[PA-3-2] 回復期リハビリテーション病院退院後のオンラインによる追跡調査
一事例の調査から得られたこと
[はじめに]
回復期リハビリテーション病院(以下,回復期リハ)退院後の事例に対して,入院中に実施していた日常生活活動(以下,ADL)練習が退院後の在宅生活において生かされているか,オンラインによる自宅での動作確認による追跡調査を実施した.入院時から退院後の生活のイメージの構築にあたって,追跡調査の重要性とオンラインの有用性について知見を得られた事例を経験したので若干の考察を加えて報告する.本発表は本人及び当院倫理員会の承認を得ている.
[症例紹介]
70代女性,左視床出血にて回復期リハに入院し,4ヶ月半後に自宅退院.退院時のBr.stageはⅤ-Ⅳ-Ⅴ.機能的自立度評価法は104点(運動項目71点,認知項目33点).MMSEは28点.入院中に家屋調査は実施したが,試験外泊は新型コロナウイルスの急激な拡大を受け未実施.自宅は10~30㎝の段差が多く,住宅改修による手摺り設置を提案.段差昇降練習を理学療法士,作業療法士(以下,OT)による介入に加え,看護師による病棟練習を実施し見守りで可能となる.退院後生活の想定としては,居室内は車いす自操で移動し,家族の居るときは介助にて段差昇降を実施.排泄はポータブルトイレにて自立を想定.退院後は当院の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用.
[方法]
退院翌日に訪問リハ開始し,訪問リハスタッフから生活状況について聴取.新型コロナウイルス感染症の拡大を受け,病棟OTは対面を伴わないオンラインでの退院後の家屋訪問を実施.訪問リハスタッフが介入日に当院所有の持ち出し可能なタブレットを使用して,オンラインで自宅生活での動作確認を病棟OTと共に行い,入院時の状況と併せて情報共有を行った.
[結果]
退院直後,自宅での排泄などの身辺動作は退院時の想定通りに行えていたが,事例からは「自分の家ではないみたい」などの発言が聞かれ,退院後の自宅環境に慣れないと不安や混乱の訴えが聞かれた.入院時に段差昇降練習を行い見守りで可能となっていたが,麻痺側下肢から昇段するなど動作手順の混乱が見られ不安定であった.オンラインでの追跡調査は,リアルタイムに訪問リハスタッフ,事例と共に情報共有ができ,入院中に実施していたADL練習が退院後の在宅生活において生かされているか確認できた.病棟OTは自宅までに移動に要する時間がなく支援しやすい手段であった.
[考察とまとめ]
退院直後の在宅導入期では,管理体制が整備された病院から在宅というさまざまな課題を解決してなければならない不安定な時期であり,生活への不適応が発生することでADLが低下する恐れがあるとの報告がある1).今回の事例は,入院時から退院後の生活を想定し,段差昇降は見守りで可能となっていたが,自宅退院後は段差昇降動作に混乱をきたしていた.自宅では,管理体制が整備された病院とは異なり,慣れ親しんだ自宅においても障害を負って初めて生活する中で経験する動作や活動があることから不安定な時期であり,本事例においても,動作手順の混乱に至っていたのではないかと考える.退院直後に「自分の家ではないみたい」との退院後の自宅環境に慣れないと不安や混乱の発言が聞かれた.回復期病院に4ヶ月半と長期に入院したことも一要因して考えられ,入院期間中に定期的な試験外出,外泊の重要性を感じた.オンラインでの家屋訪問による追跡調査は,新型コロナウイルス感染症の急激な拡大を受け,対面を伴わないで可能な点や病棟OTは移動に要する時間がなく,支援しやすい手段となるため,有効と考える.
1)日本リハビリテーション病院・施設協会(偏):維持期リハビリテーション,三輪書店,2010
回復期リハビリテーション病院(以下,回復期リハ)退院後の事例に対して,入院中に実施していた日常生活活動(以下,ADL)練習が退院後の在宅生活において生かされているか,オンラインによる自宅での動作確認による追跡調査を実施した.入院時から退院後の生活のイメージの構築にあたって,追跡調査の重要性とオンラインの有用性について知見を得られた事例を経験したので若干の考察を加えて報告する.本発表は本人及び当院倫理員会の承認を得ている.
[症例紹介]
70代女性,左視床出血にて回復期リハに入院し,4ヶ月半後に自宅退院.退院時のBr.stageはⅤ-Ⅳ-Ⅴ.機能的自立度評価法は104点(運動項目71点,認知項目33点).MMSEは28点.入院中に家屋調査は実施したが,試験外泊は新型コロナウイルスの急激な拡大を受け未実施.自宅は10~30㎝の段差が多く,住宅改修による手摺り設置を提案.段差昇降練習を理学療法士,作業療法士(以下,OT)による介入に加え,看護師による病棟練習を実施し見守りで可能となる.退院後生活の想定としては,居室内は車いす自操で移動し,家族の居るときは介助にて段差昇降を実施.排泄はポータブルトイレにて自立を想定.退院後は当院の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を利用.
[方法]
退院翌日に訪問リハ開始し,訪問リハスタッフから生活状況について聴取.新型コロナウイルス感染症の拡大を受け,病棟OTは対面を伴わないオンラインでの退院後の家屋訪問を実施.訪問リハスタッフが介入日に当院所有の持ち出し可能なタブレットを使用して,オンラインで自宅生活での動作確認を病棟OTと共に行い,入院時の状況と併せて情報共有を行った.
[結果]
退院直後,自宅での排泄などの身辺動作は退院時の想定通りに行えていたが,事例からは「自分の家ではないみたい」などの発言が聞かれ,退院後の自宅環境に慣れないと不安や混乱の訴えが聞かれた.入院時に段差昇降練習を行い見守りで可能となっていたが,麻痺側下肢から昇段するなど動作手順の混乱が見られ不安定であった.オンラインでの追跡調査は,リアルタイムに訪問リハスタッフ,事例と共に情報共有ができ,入院中に実施していたADL練習が退院後の在宅生活において生かされているか確認できた.病棟OTは自宅までに移動に要する時間がなく支援しやすい手段であった.
[考察とまとめ]
退院直後の在宅導入期では,管理体制が整備された病院から在宅というさまざまな課題を解決してなければならない不安定な時期であり,生活への不適応が発生することでADLが低下する恐れがあるとの報告がある1).今回の事例は,入院時から退院後の生活を想定し,段差昇降は見守りで可能となっていたが,自宅退院後は段差昇降動作に混乱をきたしていた.自宅では,管理体制が整備された病院とは異なり,慣れ親しんだ自宅においても障害を負って初めて生活する中で経験する動作や活動があることから不安定な時期であり,本事例においても,動作手順の混乱に至っていたのではないかと考える.退院直後に「自分の家ではないみたい」との退院後の自宅環境に慣れないと不安や混乱の発言が聞かれた.回復期病院に4ヶ月半と長期に入院したことも一要因して考えられ,入院期間中に定期的な試験外出,外泊の重要性を感じた.オンラインでの家屋訪問による追跡調査は,新型コロナウイルス感染症の急激な拡大を受け,対面を伴わないで可能な点や病棟OTは移動に要する時間がなく,支援しやすい手段となるため,有効と考える.
1)日本リハビリテーション病院・施設協会(偏):維持期リハビリテーション,三輪書店,2010