[PA-2-18] 小児脳梗塞に対する課題指向型訓練と家族参加型transfer packageを実施した一例
【はじめに】
小児期の脳梗塞の発症率は年間1-2/10万人と報告されており(Mastrangelo,2022),
本邦においても稀な症例である.今回,本症例に対して課題指向型訓練と家族参加型transfer package(以下,家族参加型TP)を実施した結果,上肢機能改善及びADLの再獲得へと繋がったため以下に報告する.なお, 本報告に対し,患者及びその家族には書面にて十分な説明を行い,同意を得た.
【症例情報】6歳男児.右利き.性格は活発.これまでに発達障害等の指摘はされていない.また,麻痺側は使用せずに病棟生活を送っていた.両親は交代で終日付き添いをしていた.
【疾患名】ラクナ梗塞(左内包)
【現病歴】X-2日の夕方より右上下肢の動きづらさを自覚した.その後,構音障害も出現したため当院に入院となった.
【作業療法評価】JCS 0.上肢麻痺は, FMAUEは,44点.表在/深部感覚は正常.握力(R/L)は,2/3kgであった.また,右側のSTEFは,物品把持困難のため測定不能. Motor Activity Log-14(以下,MAL-14)のAOU及びQOMは1.4点であった.その他の身体機能や高次脳機能障害等はなかった.目標設定はカナダ作業遂行測定(以下,COPM)を用いて聴取していくと,双方からの食事の自立摂取をはじめとするADLに対するNeedsが多く聴取された.
【作業療法経過】課題指向型訓練では,主目標を「食事動作」と設定した.また,目標設定時に他のADL再獲得の訴えも多く聴取されていたことから,食事以外でも麻痺手の使用頻度の向上を図るため,MAL-14の内容を上肢機能に応じて数項目ずつ訓練に取り入れた.また,それらの項目に対し難易度調整を施しながら副次目標として取り組むこととした.transfer package(以下,TP)のプロセスに「self-monitoring」が重要であるとされている.しかし,患者の年齢や性格傾向を加味するとself-monitoring能力は不十分であると推察した.そのため,初期から家族も含めた中で治療内容の説明や行動契約を結び,「家族参加型TP」として展開し,家族には患者のself-monitoringの補填及び促進等を担うように共有した.その点以外は,通常のTPと同様に毎日自主訓練用紙/MAL-14の作成及び実施を促していき,前日の実施の有無や率直な感想を作業療法士に報告してもらい,再度修正/実施を繰り返しながら11日の介入を実施した.更に,「家族参加型」であることから訓練内容等の報告のみでなく,家族の身体及び神経疲労度も0(なし)-10(とても疲れている)の中で表現してもらうといった工夫を行い,包括的な治療を展開していった.
【結果】運動麻痺は,FMAUEは61点と上肢機能の改善を図ることができた.また,初期評価時には実施困難であったSTEFは右65点であった.MAL-14は,AOU4点,QOM4点と身体機能面だけでなく,生活への転移も促進させることができた.その他に,家族の疲労度は初回が0点に対し,最終的には9点と増大した.最もストレスを感じたのは,慣れない病院生活であり,本治療に対するスコアは4点であった.
【考察】今回,患者単体でのself-monitoring能力やモチベーション管理は不十分であると推察した.そのため,早期から家族に介入を依頼し,治療に参加してもらうことにより訓練内容の理解やself-monitoringの促進,アドヒアランスの維持/向上が実現できたと推察する.また,これにより好循環を形成することができ,上肢機能改善及びADLの再獲得へと繋がったと推察する.しかし,継時的に家族の疲労度スコアは上昇していった.そのため,今回の運用方法も含め,家族に対しての負担は多大なものであることが分かる.よって,初期より家族も含めた包括的な支援を実現できるように更なる工夫を模索していきたい.
小児期の脳梗塞の発症率は年間1-2/10万人と報告されており(Mastrangelo,2022),
本邦においても稀な症例である.今回,本症例に対して課題指向型訓練と家族参加型transfer package(以下,家族参加型TP)を実施した結果,上肢機能改善及びADLの再獲得へと繋がったため以下に報告する.なお, 本報告に対し,患者及びその家族には書面にて十分な説明を行い,同意を得た.
【症例情報】6歳男児.右利き.性格は活発.これまでに発達障害等の指摘はされていない.また,麻痺側は使用せずに病棟生活を送っていた.両親は交代で終日付き添いをしていた.
【疾患名】ラクナ梗塞(左内包)
【現病歴】X-2日の夕方より右上下肢の動きづらさを自覚した.その後,構音障害も出現したため当院に入院となった.
【作業療法評価】JCS 0.上肢麻痺は, FMAUEは,44点.表在/深部感覚は正常.握力(R/L)は,2/3kgであった.また,右側のSTEFは,物品把持困難のため測定不能. Motor Activity Log-14(以下,MAL-14)のAOU及びQOMは1.4点であった.その他の身体機能や高次脳機能障害等はなかった.目標設定はカナダ作業遂行測定(以下,COPM)を用いて聴取していくと,双方からの食事の自立摂取をはじめとするADLに対するNeedsが多く聴取された.
【作業療法経過】課題指向型訓練では,主目標を「食事動作」と設定した.また,目標設定時に他のADL再獲得の訴えも多く聴取されていたことから,食事以外でも麻痺手の使用頻度の向上を図るため,MAL-14の内容を上肢機能に応じて数項目ずつ訓練に取り入れた.また,それらの項目に対し難易度調整を施しながら副次目標として取り組むこととした.transfer package(以下,TP)のプロセスに「self-monitoring」が重要であるとされている.しかし,患者の年齢や性格傾向を加味するとself-monitoring能力は不十分であると推察した.そのため,初期から家族も含めた中で治療内容の説明や行動契約を結び,「家族参加型TP」として展開し,家族には患者のself-monitoringの補填及び促進等を担うように共有した.その点以外は,通常のTPと同様に毎日自主訓練用紙/MAL-14の作成及び実施を促していき,前日の実施の有無や率直な感想を作業療法士に報告してもらい,再度修正/実施を繰り返しながら11日の介入を実施した.更に,「家族参加型」であることから訓練内容等の報告のみでなく,家族の身体及び神経疲労度も0(なし)-10(とても疲れている)の中で表現してもらうといった工夫を行い,包括的な治療を展開していった.
【結果】運動麻痺は,FMAUEは61点と上肢機能の改善を図ることができた.また,初期評価時には実施困難であったSTEFは右65点であった.MAL-14は,AOU4点,QOM4点と身体機能面だけでなく,生活への転移も促進させることができた.その他に,家族の疲労度は初回が0点に対し,最終的には9点と増大した.最もストレスを感じたのは,慣れない病院生活であり,本治療に対するスコアは4点であった.
【考察】今回,患者単体でのself-monitoring能力やモチベーション管理は不十分であると推察した.そのため,早期から家族に介入を依頼し,治療に参加してもらうことにより訓練内容の理解やself-monitoringの促進,アドヒアランスの維持/向上が実現できたと推察する.また,これにより好循環を形成することができ,上肢機能改善及びADLの再獲得へと繋がったと推察する.しかし,継時的に家族の疲労度スコアは上昇していった.そのため,今回の運用方法も含め,家族に対しての負担は多大なものであることが分かる.よって,初期より家族も含めた包括的な支援を実現できるように更なる工夫を模索していきたい.