[PA-1-7] 回復期リハビリテーション病棟で左視床出血を呈したクライエントに対してCO-OPを用いて復職した事例
【はじめに】Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下CO-OP)は,作業遂行での問題解決に向けて,対象者自身が戦略を立て,生活に般化し,さらに別の作業遂行に技能を転移することができる作業療法の介入方法である.様々な疾患で効果が示されているが,回復期リハビリテーション病棟において,成人の左視床出血に伴う運動麻痺及び感覚障害を呈したクライエントにCO-OPを用いて復職に向けて取り組んだ報告は見当たらない.同様の事例に対して,作業療法を展開する一助になると思われるため報告する.なお今回,発表にあたり本人に説明し,同意を得ている.
【事例紹介】A氏,60歳代女性.左視床出血により右上下肢の運動麻痺と感覚障害を呈し,受傷後21日で回復期病棟に入院した.受傷前は夫と二人暮らしでマンションの管理の仕事をしていた.上肢機能としては,STEF右71点,左94点,FMA62点であった.FIMの運動81点,認知35点であり,ADLは入浴動作のみ見守りで行い,その他は自立していた.A氏はマンションの管理の仕事への復職を希望していた.そこで「マンションの掃き掃除ができる(以下,掃き掃除)」「日報と同じ文章量を書くことができる(以下,書字)」を目標にCO-OPを導入することにした.
【介入】掃き掃除と書字について,カナダ作業遂行測定(以下,COPM)の遂行スコアは2.0.満足スコアは2.0だった.作業遂行の質を観察評価するPerformance Quality Rating Scale generic rating system(以下,PQRS-G)で,掃き掃除は3点,書字は4点であった.掃き掃除では,上肢の動きが滑らかさを欠き,肘関節と手関節を固定した状態で掃き掃除を行っていた.ゴミを集める際,塵取りに向かって滑らかに箒を動かせず振り子の様な動きとなっていた.作業療法士は本人が戦略を立てるように関わった.「肘を体幹と密着させる,うちわのように箒を使い手首を動かす」戦略を計画した.戦略を1つずつ試し,練習を繰り返した.書字における主な問題は,鉛筆を紙に過剰に押し付け,手首や腕の滑らかさがなく,文字が崩れていた.書字訓練は介入初期から自主訓練として行った.掃き掃除で習得した「肩と手の力を抜き,手首をそらす」という方法が転移し書字が行えた.
【結果】入院から一ヵ月間,CO-OPを実践した結果,作業療法時に当院の玄関の掃き掃除を一人で行えるようになった.また,右手を使用し書字を行えるようになった.これらの行為が般化し,院内の書類で名前や住所が書けるようになった.COPMの遂行スコアは6.0,満足スコアは6.0へ向上した.書字のPQRS-Gは8点へ,掃き掃除のPQRS-Gは8点へ向上が見られた.また,掃き掃除で考えた「手首を動かす」ことが書字に転移が見られた.上肢機能としては,STEF右81点,左93点,FMA62点であった.
【考察】今回,左視床出血を呈し回復期病棟にて掃き掃除と書字といった復職に対してCO-OPを実施した.A氏は認知機能に問題なく,掃き掃除と書字を行える身体機能であったが本人が満足する遂行ではなかった.介入前後で上肢機能に大きな変化がなかったことから,運動技能が向上したと考えられる.受傷後の状態で新たにADLを遂行するためには,新たに運動技能を身につける必要があると考えられ,CO-OPが有効であったと言える.書字訓練については,作業療法中ではなく,自主練習を経て動作を獲得することができた.その中で掃き掃除で身につけた技能を転移させ自己解決できていた.脳出血を発症し休職を余儀なくされた方の仕事再開に繋がる可能性があり,複数事例を対象に検討したい.
【事例紹介】A氏,60歳代女性.左視床出血により右上下肢の運動麻痺と感覚障害を呈し,受傷後21日で回復期病棟に入院した.受傷前は夫と二人暮らしでマンションの管理の仕事をしていた.上肢機能としては,STEF右71点,左94点,FMA62点であった.FIMの運動81点,認知35点であり,ADLは入浴動作のみ見守りで行い,その他は自立していた.A氏はマンションの管理の仕事への復職を希望していた.そこで「マンションの掃き掃除ができる(以下,掃き掃除)」「日報と同じ文章量を書くことができる(以下,書字)」を目標にCO-OPを導入することにした.
【介入】掃き掃除と書字について,カナダ作業遂行測定(以下,COPM)の遂行スコアは2.0.満足スコアは2.0だった.作業遂行の質を観察評価するPerformance Quality Rating Scale generic rating system(以下,PQRS-G)で,掃き掃除は3点,書字は4点であった.掃き掃除では,上肢の動きが滑らかさを欠き,肘関節と手関節を固定した状態で掃き掃除を行っていた.ゴミを集める際,塵取りに向かって滑らかに箒を動かせず振り子の様な動きとなっていた.作業療法士は本人が戦略を立てるように関わった.「肘を体幹と密着させる,うちわのように箒を使い手首を動かす」戦略を計画した.戦略を1つずつ試し,練習を繰り返した.書字における主な問題は,鉛筆を紙に過剰に押し付け,手首や腕の滑らかさがなく,文字が崩れていた.書字訓練は介入初期から自主訓練として行った.掃き掃除で習得した「肩と手の力を抜き,手首をそらす」という方法が転移し書字が行えた.
【結果】入院から一ヵ月間,CO-OPを実践した結果,作業療法時に当院の玄関の掃き掃除を一人で行えるようになった.また,右手を使用し書字を行えるようになった.これらの行為が般化し,院内の書類で名前や住所が書けるようになった.COPMの遂行スコアは6.0,満足スコアは6.0へ向上した.書字のPQRS-Gは8点へ,掃き掃除のPQRS-Gは8点へ向上が見られた.また,掃き掃除で考えた「手首を動かす」ことが書字に転移が見られた.上肢機能としては,STEF右81点,左93点,FMA62点であった.
【考察】今回,左視床出血を呈し回復期病棟にて掃き掃除と書字といった復職に対してCO-OPを実施した.A氏は認知機能に問題なく,掃き掃除と書字を行える身体機能であったが本人が満足する遂行ではなかった.介入前後で上肢機能に大きな変化がなかったことから,運動技能が向上したと考えられる.受傷後の状態で新たにADLを遂行するためには,新たに運動技能を身につける必要があると考えられ,CO-OPが有効であったと言える.書字訓練については,作業療法中ではなく,自主練習を経て動作を獲得することができた.その中で掃き掃除で身につけた技能を転移させ自己解決できていた.脳出血を発症し休職を余儀なくされた方の仕事再開に繋がる可能性があり,複数事例を対象に検討したい.