[PA-3-6] 回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者の夫が高齢介護者として抱いた不安と対処の過程
【はじめに】脳卒中の後遺症に伴う要介護高齢者が増加し,老老介護の世帯もまた増加している.老老介護は身体的・精神的負担も大きいことから,入院中より介護者の不安を把握し適切な支援を提供すべきと考える.今回,不安の一端を理解することを目的に,脳卒中で入院経験のある高齢夫婦に着目し,夫が経験した介護者としての不安と対処の過程を明らかにすることとした.
【対象者】対象は,脳卒中により当院回復期リハ病棟に入院した経験のある妻とともに現在,在宅生活をしている夫である.妻は中等度左不全麻痺,嚥下障害,注意障害を認めている.入院時は車いすを使用し日常生活活動全般に全介助,退院時は四点杖歩行にて日常生活活動に見守りや軽介助を要している.80歳代の夫婦世帯で,夫婦関係は良好である.
【方法】本研究は担当作業療法士がインタビューにてデータ収集を行い,複線経路等至性アプローチ(TEM)を用いて分析した.インタビューは1回40~60分の半構造化インタビューを妻の退院1か月後に3回実施し,聴取した内容の逐語録を作成した.夫が高齢介護者として経験した出来事や不安,思い等を意味のあるまとまりごとに切片化した.妻が回復期リハ病棟入院から在宅生活に至るまでの経過の中で夫の不安や思いに焦点を当て,時間軸に沿って並び替え,TEM図を作成した.本研究は所属先の倫理審査委員会の承認及び,対象者と妻には口頭と書面にて説明し同意を得ている.
【結果】Ⅰ期:回復期リハ病棟への転院時,夫は〈リハが受けられる喜びと期待〉と,経鼻経管やバルーンカテーテルが挿入され,動くことのできない身体で〈リハに耐えられるのか〉との不安を抱いていた.また,夫は眠れない日々や気分の落ち込み等をきたしていた.妻の改善は緩やかで,医療従事者から伝えられる出来事に〈日々気持ちが一喜一憂〉し,〈吉報を待ち望む〉状態であった.Ⅱ期:〈口頭や動画による説明と実際に歩く妻の姿に改善と頑張りへの称賛〉を抱き,経口摂取で嘔吐を繰り返す状況に〈思うように進まないジレンマ〉を感じていた.その後,夫は妻が将来的に介助を要しても〈再び夫婦で互いを支えあいたい〉と,自宅退院を決意した.また,夫は調理への挑戦やジム通い等を再開し,気分転換の大切さを経験した.その後も妻の経口摂取は進まず,妻同席のもと胃ろうの説明を受けた.夫は〈苛立ちと胃ろうへの拒否〉〈食べさせたら何とかなるのでは〉との考えを抱き,妻を説得して経口摂取を再開する決断をした.Ⅲ期:起居や歩行,排泄等の家族指導を受け〈介助の大変さと体力への不安〉〈介助への使命感〉と同時に,〈なぜこんな目に合うんだ〉と悲観的な思いも募らせた.経過とともに妻の経口摂取が可能となると,〈胃ろうからの解放と安堵〉を感じた.また,家族指導を重ねるたびに妻への介助に慣れ,〈介助に対する自信〉を抱いた.さらに,病院から一時帰宅した際に,〈妻の動きに合せた環境調整と生活の折り合い〉を経験し,〈サービス調整により退院後の生活を見据える〉ようになった.退院時には〈無事に退院できたうれしさ〉を感じ,〖障害を抱えた妻と人生100歳時代を共に生きるための模索を続けたい〗と夫婦生活の再開に至った.全期を通して家族や知人,介護経験者は夫の不安軽減や心の支えとなっていた.
【考察】夫は自身の健康状態に不安を感じながらも,介護技術の習得や情報提供の機会をもつことで在宅介護への実現に至っていた.さらに,現実と直面する夫の心理的変化を見逃さず,医療従事者は支援する必要があった.また,良好なソーシャルサポートは,夫への共感と孤独感の軽減に繋がっていた.
【対象者】対象は,脳卒中により当院回復期リハ病棟に入院した経験のある妻とともに現在,在宅生活をしている夫である.妻は中等度左不全麻痺,嚥下障害,注意障害を認めている.入院時は車いすを使用し日常生活活動全般に全介助,退院時は四点杖歩行にて日常生活活動に見守りや軽介助を要している.80歳代の夫婦世帯で,夫婦関係は良好である.
【方法】本研究は担当作業療法士がインタビューにてデータ収集を行い,複線経路等至性アプローチ(TEM)を用いて分析した.インタビューは1回40~60分の半構造化インタビューを妻の退院1か月後に3回実施し,聴取した内容の逐語録を作成した.夫が高齢介護者として経験した出来事や不安,思い等を意味のあるまとまりごとに切片化した.妻が回復期リハ病棟入院から在宅生活に至るまでの経過の中で夫の不安や思いに焦点を当て,時間軸に沿って並び替え,TEM図を作成した.本研究は所属先の倫理審査委員会の承認及び,対象者と妻には口頭と書面にて説明し同意を得ている.
【結果】Ⅰ期:回復期リハ病棟への転院時,夫は〈リハが受けられる喜びと期待〉と,経鼻経管やバルーンカテーテルが挿入され,動くことのできない身体で〈リハに耐えられるのか〉との不安を抱いていた.また,夫は眠れない日々や気分の落ち込み等をきたしていた.妻の改善は緩やかで,医療従事者から伝えられる出来事に〈日々気持ちが一喜一憂〉し,〈吉報を待ち望む〉状態であった.Ⅱ期:〈口頭や動画による説明と実際に歩く妻の姿に改善と頑張りへの称賛〉を抱き,経口摂取で嘔吐を繰り返す状況に〈思うように進まないジレンマ〉を感じていた.その後,夫は妻が将来的に介助を要しても〈再び夫婦で互いを支えあいたい〉と,自宅退院を決意した.また,夫は調理への挑戦やジム通い等を再開し,気分転換の大切さを経験した.その後も妻の経口摂取は進まず,妻同席のもと胃ろうの説明を受けた.夫は〈苛立ちと胃ろうへの拒否〉〈食べさせたら何とかなるのでは〉との考えを抱き,妻を説得して経口摂取を再開する決断をした.Ⅲ期:起居や歩行,排泄等の家族指導を受け〈介助の大変さと体力への不安〉〈介助への使命感〉と同時に,〈なぜこんな目に合うんだ〉と悲観的な思いも募らせた.経過とともに妻の経口摂取が可能となると,〈胃ろうからの解放と安堵〉を感じた.また,家族指導を重ねるたびに妻への介助に慣れ,〈介助に対する自信〉を抱いた.さらに,病院から一時帰宅した際に,〈妻の動きに合せた環境調整と生活の折り合い〉を経験し,〈サービス調整により退院後の生活を見据える〉ようになった.退院時には〈無事に退院できたうれしさ〉を感じ,〖障害を抱えた妻と人生100歳時代を共に生きるための模索を続けたい〗と夫婦生活の再開に至った.全期を通して家族や知人,介護経験者は夫の不安軽減や心の支えとなっていた.
【考察】夫は自身の健康状態に不安を感じながらも,介護技術の習得や情報提供の機会をもつことで在宅介護への実現に至っていた.さらに,現実と直面する夫の心理的変化を見逃さず,医療従事者は支援する必要があった.また,良好なソーシャルサポートは,夫への共感と孤独感の軽減に繋がっていた.