[PA-3-16] 急性期における脳血管障害患者に対する自動車運転再開に向けた注意課題の試用
【はじめに】脳血管障害罹患後の自動車運転の再獲得に向けた介入としては,注意や視覚探索機能が重要とされ,日本高次脳機能障害学会推奨の評価(2020)においても日本語版Trail making test(TMT)やRey複雑図形検査の模写(Rey)が用いられている.運転再開に向けた訓練では,ドライブシュミレーター(DS)を用いて注意,遂行,記憶,視覚機能を改善するための訓練(北上2023)が報告されている.DSを用いない高次脳機能(HBF)訓練についても,注意の選択や持続,転換,分配性の重要性が報告されているが,時間,難易度の段階付けなどについては明確でない.今回我々は,注意機能訓練に着目し,机上で行う課題内容,段階付けをセラピスト間で一定した治療を提供できるよう試みを行った.その内容について以下に報告する.
【目的】急性期における自動車運転再開を目標とした,段階付けした机上課題の効果検証
【対象と方法】対象は,2023年12月から2024年1月の間に当院にて脳血管疾患の診断を受けた症例のうち,自動車の運転再開希望者とした.また重度の失語症,説明理解が困難な者を除外した.入院患者110名のうち運転希望者は22名で,再評価まで経過観察可能であった4名を選出した.対象の年齢は平均65.5歳で,全例男性.全例に感覚障害,視野障害を認めず,運動麻痺はBrunnstrom-Stage Test(BRS)Ⅴ以上であった.リハビリ実施期間は平均17.0日であった.対象には通常評価として,意識レベル(Glasgow coma scale: GCS),BRS,感覚検査,視野検査,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を実施した.運転に関わるHBF評価は,学会推奨のフローチャートに沿って,GCS E4V4M6以上になった時点でTMT,Rey,Frontal Assessment Battery(FAB),WAIS-Ⅳの符合検査(符合検査)の順に実施した.介入は4名のOT(経験年数3〜15年)で実施した.
注意機能訓練は,選択性,転換性,分配性の3課題とした.選択性課題は処理個数,転換性課題は処理個数と末梢ターゲット数,分配性課題は処理個数と抹消方法を変更することで難易度を高・中・低の3段階に割り付けした.対象への課題の割り当ては,TMTのカットオフ値により,正常は高レベル,境界は中レベル,異常は低レベルとして,TMT-Aの結果で選択性,TMT-Bの結果で転換性,分配性の設定を行なった.訓練時間は治療単位内の20分と,自主訓練20分を実施し,訓練後は必ずFeedbackを与えた.また機能改善に伴い,明らかな遂行速度の低下や誤りを認めない場合は一つ上のレベルへ上げる事とした.本研究は所属施設の倫理審査委員会の許可を得て実施した.
【結果】初期評価時のHBF(平均)は,HDS-R 26.5点,TMT-A 87.3秒,TMT-B 128.0秒,Rey 35.0点,FAB 14.0点,符合検査7.8点であった.また1名のみUSNを認め,BIT 130点であった.訓練開始時,3例は全種類の低レベル,1例は選択性課題のみ高レベルから開始した.最終評価時のHBFは,HDS-R 27.8点,TMT-A 63.8秒,TMT-B 106.5秒,Rey 35.9点,FAB 15.8点,符合検査8.8点であった.また1名のUSNは消失した.訓練終了時は,3例は選択性課題が高レベル, 1例は転換性,分配性課題が中レベルに改善した.また,初回評価時のTMT-A正常例において運転について自己認識の変化があった.
【考察】今回試験的に注意課題を運用した結果,少数例であるが全例HBFの改善を認めた.またFeedbackや段階的な訓練実施により,患者自身の障害受容や機能改善の理解を促すことができた.急性期では限られた時間の中で介入することが多く,導入が容易であり,短時間で可能な机上課題は有用であると思われた.今後は症例の積み増しをしながら,継続して調査していきたい.
【目的】急性期における自動車運転再開を目標とした,段階付けした机上課題の効果検証
【対象と方法】対象は,2023年12月から2024年1月の間に当院にて脳血管疾患の診断を受けた症例のうち,自動車の運転再開希望者とした.また重度の失語症,説明理解が困難な者を除外した.入院患者110名のうち運転希望者は22名で,再評価まで経過観察可能であった4名を選出した.対象の年齢は平均65.5歳で,全例男性.全例に感覚障害,視野障害を認めず,運動麻痺はBrunnstrom-Stage Test(BRS)Ⅴ以上であった.リハビリ実施期間は平均17.0日であった.対象には通常評価として,意識レベル(Glasgow coma scale: GCS),BRS,感覚検査,視野検査,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を実施した.運転に関わるHBF評価は,学会推奨のフローチャートに沿って,GCS E4V4M6以上になった時点でTMT,Rey,Frontal Assessment Battery(FAB),WAIS-Ⅳの符合検査(符合検査)の順に実施した.介入は4名のOT(経験年数3〜15年)で実施した.
注意機能訓練は,選択性,転換性,分配性の3課題とした.選択性課題は処理個数,転換性課題は処理個数と末梢ターゲット数,分配性課題は処理個数と抹消方法を変更することで難易度を高・中・低の3段階に割り付けした.対象への課題の割り当ては,TMTのカットオフ値により,正常は高レベル,境界は中レベル,異常は低レベルとして,TMT-Aの結果で選択性,TMT-Bの結果で転換性,分配性の設定を行なった.訓練時間は治療単位内の20分と,自主訓練20分を実施し,訓練後は必ずFeedbackを与えた.また機能改善に伴い,明らかな遂行速度の低下や誤りを認めない場合は一つ上のレベルへ上げる事とした.本研究は所属施設の倫理審査委員会の許可を得て実施した.
【結果】初期評価時のHBF(平均)は,HDS-R 26.5点,TMT-A 87.3秒,TMT-B 128.0秒,Rey 35.0点,FAB 14.0点,符合検査7.8点であった.また1名のみUSNを認め,BIT 130点であった.訓練開始時,3例は全種類の低レベル,1例は選択性課題のみ高レベルから開始した.最終評価時のHBFは,HDS-R 27.8点,TMT-A 63.8秒,TMT-B 106.5秒,Rey 35.9点,FAB 15.8点,符合検査8.8点であった.また1名のUSNは消失した.訓練終了時は,3例は選択性課題が高レベル, 1例は転換性,分配性課題が中レベルに改善した.また,初回評価時のTMT-A正常例において運転について自己認識の変化があった.
【考察】今回試験的に注意課題を運用した結果,少数例であるが全例HBFの改善を認めた.またFeedbackや段階的な訓練実施により,患者自身の障害受容や機能改善の理解を促すことができた.急性期では限られた時間の中で介入することが多く,導入が容易であり,短時間で可能な机上課題は有用であると思われた.今後は症例の積み増しをしながら,継続して調査していきたい.