[PA-4-12] ドライビングシミュレーターで事故のあった脳血管疾患者の運転行動場面の特徴と運転可否の関連
【はじめに】脳血管疾患者の自動車運転再開は当事者の生活範囲に大きな影響を与える.当院の運転評価に対する作業療法士の役割は,当事者の心身機能とドライビングシミュレーター(以下,DS)などの情報に基づく評価所見を医師に提供し,医師の運転可否の判断に貢献することである.我々はDS上の事故の有無が運転可否の判断の重要な要因であると示した.一方,DSで事故があった者でも運転可と判断された者が一定数いたが,何が運転可と判断する材料になるかは明らかではない.そこで本研究では,作業療法士の運転評価に必要な視点を明らかにするために,経過記録に記載された膨大なテキストデータをテキストマイニング解析で明らかにし,作業療法士の評価視点が医師の運転可否の判断に反映されているかを検討することとした.
【方法】対象:金沢脳神経外科病院で2019年2月から2024年1月にDSによる運転評価を実施した脳血管疾患者75名とした.対象は退院後に運転再開の希望者であった.経験年数3年以下の作業療法士が担当した者,DSで事故がなかった者は解析から除外した.研究デザイン:後方視的横断研究.評価項目:医師の運転可否の判断結果,運動機能(Brunnstrom stage),神経心理学的検査としてMini Mental State Examination(MMSE),日本版Trail Making Test partA B(TMT-J partA B),かな拾いテスト,脳卒中ドライバーのスクリーニング検査(SDSA)のドット抹消,方向スクエアマトリクス,コンパススクエアマトリクスと道路標識の結果を収集した.DSはHondaセーフティナビ(本田技研工業)を使用し,定量的データとして反応検査と,総合学習体験と呼ばれる走行検査の結果を収集した.テキストデータは作業療法士のDS実施時の経過記録を用いた.分析方法:医師の運転可否の判定結果から運転群と運転不可群とし,神経心理学的検査とDS検査の結果を群間比較した.テキストマイニングは共起ネットワーク分析にて各群の特徴語を抽出した.抽出した特徴語の有無と医師の運転可否判断の適合をx2検定を用いて調べた.有意水準は5%とした.統計解析にはR4.1.3とStatFlex(医学統計研究所)を用いた.テキストマイニングはMATLAB(MathWorks)を用いた.本研究は当院倫理委員会の承認(承認番号R04-09)を得て実施し,対象者にはオプトアウトの方法で同意を得た.
【結果】運転群25名,不可群は50名となった.神経心理学的検査(MMSE,TMT-J partA・B,かな拾いテスト,SDSAのコンパススクエアマトリクス)において運転群で不可群より有意に成績が良かった.DSの反応検査(単純反応の反応速度,ハンドル操作課題の反応速度,注意配分複雑部分検査の反応速度)およびDSの走行検査(事故回数,進路間違い,不停止,急ブレーキ,ウィンカーなし,信号標識の見落とし,走行車線不適,速度超過平均速度)において運転群で不可群より有意に成績が良かった.テキストマイニングの特徴語として,運転群では「操作-慣れる」「説明-理解」「開始-直後」が抽出され,不可群では「歩行者-事故」「標識-見落とす」「注意-配分」が抽出された.「歩行者-事故」以外はx2検定にて有意差を認めた.抽出の特徴後と医師の判断との整合性は,運転群で「操作-慣れる」40%,「説明-理解」36%,「開始-直後」28%であり,運転不可群で「標識-見落とし」28%,「注意-配分」36%であった.
【考察】作業療法士の経過記録のテキストデータの共起ネットワーク分析は,作業療法士が脳血管疾患者のDS運転で評価すべきポイントを明示するために有用と示唆された.しかし,抽出語が必ずしも医師の判断結果を説明するものではなく,複合的な要因を明らかにする必要がある.
【方法】対象:金沢脳神経外科病院で2019年2月から2024年1月にDSによる運転評価を実施した脳血管疾患者75名とした.対象は退院後に運転再開の希望者であった.経験年数3年以下の作業療法士が担当した者,DSで事故がなかった者は解析から除外した.研究デザイン:後方視的横断研究.評価項目:医師の運転可否の判断結果,運動機能(Brunnstrom stage),神経心理学的検査としてMini Mental State Examination(MMSE),日本版Trail Making Test partA B(TMT-J partA B),かな拾いテスト,脳卒中ドライバーのスクリーニング検査(SDSA)のドット抹消,方向スクエアマトリクス,コンパススクエアマトリクスと道路標識の結果を収集した.DSはHondaセーフティナビ(本田技研工業)を使用し,定量的データとして反応検査と,総合学習体験と呼ばれる走行検査の結果を収集した.テキストデータは作業療法士のDS実施時の経過記録を用いた.分析方法:医師の運転可否の判定結果から運転群と運転不可群とし,神経心理学的検査とDS検査の結果を群間比較した.テキストマイニングは共起ネットワーク分析にて各群の特徴語を抽出した.抽出した特徴語の有無と医師の運転可否判断の適合をx2検定を用いて調べた.有意水準は5%とした.統計解析にはR4.1.3とStatFlex(医学統計研究所)を用いた.テキストマイニングはMATLAB(MathWorks)を用いた.本研究は当院倫理委員会の承認(承認番号R04-09)を得て実施し,対象者にはオプトアウトの方法で同意を得た.
【結果】運転群25名,不可群は50名となった.神経心理学的検査(MMSE,TMT-J partA・B,かな拾いテスト,SDSAのコンパススクエアマトリクス)において運転群で不可群より有意に成績が良かった.DSの反応検査(単純反応の反応速度,ハンドル操作課題の反応速度,注意配分複雑部分検査の反応速度)およびDSの走行検査(事故回数,進路間違い,不停止,急ブレーキ,ウィンカーなし,信号標識の見落とし,走行車線不適,速度超過平均速度)において運転群で不可群より有意に成績が良かった.テキストマイニングの特徴語として,運転群では「操作-慣れる」「説明-理解」「開始-直後」が抽出され,不可群では「歩行者-事故」「標識-見落とす」「注意-配分」が抽出された.「歩行者-事故」以外はx2検定にて有意差を認めた.抽出の特徴後と医師の判断との整合性は,運転群で「操作-慣れる」40%,「説明-理解」36%,「開始-直後」28%であり,運転不可群で「標識-見落とし」28%,「注意-配分」36%であった.
【考察】作業療法士の経過記録のテキストデータの共起ネットワーク分析は,作業療法士が脳血管疾患者のDS運転で評価すべきポイントを明示するために有用と示唆された.しかし,抽出語が必ずしも医師の判断結果を説明するものではなく,複合的な要因を明らかにする必要がある.