[PA-3-18] 「早く家に帰りたい!」カナダモデルを用いて急性期病院から早期自宅復帰が可能になった一事例
【はじめに】右延髄梗塞発症により左片麻痺を呈しセルフケア動作が困難となった一事例.クライエントの価値観や強い意思を尊重し,急性期より自宅復帰へ向けて協働し,人と作業に焦点をあてながら計画を実行した.結果,早期自宅復帰することが出来た為詳細を報告する.尚,発表に際して本人へ了承を得ている.
【事例背景】70歳台大柄な女性,家族で自営業を営む夫と子供の4人暮らし.セルフケア動作は自立,20年前から糖尿病を罹患し,視野障害があり,12年前の左膝蓋骨骨折術後より屋外での活動は少なく主な家事は子供が行うが,働く子供の負担が減るように皿洗いや洗濯たたみなど簡単な家事や自営業の事務作業を担っていた.思ったことをはっきりと言う裏表のない性格であり,肝っ玉母さんのような存在であった.
【作業療法評価】初回介入時は今までの生活と異なる環境,何をするにも自分一人でできない(人の手を煩わしたくない),思うように動かない体に対するストレスが強く,苛立ちと混乱状態で涙される場面もあったが,一刻も「早く家に帰りたい!」という強い意思があった.3病日目,クライエントの想いを尊重しつつリーズニングを行い早期自宅復帰するため「トイレが介助なくできるようになる」(COPM重要度10,実行度:1,満足度1)ことを目標とした.左上下肢の支持性低下,感覚障害を認め,食事・整容以外は介助を必要としていた.(代弁,コーチ)FIM:62点(運動27点/認知35点),BRS:左上肢Ⅳ・左手指Ⅳ・左下肢Ⅳ,SIAS:43点,MMSE:27点であった.
【介入と経過】トイレへ行くためには「ひとりで靴を履ける」「ひとりで車いすに移れる」「ひとりでズボンの上げ下げができる」と課題が明確になった.まずベッドサイドにて車いすへの移乗位置やベッド柵や高さ,靴の着脱を容易にする為にファスナーへ紐を付ける等,動きやすい環境調整を行った.またトイレでの動作を確認し,ズボン着脱練習を行った.(適応,協働,相談,調整,デザイン・実行)26病日目「トイレが介助なくできるようになる」はCOPMでの実行度8,満足度8と改善を認めていた為,クライエント・家族の想いも含め,カンファレンスにより当院から自宅復帰の方向性が決定した.(代弁,調整)
38病日,介護支援専門員と同行し,退院前訪問指導を実施.生活空間での動線やトイレや風呂の環境調整を行い,42病日自宅復帰となった.FIM:105点(運動70点/認知35点),BRS:左上肢Ⅴ・左手指Ⅵ・左下肢Ⅴ,SIAS:58点.トイレと風呂の手すり工事(住宅改修)が完了するまでには時間を要すが, クライエントの早期復帰の希望が強い為,手すり工事完了までは手すり代わりの環境調整と家族への動作指導を行った.(相談,調整)
退院後は訪問リハビリへつなげていくとともに,自宅復帰3日後に生活状況の確認する為,自宅訪問を行った.日中夜間ともに介助なくトイレ動作は自立しており「大丈夫よ」と落ちついた表情でいつもの場所に座っている姿があった.
【結果】クライエント中心の作業療法を行った結果,COPMは遂行度・満足度ともに1から8へ改善,FIMは33点,SIAS15点の改善,自宅環境を整えた後自宅復帰となった.
【考察】作業療法士とクライエントの間には表面的ではない感情レベルでの相互交流を生み出され,クライエントは本音で語りやすくなる(吉川,2019)と記述されており,急性期病院では心身機能面に重きを置きがちになるが,今回クライエント中心のカナダモデルを使用することで(適応,代弁,コーチ,協働,相談,調整,デザイン・実行),クライエントの希望する早期自宅復帰へつながったと考える.
【事例背景】70歳台大柄な女性,家族で自営業を営む夫と子供の4人暮らし.セルフケア動作は自立,20年前から糖尿病を罹患し,視野障害があり,12年前の左膝蓋骨骨折術後より屋外での活動は少なく主な家事は子供が行うが,働く子供の負担が減るように皿洗いや洗濯たたみなど簡単な家事や自営業の事務作業を担っていた.思ったことをはっきりと言う裏表のない性格であり,肝っ玉母さんのような存在であった.
【作業療法評価】初回介入時は今までの生活と異なる環境,何をするにも自分一人でできない(人の手を煩わしたくない),思うように動かない体に対するストレスが強く,苛立ちと混乱状態で涙される場面もあったが,一刻も「早く家に帰りたい!」という強い意思があった.3病日目,クライエントの想いを尊重しつつリーズニングを行い早期自宅復帰するため「トイレが介助なくできるようになる」(COPM重要度10,実行度:1,満足度1)ことを目標とした.左上下肢の支持性低下,感覚障害を認め,食事・整容以外は介助を必要としていた.(代弁,コーチ)FIM:62点(運動27点/認知35点),BRS:左上肢Ⅳ・左手指Ⅳ・左下肢Ⅳ,SIAS:43点,MMSE:27点であった.
【介入と経過】トイレへ行くためには「ひとりで靴を履ける」「ひとりで車いすに移れる」「ひとりでズボンの上げ下げができる」と課題が明確になった.まずベッドサイドにて車いすへの移乗位置やベッド柵や高さ,靴の着脱を容易にする為にファスナーへ紐を付ける等,動きやすい環境調整を行った.またトイレでの動作を確認し,ズボン着脱練習を行った.(適応,協働,相談,調整,デザイン・実行)26病日目「トイレが介助なくできるようになる」はCOPMでの実行度8,満足度8と改善を認めていた為,クライエント・家族の想いも含め,カンファレンスにより当院から自宅復帰の方向性が決定した.(代弁,調整)
38病日,介護支援専門員と同行し,退院前訪問指導を実施.生活空間での動線やトイレや風呂の環境調整を行い,42病日自宅復帰となった.FIM:105点(運動70点/認知35点),BRS:左上肢Ⅴ・左手指Ⅵ・左下肢Ⅴ,SIAS:58点.トイレと風呂の手すり工事(住宅改修)が完了するまでには時間を要すが, クライエントの早期復帰の希望が強い為,手すり工事完了までは手すり代わりの環境調整と家族への動作指導を行った.(相談,調整)
退院後は訪問リハビリへつなげていくとともに,自宅復帰3日後に生活状況の確認する為,自宅訪問を行った.日中夜間ともに介助なくトイレ動作は自立しており「大丈夫よ」と落ちついた表情でいつもの場所に座っている姿があった.
【結果】クライエント中心の作業療法を行った結果,COPMは遂行度・満足度ともに1から8へ改善,FIMは33点,SIAS15点の改善,自宅環境を整えた後自宅復帰となった.
【考察】作業療法士とクライエントの間には表面的ではない感情レベルでの相互交流を生み出され,クライエントは本音で語りやすくなる(吉川,2019)と記述されており,急性期病院では心身機能面に重きを置きがちになるが,今回クライエント中心のカナダモデルを使用することで(適応,代弁,コーチ,協働,相談,調整,デザイン・実行),クライエントの希望する早期自宅復帰へつながったと考える.