[PA-3-17] 当院における自動車運転再開支援実施者の臨時適正検査受検率に関する考察
【はじめに】
現在の日本の法律では,医療機関が疾患にかかった者の運転可否の最 終決定をするわけではない.疾患を患い運転に不安を抱えているものに 対しては各都道府県の公安委員会が適性相談を随時受け付けており,最終的には公安委員会が医師の診断を基に臨時適性検査の上で運転の可否を判断する.そして,臨時適性検査で合格した者が法的に自動車等の運転を許可される.都道府県の公安委員会によって相違はあるものの,一般的にはその判断基準として医師からの疾患に関する指定の診断書を求められる.しかし,ほぼ全ての患者がその存在を知らず,診断書や適性検査の認知度は高いといえない.したがって,医師や作業療法士をはじめとした運転支援に係わる医療職は適切に情報を提示する必要があるといわれている.そのため当院では,急性期から退院した患者に対して,運転再開のための適切な情報を提供するようにしている.今回,当院の急性期,外来における自動車運転再開支援を実施した患者を対象に,臨時適性検査の受検状況をアンケートを通じて調査を実施し,取り組みの有効性の検討をすることを目的とする.
【対象と方法】
2019〜2023 年の 5 年間に当院の自動車運転再開支援を実施し,運転 適正ありと判断された脳損傷患者 164 名を調査対象とした. アンケート (自記式)については郵送法にて実施した. 実施に際し,当院倫理委員会の承認済みである. 急性期から適切な情報を患者に提供する流れとして当院では,1.作業療法評価の結果を主治医に伝える,2.主治医に本人・家族への運転再開にあたっての注意点,公安委委員会への案内を依頼,3.作業療法士が本人,家族に対して臨時適正検査の案内書類を用いて詳細説明を行う4.必要であれば,主治医に診断書の作成を依頼するという流れで行っている.
【結果】
アンケートは164名中宛先不明で返送された4名を除く97名から返送,回収率は61%であった.その内有効回答数は94名であり,有効回答率は59%であった.調査の結果,94名中86名が運転を再開してい た.その内58名が臨時適正検査を受検したと回答,受検率は67%であった.受検していない患者の内訳は,急性期で18/39 名,外来10/47 名であり,急性期患者の割合が46%,外来患者の割合が21%に占めていた. 受検していない理由の中には,“何も言われていない”という旨の回答が外来で1名,急性期で4名みられた.他にも“まだ免許更新でないから”や“年齢に達していないから”,“必要ないと思ったから”,“理学療法士の方に受けなくても良いと言われたから”の回答もみられた.
【考察】
自動車運転再開者86名の内58名(67%)が受検しており,その内急性期患者54%,外来患者は79%の受検率という結果であった.外川らの報告と比較して当院の受検率は外来では遜色ないが,急性期において低い結果となった.急性期において受検率が低い要因として,アンケート結果から考察する.当院では急性期退院後から運転の希望がある患者と運転支援外来の患者では,導入に相違がある.外来では初回運転面談があり本人,家族,作業療法士,医師の同席の元,運転支援外来の説明を書類を用いて医師が行い同意を得られた場合,署名をもらうという仕組みで行っているが,急性期ではそのような仕組みはなく,急性期で運転支援チームとしての役割を担っている脳血管チームの作業療法士が上記方法(対象と方法参照)に沿って対応しており,患者に重要性が伝わっていなかった可能性が考えられる.また運転支援チーム以外のリハビリスタッフに対する啓蒙活動が不十分であった可能性が考えられる.
現在の日本の法律では,医療機関が疾患にかかった者の運転可否の最 終決定をするわけではない.疾患を患い運転に不安を抱えているものに 対しては各都道府県の公安委員会が適性相談を随時受け付けており,最終的には公安委員会が医師の診断を基に臨時適性検査の上で運転の可否を判断する.そして,臨時適性検査で合格した者が法的に自動車等の運転を許可される.都道府県の公安委員会によって相違はあるものの,一般的にはその判断基準として医師からの疾患に関する指定の診断書を求められる.しかし,ほぼ全ての患者がその存在を知らず,診断書や適性検査の認知度は高いといえない.したがって,医師や作業療法士をはじめとした運転支援に係わる医療職は適切に情報を提示する必要があるといわれている.そのため当院では,急性期から退院した患者に対して,運転再開のための適切な情報を提供するようにしている.今回,当院の急性期,外来における自動車運転再開支援を実施した患者を対象に,臨時適性検査の受検状況をアンケートを通じて調査を実施し,取り組みの有効性の検討をすることを目的とする.
【対象と方法】
2019〜2023 年の 5 年間に当院の自動車運転再開支援を実施し,運転 適正ありと判断された脳損傷患者 164 名を調査対象とした. アンケート (自記式)については郵送法にて実施した. 実施に際し,当院倫理委員会の承認済みである. 急性期から適切な情報を患者に提供する流れとして当院では,1.作業療法評価の結果を主治医に伝える,2.主治医に本人・家族への運転再開にあたっての注意点,公安委委員会への案内を依頼,3.作業療法士が本人,家族に対して臨時適正検査の案内書類を用いて詳細説明を行う4.必要であれば,主治医に診断書の作成を依頼するという流れで行っている.
【結果】
アンケートは164名中宛先不明で返送された4名を除く97名から返送,回収率は61%であった.その内有効回答数は94名であり,有効回答率は59%であった.調査の結果,94名中86名が運転を再開してい た.その内58名が臨時適正検査を受検したと回答,受検率は67%であった.受検していない患者の内訳は,急性期で18/39 名,外来10/47 名であり,急性期患者の割合が46%,外来患者の割合が21%に占めていた. 受検していない理由の中には,“何も言われていない”という旨の回答が外来で1名,急性期で4名みられた.他にも“まだ免許更新でないから”や“年齢に達していないから”,“必要ないと思ったから”,“理学療法士の方に受けなくても良いと言われたから”の回答もみられた.
【考察】
自動車運転再開者86名の内58名(67%)が受検しており,その内急性期患者54%,外来患者は79%の受検率という結果であった.外川らの報告と比較して当院の受検率は外来では遜色ないが,急性期において低い結果となった.急性期において受検率が低い要因として,アンケート結果から考察する.当院では急性期退院後から運転の希望がある患者と運転支援外来の患者では,導入に相違がある.外来では初回運転面談があり本人,家族,作業療法士,医師の同席の元,運転支援外来の説明を書類を用いて医師が行い同意を得られた場合,署名をもらうという仕組みで行っているが,急性期ではそのような仕組みはなく,急性期で運転支援チームとしての役割を担っている脳血管チームの作業療法士が上記方法(対象と方法参照)に沿って対応しており,患者に重要性が伝わっていなかった可能性が考えられる.また運転支援チーム以外のリハビリスタッフに対する啓蒙活動が不十分であった可能性が考えられる.