第58回日本作業療法学会

Presentation information

ポスター

脳血管疾患等

[PA-4] ポスター:脳血管疾患等 4

Sat. Nov 9, 2024 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (大ホール)

[PA-4-1] 下衣操作時における片側下肢への荷重率が重心動揺に与える影響

斎藤 幸介, 水端 大貴, 中山 和彦, 臼井 志織, 桑山 登志光 (さくら総合病院)

<序論>
我々が介入することの多い脳血管疾患患者は,バランス能力の障害により生活期での更衣場面で転倒する事例が多く報告されている.先行研究によると,片麻痺患者の下衣更衣における特徴として,所要時間が長くズボンの引き上げ数が多いこと,非麻痺側に高い荷重を示すこと,および身体前後軸での足圧中心の平均位置が左右非対称であることが示されている.しかし,下衣更衣における麻痺側下肢への荷重率が重心動揺に与える影響を調査した報告は見当たらない.
そこで本研究では,リハビリパンツの上げ下げ動作(以下,下衣操作)を行う際に生じる重心動揺の特徴及び,片側下肢へ加わる荷重率の違いが重心動揺に与える影響について明らかにすることを目的とする.
<方法>
さくら総合病院のリハビリテーションセンタースタッフ15名(27.9±3.8歳,男性9名,女性6名)を対象とした.対象者は,利き手と利き足にアームスリング及び下肢加重計(そくまる,DUPLODEC株式会社)を装着し,重心動揺計(グラビコーダーGP-31,アニマ株式会社)上で,ズボンの上からリハビリパンツの下衣操作を実施した.下衣操作における脱衣は膝蓋骨下までリハビリパンツを引き下げる動作とし,着衣は腸骨稜上まで引き上げる動作とした.下衣操作は荷重率を意識せず実施する条件(以下,快適条件),利き足側の荷重率30%にて実施する条件(以下,30%条件),利き足側の荷重率10%にて実施する条件(以下,10%条件)の3条件で実施した.荷重率は,下肢加重計と連動する下肢加重計アプリを使用して算出し,アプリ画面を開いたタブレットを床から40㎝の高さに設置して対象者はそれを確認しながら動作を実施した.
対象者には,書面および口頭にて同意を得た.また,本研究は日本作業療法士協会の倫理手続きを遵守している.
<結果>
各条件における利き足側の平均荷重率は快適条件で49.6±4.4%,30%条件で24.5±6.5%,10%条件で12.2±9.2%であった.条件間の比較において,所要時間は快適条件で24.4±5.4秒,30%条件で27.1±5.2秒,10%条件で26.3±6.6秒であり,有意差を認めなかった.重心の左右中心は快適条件で0.0±1.1㎝30%条件で-4.8±1.5㎝,10%条件で-7.1±1.4㎝であり各条件間で有意差を認めた.前後中心は快適条件で-3.2±1.6㎝30%条件で-2.7±1.5㎝,10%条件で-2.6±1.5㎝であり有意差を認めなかった.重心動揺面積は快適条件で10%条件よりも有意な増加を認めた.また,利き足側への荷重率が高いほど重心動揺面積が大きい傾向にあった.
<考察>
本研究では片側上肢にて下衣操作を行ったため,左右へのリーチ動作が生じた.これにより,利き足側への荷重制限がない快適条件では利き足側へリーチを行った際に重心が利き足側へ偏位し,重心動揺面積の増加に繋がったと考えられる.片麻痺を呈した患者が非麻痺側上肢による下衣操作を実施する場合,左右へのリーチに伴う重心動揺に耐えうる身体機能が必要となる可能性がある.