[PA-2-2] 脳卒中患者の運動麻痺の有無はドライビングシミュレータの反応時間に影響しない
【はじめに】
自動車運転における先行研究は, 認知機能とドライビングシミュレータ(以下, DS)に着目した研究が多い. Trail Making Test: TMT part Aおよびpart BとDSにおけるブレーキ操作での反応時間は正相関していることが報告されている(中野ら, 2023). またブレーキ操作の反応時間は自動車運転の合否に関わる要素であることが報告されている(生田ら, 2023). しかし, ブレーキ操作の反応時間における因子の検討は認知機能が多く, 身体能力と比較された研究は少ない. また, 認知機能の影響を除外した状態で運動麻痺の有無とブレーキ反応時間を比較した研究も少ない. そこで本研究では, 運動麻痺の有無がブレーキ操作の反応時間に与える影響を検討した. 本研究の目的は, 運動麻痺の有無によるブレーキ操作の反応時間が自動車運転再開の目安の一つとなることとした. 研究仮説として, ブレーキ操作は右下肢で実施するため, 右片麻痺患者の反応時間は, 左片麻痺患者より遅延するとした.
【方法】
研究デザインは後ろ向き観察研究とした. 研究期間は2022年11月1日から2023年11月31日の期間で, 研究実施病院に入院した脳卒中患者を対象とした. 適格基準は1)運転再開の希望があり, 2)病棟内ADLは自立, 3)当院が定めた運転能力と関係のある神経心理学的検査がカットオフ値以上のもの, 4)公共交通機関の使用も自立見込み, 5)主治医の許可を得たものとした. 除外基準は, データ欠損がある, 脳卒中以外の疾患, 左利き, 失語症のものとした. 基本情報として, 年齢, 性別, 疾患名, 麻痺側. 疾患情報として, Brunnstrom Recovery Stage: BRSの上下肢, Mini-Mental State Examination: MMSE, Standard verbal paired-associate learning test: S-PA, Behavioural Inattention Test: BIT, TMT-JのpartAおよびpartB, Kohs Block Design Test: Kohsをカルテより取得した. メインアウトカムはHONDAセーフティナビ(本田技研工業)を使用した運転操作課題の選択反応検査(曲線路, 速度40 km/h)にて, 右または左からの視覚刺激に対するブレーキ操作の平均反応時間を取得した. 選択反応検査の平均反応時間を右片麻痺と左片麻痺で分けて, t検定を行った. 本研究は研究実施病院の倫理委員会により承認を得た.
【結果】
研究実施期間中に入院した中枢疾患患者は490名であり, 適格基準を満たした患者は38名であった. 除外基準を満たし, 最終解析の対象となった脳卒中患者は27名(年齢53±9歳, 男性24名)だった. 対象者の疾患は脳梗塞16名, 脳出血11名, 麻痺側は右片麻痺が15名, BRS下肢(Ⅳ 3名, Ⅴ 6名, Ⅵ 18名), MMSEは29.3±1.1点であった. 右側からの刺激に対するブレーキ操作による選択平均反応時間±標準偏差は右片麻痺(0.95±0.10 sec) と左片麻痺(0.90±0.09 sec)で差は認められなかった(t=1.31, p=0.20). 左側からの刺激に対するブレーキ操作による選択平均反応時間でも右片麻痺 (0.96±0.10 sec) と左片麻痺(0.93±0.09 sec) で差は認められなかった(t=0.57, p=0.58).
【考察】
本研究の対象者は運転と関連のある神経心理学的検査のカットオフ値をすべて超えており, 認知機能低下の影響が少ない被験者を対象としている. 研究結果から, 運転時のブレーキ操作に関する反応時間には運動麻痺が影響されないことが示唆された. 自動車運転をするためには, 適切な認知・予測・判断が行われ, アクセルやブレーキペダルを操作する下肢機能やハンドルを操作する上肢機能が重要となると報告されている(武原ら, 2014). 自動車運転再開支援では, 運動麻痺が残存した場合においても認知機能や運転技能について重きを置いて議論し, 合否を検討すべきだと考える.
自動車運転における先行研究は, 認知機能とドライビングシミュレータ(以下, DS)に着目した研究が多い. Trail Making Test: TMT part Aおよびpart BとDSにおけるブレーキ操作での反応時間は正相関していることが報告されている(中野ら, 2023). またブレーキ操作の反応時間は自動車運転の合否に関わる要素であることが報告されている(生田ら, 2023). しかし, ブレーキ操作の反応時間における因子の検討は認知機能が多く, 身体能力と比較された研究は少ない. また, 認知機能の影響を除外した状態で運動麻痺の有無とブレーキ反応時間を比較した研究も少ない. そこで本研究では, 運動麻痺の有無がブレーキ操作の反応時間に与える影響を検討した. 本研究の目的は, 運動麻痺の有無によるブレーキ操作の反応時間が自動車運転再開の目安の一つとなることとした. 研究仮説として, ブレーキ操作は右下肢で実施するため, 右片麻痺患者の反応時間は, 左片麻痺患者より遅延するとした.
【方法】
研究デザインは後ろ向き観察研究とした. 研究期間は2022年11月1日から2023年11月31日の期間で, 研究実施病院に入院した脳卒中患者を対象とした. 適格基準は1)運転再開の希望があり, 2)病棟内ADLは自立, 3)当院が定めた運転能力と関係のある神経心理学的検査がカットオフ値以上のもの, 4)公共交通機関の使用も自立見込み, 5)主治医の許可を得たものとした. 除外基準は, データ欠損がある, 脳卒中以外の疾患, 左利き, 失語症のものとした. 基本情報として, 年齢, 性別, 疾患名, 麻痺側. 疾患情報として, Brunnstrom Recovery Stage: BRSの上下肢, Mini-Mental State Examination: MMSE, Standard verbal paired-associate learning test: S-PA, Behavioural Inattention Test: BIT, TMT-JのpartAおよびpartB, Kohs Block Design Test: Kohsをカルテより取得した. メインアウトカムはHONDAセーフティナビ(本田技研工業)を使用した運転操作課題の選択反応検査(曲線路, 速度40 km/h)にて, 右または左からの視覚刺激に対するブレーキ操作の平均反応時間を取得した. 選択反応検査の平均反応時間を右片麻痺と左片麻痺で分けて, t検定を行った. 本研究は研究実施病院の倫理委員会により承認を得た.
【結果】
研究実施期間中に入院した中枢疾患患者は490名であり, 適格基準を満たした患者は38名であった. 除外基準を満たし, 最終解析の対象となった脳卒中患者は27名(年齢53±9歳, 男性24名)だった. 対象者の疾患は脳梗塞16名, 脳出血11名, 麻痺側は右片麻痺が15名, BRS下肢(Ⅳ 3名, Ⅴ 6名, Ⅵ 18名), MMSEは29.3±1.1点であった. 右側からの刺激に対するブレーキ操作による選択平均反応時間±標準偏差は右片麻痺(0.95±0.10 sec) と左片麻痺(0.90±0.09 sec)で差は認められなかった(t=1.31, p=0.20). 左側からの刺激に対するブレーキ操作による選択平均反応時間でも右片麻痺 (0.96±0.10 sec) と左片麻痺(0.93±0.09 sec) で差は認められなかった(t=0.57, p=0.58).
【考察】
本研究の対象者は運転と関連のある神経心理学的検査のカットオフ値をすべて超えており, 認知機能低下の影響が少ない被験者を対象としている. 研究結果から, 運転時のブレーキ操作に関する反応時間には運動麻痺が影響されないことが示唆された. 自動車運転をするためには, 適切な認知・予測・判断が行われ, アクセルやブレーキペダルを操作する下肢機能やハンドルを操作する上肢機能が重要となると報告されている(武原ら, 2014). 自動車運転再開支援では, 運動麻痺が残存した場合においても認知機能や運転技能について重きを置いて議論し, 合否を検討すべきだと考える.