[PA-4-11] 視覚情報が得られない方への食事動作獲得の為の介入
高次脳機能障害も考慮した動作指導と環境調整
【はじめに】
今回,既往歴の左眼の緑内障および右光覚弁により視覚情報が得られず,脳梗塞後の高次脳機能障害によりADLに介助を要するA氏を担当した.本人の希望は「ご飯を自分で食べたい」であった.作業療法では探索能力の向上を図るとともに,環境調整および情報共有を行った結果,介助量の軽減や食事動作獲得に繋げることが出来た為報告する.本報告にあたり本人の同意を得ている.
【事例紹介】
80代女性,既往歴である緑内障により左眼は失明,右眼は白内障あり.病前の移動は伝い歩き,自宅では家事全般を行っていた.X年Y月に右内頸動脈閉塞及び右中大脳動脈領域梗塞発症.急性期病院を経てY+12日後に当院回復期病棟に入院.右眼の視覚機能低下あり.脳梗塞による視覚機能の低下は否定的であった為,眼科にて検査を行った結果,網膜中心動脈閉塞症による右光覚弁が発覚した.入院時の基本動作,ADL動作は全介助.本人の「ご飯を自分で食べたい」という希望を叶える為に,基本動作の介助量軽減,食事動作の獲得を目標に介入を開始した.
【作業療法評価と計画】
身体機能評価はFugl Meyer Assessmentでは上肢運動項目45/66点,感覚項目12/12点.運動項目は口頭でも動作指示入らず減点が見られたが,著明な運動麻痺はみられずBrunnstrome stageでは上肢Ⅴ,手指Ⅴレベルであった. 視覚機能は明暗の知覚のみ可能.標準高次視知覚検査で用いられている色と同様の色画用紙を提示するが,回答困難.物体や画像認知,シンボル認知も困難であった.長谷川式認知機能検査は物品呼称を除外し25点,標準言語性対連合学習検査は有関係10/10/10,無関係3/4/7,前頭葉機能検査は保続症状がみられ7点.左上肢に触覚性の消去現象を認め,ADL場面でも左側への探索を行わない場面があり,左半側空間無視の症状が疑われた.FIMの運動項目は13点,保続症状により自己修正,指示入力が困難な場面も多くみられた.
【経過と結果】
介入初期は基本動作に焦点を当てた.当初は統一した声掛けが行えていなかったため,動作方法について混乱する場面がみられた.その為,動作の各工程に番号を振り,自己教示法による動作手順の定着を図った.また車椅子のアームサポート及びベッドの介助バーにテープで凹凸を付け,対象物の探索手がかりを提示することで探索動作が可能となった.右手による探索動作が可能となり,食事動作の獲得を目指した介入を開始.食事動作や机上課題は,右側の探索ばかりを行ってしまい,机や対象物の中心を捉える事が困難な場面がみられた.そこで机の中心にテープを貼り,動作を行う毎に一度テープを触り,中心の位置を修正した上で動作再開する方法を反復し定着を図った.繰り返し行う事で修正位置に戻ることが可能.その後,机の縁を辿り,机の境界を把握する練習や対象物への道筋にテープを貼り辿る事で対象物に到達する練習を行った.上記手法獲得した為,実際の食事動作でもお盆や食器の配置を設定し,お盆の縁を辿り食器に触れて食事を行う練習を行った.その結果,環境調整を行えば自己にて食事摂取が可能となった.最終評価ではFIM運動項目56点に向上.食事動作同様,探索動作を応用し見守りで可能な動作が増加した.
【考察】
今回,視覚情報を得ることができない患者に対し,運動麻痺や感覚障害がなく,言語性の記憶機能が保たれていた為,残存能力を活用できるように環境調整を行うことで,食事動作をはじめとしたADL動作の獲得が可能となった.介入初期から問題点と残存能力を評価し,段階付けた動作方法の獲得を図ったことがADL動作の獲得に繋がったと考えられる.
今回,既往歴の左眼の緑内障および右光覚弁により視覚情報が得られず,脳梗塞後の高次脳機能障害によりADLに介助を要するA氏を担当した.本人の希望は「ご飯を自分で食べたい」であった.作業療法では探索能力の向上を図るとともに,環境調整および情報共有を行った結果,介助量の軽減や食事動作獲得に繋げることが出来た為報告する.本報告にあたり本人の同意を得ている.
【事例紹介】
80代女性,既往歴である緑内障により左眼は失明,右眼は白内障あり.病前の移動は伝い歩き,自宅では家事全般を行っていた.X年Y月に右内頸動脈閉塞及び右中大脳動脈領域梗塞発症.急性期病院を経てY+12日後に当院回復期病棟に入院.右眼の視覚機能低下あり.脳梗塞による視覚機能の低下は否定的であった為,眼科にて検査を行った結果,網膜中心動脈閉塞症による右光覚弁が発覚した.入院時の基本動作,ADL動作は全介助.本人の「ご飯を自分で食べたい」という希望を叶える為に,基本動作の介助量軽減,食事動作の獲得を目標に介入を開始した.
【作業療法評価と計画】
身体機能評価はFugl Meyer Assessmentでは上肢運動項目45/66点,感覚項目12/12点.運動項目は口頭でも動作指示入らず減点が見られたが,著明な運動麻痺はみられずBrunnstrome stageでは上肢Ⅴ,手指Ⅴレベルであった. 視覚機能は明暗の知覚のみ可能.標準高次視知覚検査で用いられている色と同様の色画用紙を提示するが,回答困難.物体や画像認知,シンボル認知も困難であった.長谷川式認知機能検査は物品呼称を除外し25点,標準言語性対連合学習検査は有関係10/10/10,無関係3/4/7,前頭葉機能検査は保続症状がみられ7点.左上肢に触覚性の消去現象を認め,ADL場面でも左側への探索を行わない場面があり,左半側空間無視の症状が疑われた.FIMの運動項目は13点,保続症状により自己修正,指示入力が困難な場面も多くみられた.
【経過と結果】
介入初期は基本動作に焦点を当てた.当初は統一した声掛けが行えていなかったため,動作方法について混乱する場面がみられた.その為,動作の各工程に番号を振り,自己教示法による動作手順の定着を図った.また車椅子のアームサポート及びベッドの介助バーにテープで凹凸を付け,対象物の探索手がかりを提示することで探索動作が可能となった.右手による探索動作が可能となり,食事動作の獲得を目指した介入を開始.食事動作や机上課題は,右側の探索ばかりを行ってしまい,机や対象物の中心を捉える事が困難な場面がみられた.そこで机の中心にテープを貼り,動作を行う毎に一度テープを触り,中心の位置を修正した上で動作再開する方法を反復し定着を図った.繰り返し行う事で修正位置に戻ることが可能.その後,机の縁を辿り,机の境界を把握する練習や対象物への道筋にテープを貼り辿る事で対象物に到達する練習を行った.上記手法獲得した為,実際の食事動作でもお盆や食器の配置を設定し,お盆の縁を辿り食器に触れて食事を行う練習を行った.その結果,環境調整を行えば自己にて食事摂取が可能となった.最終評価ではFIM運動項目56点に向上.食事動作同様,探索動作を応用し見守りで可能な動作が増加した.
【考察】
今回,視覚情報を得ることができない患者に対し,運動麻痺や感覚障害がなく,言語性の記憶機能が保たれていた為,残存能力を活用できるように環境調整を行うことで,食事動作をはじめとしたADL動作の獲得が可能となった.介入初期から問題点と残存能力を評価し,段階付けた動作方法の獲得を図ったことがADL動作の獲得に繋がったと考えられる.