[PA-1-22] 脳卒中患者における手の心的回転課題遂行能力の経時的変化
【序論】
上肢機能障害は脳卒中の後遺症として代表的な症状であり,ADLやIADLに大きく影響することから,作業療法士が対象者の目標を妨げる問題点として取り扱うことが多い.脳卒中ガイドラインでは,脳卒中患者の上肢機能障害に対する運動イメージ訓練は「推奨度B,エビデンスレベル中」となっており,この運動イメージの想起を用いた評価・訓練の一つに,手の心的回転課題(HMRT)がある.HMRTは,画面上に提示された手の写真が「左手」か「右手」かを判断する課題であり,指尖が身体の中心側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしやすい角度;Medial)への応答時間(RT)が身体の外側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしにくい角度;Lateral)のRTよりも短いという特徴的なRTプロフィール(ML効果)がみられることから,課題遂行時に被験者の運動イメ−ジが誘発されると考えられている.比較的簡易であることから,臨床においても扱いやすいツールの一つである.
脳卒中患者に対してHMRTを実施した報告は増えてきているものの,多くは横断的な研究であり,HMRTの遂行能力が入院経過の中でどのように変化するかを縦断的に捉えたものはほとんどない.
【目的】
本研究の目的は,脳卒中患者におけるHMRT遂行能力の経時的変化を確認することである.
【方法】
参加者は,文書にて参加同意を得た右手利きの初発の脳卒中患者5名(66.2 ± 12.2歳,男性)とした.発症から1か月および3か月時点で,矢印の左右選択課題(矢印課題)とHMRTを実施した.矢印課題は,左右の矢印図形が画面にランダムに提示された(左右各15枚:30枚).参加者は「左矢印」か「右矢印」かを出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右のボタンを押して応答した.HMRTは,第3指が垂直方向0度となる位置から,時計回りに60度おきに6段階に回転させた手写真がランダムに提示された(左右・手背手掌4種類×6角度×4回:96枚).参加者は「左手」か「右手」かを出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右のボタンを押して応答した.計測後は,運動応答時間の個人差を考慮して,HMRTのRTから矢印課題のRTを減算した(ΔRT).参加者の1回目と2回目のHMRTの正答率とΔRTの比較は,左手(Medial<手背・手掌60°120>,Lateral<手背・手掌240°300°>),右手(Medial<手背・手掌240°300°>,Lateral<手背・手掌60°120°>)に分け,Wilcoxsonの符号付順位検定を用いて検討した.また,各個人のデータは図的要約を用いて個々に記述的に解析した.解析にはIBM SPSS Statistics Ver. 29を使用し,危険率は5%とした.
本研究は,所属施設およびデータ収集施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
HMRTの正答率・ΔRTは1か月と3か月において有意な差は見られなかった.1か月の左手写真は5名中5名がMedialのΔRTが短く,右手写真は5名中4名が短い傾向にあった.3か月の左手写真は5名中3名がMedialのΔRTが短く,右手写真は5名中4名が短い傾向にあった.
【考察】
参加者の1か月と3か月の遂行能力にはばらつきがあり,人によってはML効果が見られずに,運動イメージを用いていない可能性も考えられた.作業療法士が運動イメージの評価・訓練としてこの課題を応用するためには,被検者の適応基準を明確にする必要がある.
上肢機能障害は脳卒中の後遺症として代表的な症状であり,ADLやIADLに大きく影響することから,作業療法士が対象者の目標を妨げる問題点として取り扱うことが多い.脳卒中ガイドラインでは,脳卒中患者の上肢機能障害に対する運動イメージ訓練は「推奨度B,エビデンスレベル中」となっており,この運動イメージの想起を用いた評価・訓練の一つに,手の心的回転課題(HMRT)がある.HMRTは,画面上に提示された手の写真が「左手」か「右手」かを判断する課題であり,指尖が身体の中心側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしやすい角度;Medial)への応答時間(RT)が身体の外側を向く手写真(呈示された手に実際に手を合わせる場合,動かしにくい角度;Lateral)のRTよりも短いという特徴的なRTプロフィール(ML効果)がみられることから,課題遂行時に被験者の運動イメ−ジが誘発されると考えられている.比較的簡易であることから,臨床においても扱いやすいツールの一つである.
脳卒中患者に対してHMRTを実施した報告は増えてきているものの,多くは横断的な研究であり,HMRTの遂行能力が入院経過の中でどのように変化するかを縦断的に捉えたものはほとんどない.
【目的】
本研究の目的は,脳卒中患者におけるHMRT遂行能力の経時的変化を確認することである.
【方法】
参加者は,文書にて参加同意を得た右手利きの初発の脳卒中患者5名(66.2 ± 12.2歳,男性)とした.発症から1か月および3か月時点で,矢印の左右選択課題(矢印課題)とHMRTを実施した.矢印課題は,左右の矢印図形が画面にランダムに提示された(左右各15枚:30枚).参加者は「左矢印」か「右矢印」かを出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右のボタンを押して応答した.HMRTは,第3指が垂直方向0度となる位置から,時計回りに60度おきに6段階に回転させた手写真がランダムに提示された(左右・手背手掌4種類×6角度×4回:96枚).参加者は「左手」か「右手」かを出来るだけ速く正確に判断するよう指示され,非麻痺側手で左右のボタンを押して応答した.計測後は,運動応答時間の個人差を考慮して,HMRTのRTから矢印課題のRTを減算した(ΔRT).参加者の1回目と2回目のHMRTの正答率とΔRTの比較は,左手(Medial<手背・手掌60°120>,Lateral<手背・手掌240°300°>),右手(Medial<手背・手掌240°300°>,Lateral<手背・手掌60°120°>)に分け,Wilcoxsonの符号付順位検定を用いて検討した.また,各個人のデータは図的要約を用いて個々に記述的に解析した.解析にはIBM SPSS Statistics Ver. 29を使用し,危険率は5%とした.
本研究は,所属施設およびデータ収集施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
HMRTの正答率・ΔRTは1か月と3か月において有意な差は見られなかった.1か月の左手写真は5名中5名がMedialのΔRTが短く,右手写真は5名中4名が短い傾向にあった.3か月の左手写真は5名中3名がMedialのΔRTが短く,右手写真は5名中4名が短い傾向にあった.
【考察】
参加者の1か月と3か月の遂行能力にはばらつきがあり,人によってはML効果が見られずに,運動イメージを用いていない可能性も考えられた.作業療法士が運動イメージの評価・訓練としてこの課題を応用するためには,被検者の適応基準を明確にする必要がある.