第58回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-1-4] したい作業に含まれる活動の確認とAMPSによる作業分析が機能改善と作業獲得に繋がった事例

浅井 美穂1, 中島 ともみ2 (1.社会医療法人 明陽会 第二成田記念病院 リハビリテーション科, 2.藤田医科大学 保健衛生学部 リハビリテーション科)

【序論】日本作業療法士協会は,作業を一般の人が理解しやすいように生活行為と言い換え,「生活行為とは,人が生きていくうえで営まれる生活全般の行為のこと.」と定義した.つまり,ADLやIADLなども全て含むとしている.作業は単独で完結せず,ADLはIADLの作業の中で実施されることも多く作業の内容や形態,範囲,意味の捉え方は個人差がある.例えば,「食事をとる」は準備から片付けまでが食事をとるという人もいれば食べることのみと考える人もいる.本報告の症例にとっての「食事」という作業は,「食事をとる(調理を含む)」という作業であった.作業の捉え方を確認したうえで介入した結果,麻痺手を使用した多様な活動を含む作業の獲得に至ったため報告する.尚,今回の発表に関して本人/家族からの同意を得ている.【症例紹介】60歳代女性.右視床出血を発症し,急性期病院で治療後に当院の回復期病院に転院.病前はADL自立しており,毎食食事の準備/片付けの役割を担っていた.本人needは「身の回りのことができる」「料理がしたい」等,複数の作業を挙げていた.その中には,「食事の自立」があった.【作業療法評価(入院12週)】身体機能評価は,BRS:Ⅳ−Ⅴ,STEF:右93点/左12点,MAS:上肢屈筋群1〜2,MAL:AOU2.41/QOM2.29.肩関節に夜間時痛あり,移動に杖歩行監視で要していた.ニーズ評価でAssessment of Motor and Process Skills(以下AMPS)を用いて,作業分析を実施した.「料理」について聴取し,「食事をとる」ということに準備,調理,食べる,片付けという複数の作業が含まれていた.その為 AMPSを用いた作業評価は,一連の作業が含まれる2項目を選択した.結果よりADL運動−0.7,ADLプロセス0.6(カットオ値:運動技能1.0,プロセス技能2.0)であった.伝い歩行でふらつきを認め,しゃがみ動作や低い位置へのリーチに不十分さを認め,麻痺手での野菜や食器の固定に困難さがあり.袋開け操作は麻痺手で袋をつまみに拙劣さがあり難渋した.【介入経過(入院12週〜)】麻痺側の筋緊張が亢進し,肩の疼痛により日常生活で麻痺手の使用頻度が減少していた. リハ医と検討し,分離運動の促通と麻痺側上肢の使用を促すために,キシロカインを施注し,修正CI療法を導入することとした.AMPSの評価でわかった両手動作時の麻痺側上肢における,ピンチ力/巧緻性,固定の役割で不十分さの原因は,上肢屈筋群の筋緊張亢進による分離運動の抑制であると考えられた.肩の機能改善目的に,分離運動を促通した.またセルフケアへ麻痺手の参加を促すTransfer Package(以下TP)では,日常生活で対象者の意味する「食事をとる」という作業に近い課題を提示した.訓練内は,床/膝高へのリーチ課題,調理動作の直接訓練を実施した.遂行能力を必要とする作業である為,注意機能への負担を軽減するよう作業工程を細分化して練習した.【結果】退院時には,STEF:右100点/左42点,MAL:AOU3.29/QOM3.37と向上した.伝い歩行や応用動作の質が向上し,安定した作業遂行が可能となり調理動作の獲得に至った.AMPSでは,ADL運動1.5,ADLプロセス2.2であったが,身体機能の影響が少ない項目は測定値が高得点となる.結果として,運動技能/プロセス技能共に0.5以上の向上を認めたことで統計的に有意な向上である.【考察】本症例の生活歴や重要となる作業内容を詳細に聴取することでセラピストと共有し心身機能と作業環境の両側面から介入を試みたことが,作業の獲得に至った要因であったと考える.AMPSの評価は「作業」を分析し自立度を測る効果判定の指標に効果的であった.AMPSでの作業分析から必要な心身機能を明確にし,修正CI療法を併用することでより効率的な上肢機能改善が図れ,作業獲得に関与したと考える.