[PA-2-22] 脳卒中回復期における目標設定とADLとの関連について
ケースシリーズ研究
脳卒中回復期における目標設定とADLとの関連について~ケースシリーズ研究
キーワード 回復期,目標設定,ADL,(脳卒中)
【目的】近年,リハビリテーションにおいて目標設定が重要視され,その有用性についても報告されている.しかし,どのような対象者にどれくらいの期間でどの程度変化したのかは個別性も高く不明な点も多い.そこで,今回,脳卒中発症後,当院へ搬送され急性期病棟から回復期病棟へ転床した5例を対象に,作業療法にて立案した目標とその達成の可否について調査した.本調査の目的は,脳卒中亜急性期における目標設定とADLとの関連について対象者間で比較し考察することである.
【方法】対象は2022年10月~2023年11月まで回復期病棟にて目標設定し退院した5例.方法は対象者の基礎的情報,入院から目標設定までの日数,目標設定した内容,目標達成の可否,目標設定時FIM運動/認知,退院時FIM運動/認知,在院日数,転帰をカルテより抽出し対象者情報表としてまとめた.情報表から目標達成の可否と対象者の特徴から仮説を形成することとした.なお目標設定には担当作業療法士がAid for Decision-making in Occupation Choice (ADOC)を用い設定し目標達成の可否については主目標で判定した.本報告は,個人情報保護に十分配慮して行い対象者全例より報告に対する同意を得ている.
【結果】対象となった5例について年齢,性別,疾患名(麻痺側),入院から目標設定までの日数,主目標の内容,FIM運動/認知(目標設定時,退院時)を順に示す.対象者Aは80代,男性,脳梗塞(左片麻痺),114日,入浴,設定時FIM65/27点,退院時FIM70/27点.対象者Bは70代,男性,脳梗塞(左片麻痺),65日,入浴,設定時FIM66/34点,退院時FIM66/34点.対象者Cは40代,女性,脳梗塞(左片麻痺),49日,食事,設定時FIM47/23点,退院時61/25点.対象者Dは40代,女性,脳出血(右片麻痺),156日,入浴,設定時FIM50/22点,退院時FIM50/22点.対象者Eは60代,男性,脳梗塞(右片麻痺),49日,入浴,設定時FIM39/25点,退院時FIM66/33点.平均在院日数127.4±35.0日であり転帰は全例在宅復帰していた.次に目標設定においては5例中4例が入浴を設定していた.これらのうち対象者Bのみ目標が達成でき,さらに対象者BはFIM運動項目の改善度が最も高くFIM入浴は1点から4点まで変化していた.
【考察】ADLの難易度が高い入浴動作は目標設定として列挙される可能性が高いと思われる.今回の対象者間比較において入浴の目標が達成できた対象者Eは,目標設定までの日数が短かったこと,目標設定時のFIMが最も低値であったことが挙げられた.もしかすると入浴動作と目標設定については,必ずしもADL自立度と関連しない可能性があり人的介助や環境設定への影響度が高い可能性が考えられた.また,入浴を目標とし達成できなかった3例はFIM運動項目の改善度が5点以下であった.これらから入浴を目標と設定した場合,定期的な目標の見直しを短期間で行う必要あるかもしれない.
キーワード 回復期,目標設定,ADL,(脳卒中)
【目的】近年,リハビリテーションにおいて目標設定が重要視され,その有用性についても報告されている.しかし,どのような対象者にどれくらいの期間でどの程度変化したのかは個別性も高く不明な点も多い.そこで,今回,脳卒中発症後,当院へ搬送され急性期病棟から回復期病棟へ転床した5例を対象に,作業療法にて立案した目標とその達成の可否について調査した.本調査の目的は,脳卒中亜急性期における目標設定とADLとの関連について対象者間で比較し考察することである.
【方法】対象は2022年10月~2023年11月まで回復期病棟にて目標設定し退院した5例.方法は対象者の基礎的情報,入院から目標設定までの日数,目標設定した内容,目標達成の可否,目標設定時FIM運動/認知,退院時FIM運動/認知,在院日数,転帰をカルテより抽出し対象者情報表としてまとめた.情報表から目標達成の可否と対象者の特徴から仮説を形成することとした.なお目標設定には担当作業療法士がAid for Decision-making in Occupation Choice (ADOC)を用い設定し目標達成の可否については主目標で判定した.本報告は,個人情報保護に十分配慮して行い対象者全例より報告に対する同意を得ている.
【結果】対象となった5例について年齢,性別,疾患名(麻痺側),入院から目標設定までの日数,主目標の内容,FIM運動/認知(目標設定時,退院時)を順に示す.対象者Aは80代,男性,脳梗塞(左片麻痺),114日,入浴,設定時FIM65/27点,退院時FIM70/27点.対象者Bは70代,男性,脳梗塞(左片麻痺),65日,入浴,設定時FIM66/34点,退院時FIM66/34点.対象者Cは40代,女性,脳梗塞(左片麻痺),49日,食事,設定時FIM47/23点,退院時61/25点.対象者Dは40代,女性,脳出血(右片麻痺),156日,入浴,設定時FIM50/22点,退院時FIM50/22点.対象者Eは60代,男性,脳梗塞(右片麻痺),49日,入浴,設定時FIM39/25点,退院時FIM66/33点.平均在院日数127.4±35.0日であり転帰は全例在宅復帰していた.次に目標設定においては5例中4例が入浴を設定していた.これらのうち対象者Bのみ目標が達成でき,さらに対象者BはFIM運動項目の改善度が最も高くFIM入浴は1点から4点まで変化していた.
【考察】ADLの難易度が高い入浴動作は目標設定として列挙される可能性が高いと思われる.今回の対象者間比較において入浴の目標が達成できた対象者Eは,目標設定までの日数が短かったこと,目標設定時のFIMが最も低値であったことが挙げられた.もしかすると入浴動作と目標設定については,必ずしもADL自立度と関連しない可能性があり人的介助や環境設定への影響度が高い可能性が考えられた.また,入浴を目標とし達成できなかった3例はFIM運動項目の改善度が5点以下であった.これらから入浴を目標と設定した場合,定期的な目標の見直しを短期間で行う必要あるかもしれない.