第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-1] ポスター:脳血管疾患等 1

2024年11月9日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-1-6] 回復期病棟における脳血管障害患者に対する修正CI療法の実施と効果に関する考察

小林 礼佳, 田邉 晃平, 赤穂 善行, 柴田 仰, 越取 哲也 (愛仁会リハビリテーション病院)

【序論・目的】
 2015年版脳卒中治療ガイドラインにて,CI療法が推奨グレードAと設定された.しかし,標準的なCI療法(以下,標準CI療法)は6時間に及ぶ麻痺側上肢の練習時間や非麻痺側上肢の拘束が必要となる.そのため,回復期病院においては,時間と場所の確保の困難性や拘束による転倒リスク,拘束により作業療法以外のリハビリテーションにも影響が出ることが大きな課題となる.そこで,当院では以下に述べる2018年より非麻痺側上肢を物理的に拘束しない形での修正CI療法を実施しており,麻痺側上肢の機能評価において有意な改善を認めたため,以下に結果を報告する.なお,本研究は患者への十分な説明と同意の下,当院倫理審査委員会の承認を得て実施している.
【方法】
 修正CI療法とは,標準CI療法と異なり,1日あたりの自主練習時間2時間と作業療法1時間の合計3時間,実施期間を連続した14日間に限定した修正CI療法プロトコルを作成,実施する.修正CI療法実施期間中の作業療法では,主に日常生活における麻痺側上肢の使用目標を設定するHome Skill Assignment Sheetを用いて,正のフィードバックを中心とした振り返りを行う.
 当院では,2018年9月1日から2023年3月1日に当院回復期病棟へ入院した患者のうち,脳血管障害により片麻痺を呈し,麻痺側上肢においては母指を含む1~3指のMP関節が10度以上,手関節が20度以上随意伸展可能,かつ,物品操作が可能な程度の肩・肘の随意性がある者計35名を対象として,上記修正CI療法を実施した.なお,その他,全身状態が安定しており重度の高次脳機能障害や精神疾患がないこと,移動やセルフケアの自立も条件とした.修正CI療法を受けた対象患者の麻痺側上肢の機能評価についてはFugl-Meyer Assessment(FMA),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)を作業療法開始前後に実施し,各種評価に対して平均値とSD値を算出したうえで,介入前後での単純比較を実施する方法を採用した.
【結果】
 FMAは実施前45±11.18に対し実施後53.67±9.8,ARATは実施前42.38±14.71に対し実施後49.73±10.29,MAL(AOU)は実施前2±1.34に対し実施後3.62±1.1,MAL(QOM)は実施前1.99±1.15に対し実施後3.28±0.98の変化を認めた.
 FMAの変化量に関しては8.67±6.35となった.急性期におけるFMAのMCIDはAryaらが9~10点であるとしており全体の平均はMCIDに満たなかったが利き手群での変化量のみで見れば9.2±6.36でありMCIDを満たす結果となった.ARATは7.35±6.65の変化量であり,ARATのMCIDはLangらが12点~17点と報告しておりMCIDを満たさなかった.MALにおけるAOUの変化量は1.62±0.94,QOMの変化量は1.29±0.6であった.回復期におけるAOUのMCIDは不明だが,QOMはLangらの報告では1.0~1.1点としておりMCIDを満たす結果となった.Wolfらが発症後3~9か月の脳卒中患者を対象として標準CI療法を実施した無作為化比較試験EXCITEでは,MALのAOUの変化量が1.03,QOMが0.91の変化量であり,MALのAOUおよびQOMにおいて変化量で同等以上の結果となった.
【考察】
 本研究では,修正CI療法を実施した患者の各上肢機能評価において有意な改善を認めた.また,同患者においては,修正CI療法により目標設定が習慣化され,修正CI療法終了後の入院生活でも積極的に麻痺側上肢を使う方法を自ら考える姿勢が見られるようになった.退院後の生活においても継続的な使用が期待され,今後その実態は退院後調査にて明らかにしていきたい.