[PA-2-1] 回復期脳卒中患者におけるトイレ動作獲得の縦断的過程:コホート研究
【はじめに】脳卒中患者のトイレ動作自立はリハビリテーションの目標のひとつである.トイレ動作は,車椅子操作,移乗,下衣操作など,複数の諸動作で構成される.これまでに,諸動作は一定の独立性を有しており (Kitamura et al., 2021),自立の難易度は異なることが示されている (Kitamura et al., 2023).しかし,脳卒中患者が諸動作を獲得する過程は明らかではない.諸動作獲得の過程は,練習すべき諸動作の特定や優先順位付けなど,練習計画の立案に有益な情報となる.
【目的】本研究は入院中の諸動作の自立度の経時的変化に基づいて患者を分類し,各群における諸動作の自立度変化の特徴と患者特性を明らかにすることを目的とした.
【方法】2016年6月から2017年5月までに回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者のうち,入院時に車椅子を使用してトイレで排泄をしており,研究に同意が得られた者を対象とした.評価はToileting Tasks Assessment Form(TTAF)を用いて作業療法士が患者の実動作を観察評価した.TTAFは一連のトイレ動作を24の諸動作に細分化し,諸動作を「3:自立」「2:監視」「1:介助」の3段階の自立度と「N:動作の必要がない」で評価する.評価は入院後1ヶ月間は2週間隔で,それ以降は4週間隔で,トイレ動作が自立するまで,または退院するまで行われた.分析では,入院時と評価終了時の2時点の結果を組み合わせてカテゴリ変数が作成され(例:入院時に「1」,評価終了時に「2」と評価された場合は「1・2」),患者ごとに24の変数が使用された.Two-stepクラスタ分析により患者を分類し,分類された患者群の特性の違いを理解するために,各クラスタに含まれる患者特性(年齢,身体・認知機能等)をクラスタ間で比較した.比較は,比例尺度にはt検定を,順序尺度にはMann-WhitneyのU検定を,名義尺度にはFisherの正確検定を用いた.Bonferroniの補正を行い,有意水準を5%とした.本研究は研究倫理委員会から承認を得た後に,書面で対象者または代諾者の同意を得て実施した.
【結果】連続症例101名の脳卒中患者が3クラスタに分類された.クラスタ1(n=30)は,入院時(24諸動作の自立者割合:46.7–100%,諸動作の自立者割合の平均:77.2%)と評価終了時(73.3–100%,92.4%)の双方で全諸動作の自立者割合が高かった.クラスタ2(n=41)は,入院時に全諸動作で自立者割合が低く(0–26.8%,7.2%),終了時は自立者割合が高かった(34.1–73.2%,52.6%).このクラスタでは,評価終了時の全諸動作で「2」の割合も高く(22.0–46.3%,36.5%),「ブレーキをかける」「フットレストから足を下ろす」「下衣を下げる」「下衣を上げる」「フットレストに足を乗せる」の諸動作では「2」の割合が最も高かった.クラスタ3(n=30)は入院時(0–26.7%,12.1%)から終了時(3.3–33.3%,15.1%)まで一貫して多くの諸動作で自立者割合が低かった.クラスタ1は2に比べて男性が多く(p=0.023),Stroke Impairment Assessment Setの4つの運動項目の得点が高く(p=0.011–0.041),クラスタ3に比べて年齢が低く(p=0.033),発症後期間が短く(p=0.007),両クラスタに比べてMini-Mental Statement Examination(p<0.001)とFunctional Independence Measure(運動項目:p<0.001,認知項目:p=0.004)の得点が高かった.クラスタ2と3の間では病型の人数割合のみ差があった(p=0.027).
【結論】トイレ動作獲得の過程は3通りに分類され,諸動作の自立度変化や最終的な自立者割合は異なっていた.本研究の知見は,入院後早期の適切な目標設定と練習する諸動作の優先順位付けの根拠となる.
【目的】本研究は入院中の諸動作の自立度の経時的変化に基づいて患者を分類し,各群における諸動作の自立度変化の特徴と患者特性を明らかにすることを目的とした.
【方法】2016年6月から2017年5月までに回復期リハビリテーション病棟に入院した初発脳卒中片麻痺患者のうち,入院時に車椅子を使用してトイレで排泄をしており,研究に同意が得られた者を対象とした.評価はToileting Tasks Assessment Form(TTAF)を用いて作業療法士が患者の実動作を観察評価した.TTAFは一連のトイレ動作を24の諸動作に細分化し,諸動作を「3:自立」「2:監視」「1:介助」の3段階の自立度と「N:動作の必要がない」で評価する.評価は入院後1ヶ月間は2週間隔で,それ以降は4週間隔で,トイレ動作が自立するまで,または退院するまで行われた.分析では,入院時と評価終了時の2時点の結果を組み合わせてカテゴリ変数が作成され(例:入院時に「1」,評価終了時に「2」と評価された場合は「1・2」),患者ごとに24の変数が使用された.Two-stepクラスタ分析により患者を分類し,分類された患者群の特性の違いを理解するために,各クラスタに含まれる患者特性(年齢,身体・認知機能等)をクラスタ間で比較した.比較は,比例尺度にはt検定を,順序尺度にはMann-WhitneyのU検定を,名義尺度にはFisherの正確検定を用いた.Bonferroniの補正を行い,有意水準を5%とした.本研究は研究倫理委員会から承認を得た後に,書面で対象者または代諾者の同意を得て実施した.
【結果】連続症例101名の脳卒中患者が3クラスタに分類された.クラスタ1(n=30)は,入院時(24諸動作の自立者割合:46.7–100%,諸動作の自立者割合の平均:77.2%)と評価終了時(73.3–100%,92.4%)の双方で全諸動作の自立者割合が高かった.クラスタ2(n=41)は,入院時に全諸動作で自立者割合が低く(0–26.8%,7.2%),終了時は自立者割合が高かった(34.1–73.2%,52.6%).このクラスタでは,評価終了時の全諸動作で「2」の割合も高く(22.0–46.3%,36.5%),「ブレーキをかける」「フットレストから足を下ろす」「下衣を下げる」「下衣を上げる」「フットレストに足を乗せる」の諸動作では「2」の割合が最も高かった.クラスタ3(n=30)は入院時(0–26.7%,12.1%)から終了時(3.3–33.3%,15.1%)まで一貫して多くの諸動作で自立者割合が低かった.クラスタ1は2に比べて男性が多く(p=0.023),Stroke Impairment Assessment Setの4つの運動項目の得点が高く(p=0.011–0.041),クラスタ3に比べて年齢が低く(p=0.033),発症後期間が短く(p=0.007),両クラスタに比べてMini-Mental Statement Examination(p<0.001)とFunctional Independence Measure(運動項目:p<0.001,認知項目:p=0.004)の得点が高かった.クラスタ2と3の間では病型の人数割合のみ差があった(p=0.027).
【結論】トイレ動作獲得の過程は3通りに分類され,諸動作の自立度変化や最終的な自立者割合は異なっていた.本研究の知見は,入院後早期の適切な目標設定と練習する諸動作の優先順位付けの根拠となる.