第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-3] ポスター:脳血管疾患等 3

2024年11月9日(土) 12:30 〜 13:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-3-8] 急性期脳卒中患者において利き手及び非利き手が麻痺側上肢活動時間に与える影響

北野 花穂子1, 植田 修二郎1,2, 保田 由美子1, 羽鳥 浩三1,2, 藤原 俊之2,3 (1.順天堂大学医学部附属浦安病院 リハビリテーション科, 2.順天堂大学大学院医学研究科リハビリテーション医学, 3.順天堂大学保健医療学部理学療法学科)

【はじめに】脳卒中上肢片麻痺の改善において麻痺手の使用は重要である.健常者では日常生活において利き手の使用の方が非利き手に比べて多い.脳卒中後慢性期においては利き手の麻痺と非利き手麻痺の上肢活動量に関して加速度計を用いて検討されているが,急性期における報告は見受けられない.本研究の目的は急性期脳卒中患者において利き手及び非利き手が麻痺側上肢活動量に与える影響を明らかにすることである.
【方法】2021年6月から2023年12月に初発の一側大脳半球脳卒中で当院に入院し,運動麻痺を認めた247例のうち,意思疎通困難,入院中に症状の増悪や合併症の併発,骨折等の上肢運動制限,透析シャントや末梢点滴により加速度計の装着が困難,同意が得られなった症例を除外し,発症後2週時に評価測定出来た54例を対象とした.研究プロトコルは発症後2週にActigraphの3軸加速度計(wGT3X−BT)を両手首に24時間装着し,臨床評価としてFugl- Meyer Assessment上肢スコア(FMA-UE),Action Research Arm Test(ARAT),Motor Activity Log(MAL)を測定した.統計解析方法は,まず各秒の3軸加速度をVector Magnitude(VM)=√(X²+Y²+Z²)に結合しVM≧2の時間を活動時間とみなした.そこから麻痺側上肢活動時間,非麻痺側上肢活動時間及び上肢活動時間の比(麻痺側上肢活動時間/非麻痺側上肢活動時間)を算出した.次に利き手麻痺群と非利き手麻痺群に分類し,カイ2乗検定を用いて患者特性を比較した後,臨床評価結果及び算出したデータをMann−Whitney U検定を用いて比較した.有意水準は5%とした.FMA-UEを元に上肢片麻痺を軽度(60−66),中等度(20−59),重度(0−19)に分けて同様の検定を実施した.また,サブグループ解析として上肢片麻痺が軽度の対象者において利き手麻痺群と非利き手麻痺群の日常生活での使用機会を確認するためにMALの下位項目数をMann−Whitney U検定を用いて比較した.なお本研究は当院倫理委員会で承認を得ており,対象者の同意を得て行っている(浦倫第3−026号).
【結果】対象は年齢平均66.0±13.6歳,男性32例女性22例,梗塞33例出血21例,左半球損傷23例右半球損傷31例,右利き52例であり,利き手麻痺群23例,非利き手麻痺群31例であった.臨床評価は中央値(四分位範囲)でFMA 56.5(41.2−61.7),ARAT 41(7.2−54.7),MALのAOU 1.0(0−4.4)QOM 1.22(0−4.0)であった.臨床評価及び上肢活動時間は群間全体では有意差を認めなかったが,上肢片麻痺が軽度の場合では上肢活動時間の比において利き手麻痺群が有意に高い結果となった(p=0.017).また,サブグループ解析によるMALの下位項目数においては中央値(四分位範囲)で利き手麻痺群13(12−13.5),非利き手麻痺群8.5(7−10.3)となり利き手麻痺群において有意に高い結果となった(p=0.001).
【考察】本研究では,上肢片麻痺が軽度の場合のみ利き手麻痺群で上肢活動時間の比が高い結果であった.これは,慢性期における報告とは一部異なる結果であった.また,利き手麻痺群と非利き手麻痺群ではMALの下位項目数に有意差を認めており,麻痺側上肢が利き手の場合に日常生活動作内で使用機会が多いことが考えられる.本研究の限界として,本研究の対象者は右利きが多数を占めており,利き手の影響と損傷半球の影響を分けて考えることは困難である.
【結論】急性期脳卒中患者において,上肢片麻痺が軽度の場合には麻痺側上肢が利き手の方が活動時間の比が高く,日常生活動作においても使用機会が多いと考えられる.