[PA-3-13] 急性期脳卒中患者における麻痺重症度に応じた麻痺側上肢活動量と両側上肢活動量比率の検証-予備的横断研究-
【はじめに】これまでの急性期脳卒中患者では, 栄養管理ルートや循環器モニタリングなど医学的管理のために上肢使用頻度を連続的に計測することに課題があった. しかし小型活動量記録計が普及して脳卒中患者の上肢活動が計れるようになった. 急性期から上肢運動麻痺の重症度に応じた活動量計測を行うことは回復を予測してADL訓練を進める作業療法計画の定量的な裏付けとなる.
【目的】急性期脳卒中患者の麻痺側上肢機能を重症度分類し, 連続7日間における両側上肢活動量と, 両側上肢活動量比率の推移を明らかにすること.
【方法】研究デザインは, 先行研究を参考に (Li YC, 2023) 予備的横断研究とした. 対象は2023年1月から11月までに当院へ入院し, 作業療法が処方された脳卒中患者. 研究適格基準は, 1) 上肢に運動麻痺を有するもの, 2) MMSE-改訂日本版が24点以上のもの. 研究除外基準は, 1) 既往による脳卒中後の上肢運動麻痺を認めたもの, 2) 麻痺側上肢に整形外科的疾患を有し, 上肢に関節可動域制限を認めたものとした. 研究対象者は初回時のFugl Meyer Assessment (FMA-UE) スコアを2群に分け (47点以上群・未満群, Woodburyら), 上肢活動量はActiGraph (wGT3X-BT) で連続7日間測定した (ActiGraph). 測定から得られた上肢活動量は両上肢の独立した上肢活動量 (Vector Magnitude: VM) と, 両上肢活動量比率 (Magnitude Ratio: MR) を算出した. MRは, 値が1.0に近づくほど両側上肢を同量に使用していると解釈される. 連続7日間の一側上肢のVMと, MR変化をそれぞれ目的変数としてFMA-UEスコアによる麻痺の重症度別と時間経過による二元配置分散分析をした. 事後検定はBonferroni法を用いてVMとMRの経時的変化を比較した. 研究開始前に当院倫理委員会の承認を得た (承認番号:国2022-121). 開示すべきCOIはなし.
【結果】連続7日間のVM変化は, 麻痺側VMにおいて, 麻痺の重症度による主効果を認めた (p<0.01). 事後検定では麻痺側VMにおいて時間経過による違いはなかった. 非麻痺側VMは, 麻痺の重症度と時間経過に主効果は認めなかった. MRは, 麻痺の重症度による主効果を認めた (p<0.01). MRはFMA-UEスコア軽症群 (0.8-1.0) のほうが重症群 (0.4-0.6) よりも高かった.
【考察】急性期脳卒中患者における発症後連続7日間の上肢活動量を計測したところ, 麻痺の軽症者のほうが重症者よりも麻痺側上肢を多く使用していることが示唆された. 脳卒中後のFMA-UEとAction Research Arm Testのスコアは, 3-6週で一時的に回復が停滞するが, 麻痺側上肢の使用率回復は神経学的重症度よりも早く停滞するとされている (Lang CE, 2021). また, 急性期上肢活動量は神経学的重症度と負相関すると報告されている (Gebruers N, 2008). 本研究で得られた発症から7日以内の麻痺側上肢活動量は, 急性期の神経学的重症度に依存していることを示唆する. 両上肢活動量比率は, 健常人データで0.8-1.0, 慢性期脳卒中患者で0.3-0.5と報告されている (Bailey RR, 2013; Taub E, 2006). 麻痺が重度な急性期患者の両上肢活動比率が先行研究の慢性期患者と同様の区間であったことは, 重症者は急性期から慢性期まで上肢活動比率があまり変化していないことが推察された. 重症者には両上肢の活動量を指標としたADL訓練を急性期から計画した場合にどのような効果が得られるかについては次の課題である.
【目的】急性期脳卒中患者の麻痺側上肢機能を重症度分類し, 連続7日間における両側上肢活動量と, 両側上肢活動量比率の推移を明らかにすること.
【方法】研究デザインは, 先行研究を参考に (Li YC, 2023) 予備的横断研究とした. 対象は2023年1月から11月までに当院へ入院し, 作業療法が処方された脳卒中患者. 研究適格基準は, 1) 上肢に運動麻痺を有するもの, 2) MMSE-改訂日本版が24点以上のもの. 研究除外基準は, 1) 既往による脳卒中後の上肢運動麻痺を認めたもの, 2) 麻痺側上肢に整形外科的疾患を有し, 上肢に関節可動域制限を認めたものとした. 研究対象者は初回時のFugl Meyer Assessment (FMA-UE) スコアを2群に分け (47点以上群・未満群, Woodburyら), 上肢活動量はActiGraph (wGT3X-BT) で連続7日間測定した (ActiGraph). 測定から得られた上肢活動量は両上肢の独立した上肢活動量 (Vector Magnitude: VM) と, 両上肢活動量比率 (Magnitude Ratio: MR) を算出した. MRは, 値が1.0に近づくほど両側上肢を同量に使用していると解釈される. 連続7日間の一側上肢のVMと, MR変化をそれぞれ目的変数としてFMA-UEスコアによる麻痺の重症度別と時間経過による二元配置分散分析をした. 事後検定はBonferroni法を用いてVMとMRの経時的変化を比較した. 研究開始前に当院倫理委員会の承認を得た (承認番号:国2022-121). 開示すべきCOIはなし.
【結果】連続7日間のVM変化は, 麻痺側VMにおいて, 麻痺の重症度による主効果を認めた (p<0.01). 事後検定では麻痺側VMにおいて時間経過による違いはなかった. 非麻痺側VMは, 麻痺の重症度と時間経過に主効果は認めなかった. MRは, 麻痺の重症度による主効果を認めた (p<0.01). MRはFMA-UEスコア軽症群 (0.8-1.0) のほうが重症群 (0.4-0.6) よりも高かった.
【考察】急性期脳卒中患者における発症後連続7日間の上肢活動量を計測したところ, 麻痺の軽症者のほうが重症者よりも麻痺側上肢を多く使用していることが示唆された. 脳卒中後のFMA-UEとAction Research Arm Testのスコアは, 3-6週で一時的に回復が停滞するが, 麻痺側上肢の使用率回復は神経学的重症度よりも早く停滞するとされている (Lang CE, 2021). また, 急性期上肢活動量は神経学的重症度と負相関すると報告されている (Gebruers N, 2008). 本研究で得られた発症から7日以内の麻痺側上肢活動量は, 急性期の神経学的重症度に依存していることを示唆する. 両上肢活動量比率は, 健常人データで0.8-1.0, 慢性期脳卒中患者で0.3-0.5と報告されている (Bailey RR, 2013; Taub E, 2006). 麻痺が重度な急性期患者の両上肢活動比率が先行研究の慢性期患者と同様の区間であったことは, 重症者は急性期から慢性期まで上肢活動比率があまり変化していないことが推察された. 重症者には両上肢の活動量を指標としたADL訓練を急性期から計画した場合にどのような効果が得られるかについては次の課題である.