[PA-3-10] 脳卒中患者に対する新たな体性感覚検査法(Rivermead Assessment of Somatosensory Performance)日本語版の信頼性と妥当性の検討
【はじめに】リハビリテーションの機能的帰結としては運動機能に主眼を置くことが多く,体性感覚障害に対する機能評価やリハビリテーションが十分に整っているとは言えない(Connell,2004).その原因の1つに,先行研究によって用いられる体性感覚評価が異なり,効果比較ができないことが挙げられている(Serrada,2019).海外では標準化された体性感覚検査法が報告されているが,本邦において信頼性,妥当性が十分に検証された体性感覚検査法は見当たらない.今回,包括的な体性感覚評価法であるRivermead Assessment of Somatosensory Performance(RASP)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した.
【対象】2022年3月〜2023年3月に当院を受診した脳卒中患者で,片麻痺を呈した17例とした.平均年齢は68.5±12.0歳で,内訳は,女性2例,男性15例,右半球損傷8例,左半球損傷9例,脳出血3例,脳梗塞14例,全例右利き,発症からの平均日数47.9±52.2日であった.明らかな認知機能障害,精神障害,聴理解が困難な失語症,過度な関節痛,研究参加を妨げる病状がある場合は対象から除外した.本研究は,山形県立保健医療大学倫理審査委員会(2006-03)の承認を受けたのち,参加前に対象者から口頭と書面による同意を得て実施した.
【方法】RASP原版はWinwardら(2002)が作成した評価である.評価は鋭鈍弁別,触覚,触点定位,触覚性消去,二点弁別,温冷覚,運動覚から構成され,項目ごとに点数化する.総合点はなく,体性感覚障害のプロファイルを表したり,その経時的変化をみたりするのに適している.RASP原版の翻訳はまず著者の許諾を得たのち, SF-36日本語版の翻訳手順にならってRASP日本語版を作成した.その後,脳卒中患者を対象に検者間信頼性,一致性,内的整合性,収束的妥当性を検証した.具体的には,2名の評価者が同一患者に対してRASP日本語版を別の日程で採点し,その誤差を分析した.また1回目の評価時にFMA上肢運動項目(FMA-UE),FMA上肢感覚項目(FMA-S),Box and Block Test (BBT),およびMotor Activity Logにおける麻痺手の使用頻度(MAL-AOM)と動作の質(MAL-QOM)も評価した.RASP各項目における検者間信頼性は,級内相関係数(ICC)を用いて検討した.一致性はBland-Altman分析を行い,誤差の許容範囲,測定の標準誤差,および検出可能な最小変化量を算出した.内的整合性は,RASP全項目におけるCronbachのα係数を算出した.収束的妥当性はRASP各項目と各運動機能評価について,Spearmanの順位相関係数を用いた.統計解析にはR(version 4.3.2, CRAN)を用いた.
【結果】逆翻訳は2回目の翻訳照合で原版と「完全に同じ」になったため,それを以ってRASP日本語版とした.各項目得点の検者間信頼性および誤差の許容範囲の結果は,ICCが0.729~0.967であった.内的整合性は,Cronbachのα係数が0.969であった.RASP各項目と他の機能評価には相関がないものが10項目あった.どのRASP下位項目もFMA上肢感覚項目と中等度以上の相関を示し,相関係数は0.107〜0.941であった.麻痺側上肢に限ったRASP得点のみと他の機能評価との相関がないものは16項目あり,相関係数は0.146〜0.853であった.
【考察】検者間信頼性は,鋭鈍弁別と二点弁別を除いて合理的なICCの基準(Portney, 1993)を満たし,内的整合性も高かったことからRASP日本語版は信頼性の高い評価法であることが示された.鋭鈍弁別と二点弁別は皮質性感覚を評価しているため,検査成績が評価者間で乖離したのだと思われた.
【対象】2022年3月〜2023年3月に当院を受診した脳卒中患者で,片麻痺を呈した17例とした.平均年齢は68.5±12.0歳で,内訳は,女性2例,男性15例,右半球損傷8例,左半球損傷9例,脳出血3例,脳梗塞14例,全例右利き,発症からの平均日数47.9±52.2日であった.明らかな認知機能障害,精神障害,聴理解が困難な失語症,過度な関節痛,研究参加を妨げる病状がある場合は対象から除外した.本研究は,山形県立保健医療大学倫理審査委員会(2006-03)の承認を受けたのち,参加前に対象者から口頭と書面による同意を得て実施した.
【方法】RASP原版はWinwardら(2002)が作成した評価である.評価は鋭鈍弁別,触覚,触点定位,触覚性消去,二点弁別,温冷覚,運動覚から構成され,項目ごとに点数化する.総合点はなく,体性感覚障害のプロファイルを表したり,その経時的変化をみたりするのに適している.RASP原版の翻訳はまず著者の許諾を得たのち, SF-36日本語版の翻訳手順にならってRASP日本語版を作成した.その後,脳卒中患者を対象に検者間信頼性,一致性,内的整合性,収束的妥当性を検証した.具体的には,2名の評価者が同一患者に対してRASP日本語版を別の日程で採点し,その誤差を分析した.また1回目の評価時にFMA上肢運動項目(FMA-UE),FMA上肢感覚項目(FMA-S),Box and Block Test (BBT),およびMotor Activity Logにおける麻痺手の使用頻度(MAL-AOM)と動作の質(MAL-QOM)も評価した.RASP各項目における検者間信頼性は,級内相関係数(ICC)を用いて検討した.一致性はBland-Altman分析を行い,誤差の許容範囲,測定の標準誤差,および検出可能な最小変化量を算出した.内的整合性は,RASP全項目におけるCronbachのα係数を算出した.収束的妥当性はRASP各項目と各運動機能評価について,Spearmanの順位相関係数を用いた.統計解析にはR(version 4.3.2, CRAN)を用いた.
【結果】逆翻訳は2回目の翻訳照合で原版と「完全に同じ」になったため,それを以ってRASP日本語版とした.各項目得点の検者間信頼性および誤差の許容範囲の結果は,ICCが0.729~0.967であった.内的整合性は,Cronbachのα係数が0.969であった.RASP各項目と他の機能評価には相関がないものが10項目あった.どのRASP下位項目もFMA上肢感覚項目と中等度以上の相関を示し,相関係数は0.107〜0.941であった.麻痺側上肢に限ったRASP得点のみと他の機能評価との相関がないものは16項目あり,相関係数は0.146〜0.853であった.
【考察】検者間信頼性は,鋭鈍弁別と二点弁別を除いて合理的なICCの基準(Portney, 1993)を満たし,内的整合性も高かったことからRASP日本語版は信頼性の高い評価法であることが示された.鋭鈍弁別と二点弁別は皮質性感覚を評価しているため,検査成績が評価者間で乖離したのだと思われた.