第58回日本作業療法学会

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ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

Sat. Nov 9, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (大ホール)

[PA-1-5] 回復期リハビリテーション病棟患者を対象としたmodified CI療法後1年間の経過と効果について

高岡 夏実, 門川 泰輔, 伴 征晃 (独立行政法人 地域医療機能推進機構 星ヶ丘医療センター リハビリテーション部)

【はじめに】CI療法は脳卒中治療ガイドライン2021でグレードAとして推奨されている治療法である.しかし,CI療法は原則1日6時間の麻痺手の集中練習を2週間,1対1での介入となっており,一般的に国内では医療保険診療内での実施は難しい.また,回復期リハビリテーション病棟患者を対象とした CI療法に対する長期経過を示したものは殆ど見当たらず,症例数も少ない.今回,回復期リハビリテーション病棟患者に対して,医療保険診療内で行えるよう実施時間を修正したmodified CI療法を退院前に実施し, 実施後1年間の追跡評価を行った為結果の報告とその有効性について検討する.
【方法】対象は2016年11月~2022年5月までに当院回復期リハビリテーション病棟入院中にmodified CI療法実施後,1年間の経過を追うことができた症例とした.当院でのmodified CI療法は1日2時間の上肢集中練習と1〜1.5時間の自主練習を10日間,合計30時間以上の練習時間となるように設定した.また,反復的課題思考型練習や日常生活における麻痺手の積極的使用を促す行動戦略(Transfer package)として病棟生活で麻痺手の使用を促すHome skillや行動契約,毎日日記を書く等,CI療法の主要コンセプトに準じて実施した.上肢機能の効果判定にはFugl-Meyer Assessment の上肢項目(以下FMA-UE ),Wolf-Motor Function Test Functional Ability Scale(以下WMFT-FAS),簡易上肢機能検査(以下STEF),Motor Activity Log30 の使用頻度(以下MAL-AOU),主観的な使いやすさ(以下MAL-QOM)で評価した.評価時期はCI療法前後と実施後3ヶ月,1年とした.統計は改変R Commanderを使用,Friedman検定とWilcoxon検定をHolm法で修正した多重比較法を用い,危険率5%で行った.本発表は当院倫理委員会にて承認を得た(承認番号 HG-IRB2404).
【結果】対象は13名(男性7名/女性6名,平均年齢61.3±9.7歳,脳梗塞10名/脳出血3名,発症からmodified CI療法開始までの期間平均82.8±25.4日)であった.各評価項目の中央値は,modified CI療法前/ modified CI療法後/3ヶ月/1年の順に,FMA-UEは56/62/63/65,WMFT-FASは4.4/4.6/4.8/4.9,STEFは72/88/90/96,MAL-AOUは2.6/4.2/4.7/4.9,MAL-QOMは2.8/4.1/4.7/4.8であった.統計結果は,FMA-UEとMAL-QOMでは,modified CI療法前とmodified CI療法後,3ヶ月,1年で有意差を認め,WMFT-FASとMAL-AOUではmodified CI療法前とmodified CI療法後,3ヶ月,1年,そしてmodified CI療法後と1年で有意差を認めた.STEFでは全期間に対して有意差を認める結果となった.
【考察】全ての評価結果においてmodified CI療法前後で有意な改善を認め,その効果は1年間まで持続した.先行研究でWolfらは脳卒中後3〜9ヶ月の患者を対象にCI療法を実施し,その効果は2年間継続したと報告している.今回当院で行なったmodified CI療法の実施期間とも近似しており,類似の結果であった.また,亜急性期における臨床上重要な最小変化量(Minimal Clinically Important Difference 以下MCID)はFMA−UEは9〜10点,MAL−AOUは0.5点,MAL−QOMは0.5〜1.1点と言われており,modified CI療法前から実施後1年におけるFMA−UEやMAL−AOU,MAL–QOMの結果と比較してみてもMCIDを超えており,当院で実施した回復期リハビリテーション病棟における退院前のmodified CI療法は有効的な介入であった可能性が考えられた.しかし,今回の研究では回復期での実施であり,自然回復の影響も考えられる.また,症例数も少ない為,今後は症例数を増やして効果検証していく必要がある.