した.
【OT所見と経過】
開始時より,意識は清明.Br.stage上肢Ⅳ,手指Ⅴの左片麻痺を呈し,表在感覚軽度鈍麻も見受けられた.FMAは上肢54/66,STEFは右88点,左24点と巧緻性の低下が認められた.認知機能面はMMSE-J30/30点,FAB16/18点,ADLはBarthel Index(以下BI)55点であった.通常の作業療法(上肢機能訓練やADL動作訓練)とMTを実施し,MT実施時のVASは3-4/10と錯視は強くなかった.左上肢機能は徐々に改善を示し,1週後にFMA上肢64/66,STEF右92点,左78点と,2週後にはFMA上肢65/66,STEF右94点,左83点,Br.Stage上肢Ⅵ,手指Ⅵとなった.ADLはBI100点で自立した.
【考察・結論】
左片麻痺を呈した脳卒中患者に対して,急性期より多種同時感覚入力を用いたMTを通常の作業療法と合わせて行ったところ,麻痺側上肢・手指機能の改善を認めた.多種同時感覚入力を用いたMTは錯視を起こしやすくし(Blanchard C,at al,2013),MTの効果を高める可能性がある.本症例では錯視は強く認められなかったが,2週間の介入により上肢機能の改善を認め,多種同時感覚入力を用いたMTを急性期から用いることで上肢機能改善の効果を高める可能性が示唆された.本報告はシングルケースであり,今後は,被検者数を増やして検討を行い,介入効果の信頼性を高めていく必要がある.