[PA-3-19] 急性期脳卒中患者に対しロボット療法と反復末梢磁気刺激を併用した一例
【はじめに】脳卒中亜急性期以降の上肢機能障害に対するロボット療法の推奨度は高く(脳卒中ガイドライン2023改訂版,推奨度A),反復末梢磁気刺激(以下,rPMS)の有効性の報告も散見されるが,急性期脳卒中患者に対しロボット療法と rPMSを併用した報告は少ない.
今回,急性期脳卒中患者に対し,通常の作業療法に加えロボット療法とrPMSを併用した症例を経験したので報告する.本報告に関して書面にて本人の同意を得ている.
【症例】50歳代男性.右利き.突然右上下肢麻痺を発症し当院救急受診,左視床出血(11ml)の診断で入院し降圧による保存的加療を行った.病前のADLは自立,独居で様々なアルバイトをしていた.
【初期評価】JCS10,Brunnstrom-recovery-stage(以下,Brs)上肢Ⅱ,手指Ⅲ,下肢Ⅲ,Fugl-Meyer Assessment上肢項目(以下,FMA-UE)29/66,Action Research Test(以下,ARAT)15/57.握力右12.8kg,左25.6kg.軽度感覚障害あり.BI0/100.MMSE-J14/30.注意障害や構音障害はあるが,簡単な従命動作は可能であった.ABMSⅡ5/30と基本動作や移乗動作は重度介助を要した.
【介入経過】第1病日よりベットサイドで基本動作と促通反復訓練を開始した.第3病日,発熱や血圧変動が軽快したため離床を開始した.第7病日,肩関節周囲筋と肘・手関節背屈筋にrPMS(Pathleader :IFG社製)を開始した.磁気刺激による疼痛を確認しながら刺激周波数30Hz,Level55%にて各筋に対し20回ずつ実施した.第8病日,JCS3,Brsは上肢Ⅳ手指Ⅴと改善,車椅子座位が安定したため,ロボット療法(上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGO-J :帝人ファーマ社製)を,前方リーチ全介助中等度負荷より開始し,介助量や方向を調整し第12病日に初動時負荷での前方・外転リーチ,第18病日に段階的負荷での前方リーチを実施した.上肢機能に合わせた課題指向型訓練やADL訓練,ロボット療法とrPMSを含め1日あたり40分〜60分の作業療法を毎日施行した.転院時の第29病日までrPMSは9回,ロボット療法は10回実施した.同時に通常の理学療法に加え歩行練習支援ロボット(Welwalk1000)を使用した歩行訓練も行った.
【最終評価】Brs .上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ,FMA-UE49/66,ARAT42/57,握力右27.5kg,左29.3kg.と上肢機能は改善した.特にFMA-UEでは肩,肘,腕の項目,ARATでは代償動作はあるが全項目で課題遂行可能となった.ABMSⅡ22/30,BI25/100と右麻痺の改善より基本動作や食事・トイレ動作,車椅子移乗の介助量が軽減し病棟での離床頻度が向上した.しかし,病棟生活における麻痺側上肢の積極的な活動参加には繋がらなかった.
【考察】急性期脳卒中患者に対し通常の作業療法に加えロボット療法とrPMSを併用し,FMA-UEでは20点,ARATでは27点の改善を認め,評価で臨床上意味のある最小変化量(MCID)を超える結果を得た.本症例では発症後早期からのrPMSによる末梢刺激とロボット療法による反復的関節運動の継続が,神経可塑的変化に繋がり,機能改善に寄与した可能性があると推察する.急性期脳卒中患者のロボット療法は,現状では時期・頻度・難易度などにつき確立された方法がない.今後は症例を重ね,有効なプログラムの検討が課題と考える.
今回,急性期脳卒中患者に対し,通常の作業療法に加えロボット療法とrPMSを併用した症例を経験したので報告する.本報告に関して書面にて本人の同意を得ている.
【症例】50歳代男性.右利き.突然右上下肢麻痺を発症し当院救急受診,左視床出血(11ml)の診断で入院し降圧による保存的加療を行った.病前のADLは自立,独居で様々なアルバイトをしていた.
【初期評価】JCS10,Brunnstrom-recovery-stage(以下,Brs)上肢Ⅱ,手指Ⅲ,下肢Ⅲ,Fugl-Meyer Assessment上肢項目(以下,FMA-UE)29/66,Action Research Test(以下,ARAT)15/57.握力右12.8kg,左25.6kg.軽度感覚障害あり.BI0/100.MMSE-J14/30.注意障害や構音障害はあるが,簡単な従命動作は可能であった.ABMSⅡ5/30と基本動作や移乗動作は重度介助を要した.
【介入経過】第1病日よりベットサイドで基本動作と促通反復訓練を開始した.第3病日,発熱や血圧変動が軽快したため離床を開始した.第7病日,肩関節周囲筋と肘・手関節背屈筋にrPMS(Pathleader :IFG社製)を開始した.磁気刺激による疼痛を確認しながら刺激周波数30Hz,Level55%にて各筋に対し20回ずつ実施した.第8病日,JCS3,Brsは上肢Ⅳ手指Ⅴと改善,車椅子座位が安定したため,ロボット療法(上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGO-J :帝人ファーマ社製)を,前方リーチ全介助中等度負荷より開始し,介助量や方向を調整し第12病日に初動時負荷での前方・外転リーチ,第18病日に段階的負荷での前方リーチを実施した.上肢機能に合わせた課題指向型訓練やADL訓練,ロボット療法とrPMSを含め1日あたり40分〜60分の作業療法を毎日施行した.転院時の第29病日までrPMSは9回,ロボット療法は10回実施した.同時に通常の理学療法に加え歩行練習支援ロボット(Welwalk1000)を使用した歩行訓練も行った.
【最終評価】Brs .上肢Ⅴ,手指Ⅴ,下肢Ⅳ,FMA-UE49/66,ARAT42/57,握力右27.5kg,左29.3kg.と上肢機能は改善した.特にFMA-UEでは肩,肘,腕の項目,ARATでは代償動作はあるが全項目で課題遂行可能となった.ABMSⅡ22/30,BI25/100と右麻痺の改善より基本動作や食事・トイレ動作,車椅子移乗の介助量が軽減し病棟での離床頻度が向上した.しかし,病棟生活における麻痺側上肢の積極的な活動参加には繋がらなかった.
【考察】急性期脳卒中患者に対し通常の作業療法に加えロボット療法とrPMSを併用し,FMA-UEでは20点,ARATでは27点の改善を認め,評価で臨床上意味のある最小変化量(MCID)を超える結果を得た.本症例では発症後早期からのrPMSによる末梢刺激とロボット療法による反復的関節運動の継続が,神経可塑的変化に繋がり,機能改善に寄与した可能性があると推察する.急性期脳卒中患者のロボット療法は,現状では時期・頻度・難易度などにつき確立された方法がない.今後は症例を重ね,有効なプログラムの検討が課題と考える.