第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-3-3] 回復期における中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中に対する短時間神経筋電気刺激の効果

平野 瑞佳, 古田 憲一郎 (医療法人社団苑田会竹の塚脳神経リハビリテーション病院 リハビリテーション部)

【はじめに】当院では第57回日本作業療法学会において, 回復期における上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対する短時間神経筋電気刺激(以下, Short-NMES:S-NMES)の効果を検証し, Fugl-Meyer Assessment Scaleの上肢項目(以下, FMA-UE)とMotor Activity Log(以下, MAL)にて有意な改善を認めたことを報告した. しかし, 前回の研究においては症例数が9例と少なかった. 今回, 効果量r=0.5, 検出力0.80, 有意水準5%で適正なサンプルサイズを計算すると35例となった. 本研究では前回に引き続き調査を実施し, 症例数を増やし検証を行ったため, 以下に報告する.
【方法】本研究は, 当院でのカルテ情報を用いた後ろ向き研究である. 対象は, 2021年4月1日から2024年1月31日の間に当院回復期リハビリテーション病棟に入院および退院し, IVESを使用した脳卒中患者とした. 除外基準は, 次に示す調査データが得られないものとした. 調査データは, 年齢, 性別, 発症から入棟までの日数, 治療日数, 機能的自立度評価法(以下, FIM), FMA-UE, MALとした. MALはAmount of Use(以下, MAL-A)とQuality of Movement(以下, MAL-Q)を用いた. なお, FMA-UEとMALは入院時および退院時に実施した. 作業療法の頻度は, 40~60分/日を週5~7日実施した. 介入内容は, 一部位5分のS-NMESを最大4か所(三角筋前部および上腕三頭筋, 三角筋中部および上腕三頭筋, 総指伸筋および固有示指伸筋, 浅指屈筋および浅指屈筋腱)に実施した. S-NMES実施後, 20~40分の課題志向型訓練を実施した. 対象者の基本属性は記述統計量でまとめる. 介入前後の比較には, 全ての評価項目に対してShapiro-Wilk検定を実施後, Wilcoxonの符号付順位検定を用いた. なお, 統計学的分析にはEZRを用い, 有意水準は5%とした. 倫理的配慮として, 本研究はオプトアウトにて情報公開を行い, 研究への参加を拒否する機会を保障した.
【結果】対象者は, 男性22名と女性13名の計35名であり, 年齢は65.2±11.2歳(平均値±標準偏差)であった. 発症から入棟までの日数は21.6±9.9日, 治療期間は91.6±36.5日, 入院時FIMは79.3±27.7点であった. 調査データ項目の前後比較では, FMA-UEは14.8±14.0点(p<0.05), MAL-Aは1.09±1.4点, (p<0.05), MAL-Qは1.0±1.3点(p<0.05)と退院時に有意差を認めた.
【考察】本研究では, 回復期リハビリテーションにおいて中等度以上の上肢麻痺を呈する脳卒中患者に対してS-NMESを実施した結果, FMA-UEとMAL-A, MAL-Qにて有意な改善を認めた. Obayashi(2020)の先行研究においては, 急性期の中等度麻痺以上の脳卒中患者を対象としていたが, 回復期においてもある一定の効果が得られたと考える. また, 先行研究が示す臨床的有意な最小変化量(Minimal Clinically Important Difference;以下, MCID)の観点では, 急性期におけるFMAのMCIDは10点(Shelton FD, 2001), MAL-QのMCIDは1.0~1.1点(Lang CE, 2008)と報告しており, 生活期におけるFMAのMCIDは4.25~7.25点(Page SJ, 2012), MAL-AおよびMAL-QのMCIDは0.6~0.75点と報告している(van der Lee JH, 1999). 本研究は回復期における分析であるため, 一概には比較できないが, 回復期においてもS-NMESによる麻痺手の機能的改善に効果が得られる可能性が示唆された.