[PA-4-15] 右脳損傷患者の神経心理学的検査と2回の実車評価における運転行動エラーの検討
【はじめに】脳梗塞を発症し自動車運転再開希望のあった,70歳代の女性に対し,神経心理学的検査と2回の実車評価を実施したが,自動車運転の再開には至らなかった.神経心理学的検査や実車評価を踏まえ,自動車運転再開に至らなかった要因を運転行動エラーから分析したので以下に報告する.尚発表に際し本人より書面にて同意を得ている.
【方法】当院では,運転再開希望があった脳血管疾患患者に対し,医師の指示の下,神経心理学的検査を実施し,結果により適宜実車評価,CRT運転適性検査機(竹井機器工業株式会社製, 以下CRT)を実施している.実車評価では,自動車教習所で構内走行を行い教官が評価している.医学的情報,神経心理学的検査,実車評価,CRTの結果を後方視的に抽出し分析を実施した.
【対象】右前頭葉に梗塞を認めた,70歳代の女性.
【結果】神経心理学的検査を39病日目から193病日目の間に3回実施した.3回目の結果はHDS-R27/30点,BIT通常検査136/146点,TMTーJPartA60秒PartB122秒,KBDT得点21点IQ63.0,FAB13点,J-SDSAドット抹消494秒誤り数26個おてつき数0個方向12点コンパス17点標識4点となり,合格予測式が不合格予測式を下回った.
CRTでは,注意配分・複数作業での注意の集中分散,認知判断の速さ,注意バランスで同年代と比べ低下がみられた.
実車評価は229病日目に1回目,343病日目に2回目を実施した.2回目の総合判定でも再教育が必要と判断された.1回目は,右側通行,一時不停止,接触が1回,車線変更の不確認,右左折合図なしが2回, 巻き込み不確認,車庫入れ時の切り返し,左折時大回りが3回であった.2回目は右側通行, 巻き込み不確認が2回,車線変更の不確認, 車線踏み, 左折時の大回りが3回,右折準備時の寄せ,左折時の寄せ不足1回となり,1回目より悪化がみられた.運転行動エラーとして,①右側通行では,ブレーキ遅れや速度のコントロール低下によりカーブ時に大回りが見られた.②車線変更時や巻き込み時に不確認が見られた.③走行時に車線踏みが見られた.
【考察】本症例における実車評価での運転行動エラーとして右側通行,車線変更や巻き込みの不確認,車線踏みが見られた.①右側通行では,右脳損傷者はセンターラインのはみ出し,トータルエラースコアが高い(MYOUNGら.2015)ことや,転換性注意低下があると交通状況の変化に対応できず速度調整を行いにくくなる.また,処理速度低下があると交通状況に対してブレーキが遅れる(岩城.2023)と報告があり,先行文献と同様であった.②車線変更や巻き込みの不確認では,TMTの成績低下を示す者は,交差点場面で確認や操作などが不十分となる(山田ら.2018)と報告があり先行文献と同様であった.③車線踏みでは,構成能力低下で走行位置が安定しない(岩城.2023)と報告があり,先行文献と同様であった.
【結論】右脳損傷患者の運転行動エラーとして,右側通行,不確認,車線踏みを認めた.先行研究と同様に注意機能,遂行機能,構成機能の低下との関連が示唆された.
【方法】当院では,運転再開希望があった脳血管疾患患者に対し,医師の指示の下,神経心理学的検査を実施し,結果により適宜実車評価,CRT運転適性検査機(竹井機器工業株式会社製, 以下CRT)を実施している.実車評価では,自動車教習所で構内走行を行い教官が評価している.医学的情報,神経心理学的検査,実車評価,CRTの結果を後方視的に抽出し分析を実施した.
【対象】右前頭葉に梗塞を認めた,70歳代の女性.
【結果】神経心理学的検査を39病日目から193病日目の間に3回実施した.3回目の結果はHDS-R27/30点,BIT通常検査136/146点,TMTーJPartA60秒PartB122秒,KBDT得点21点IQ63.0,FAB13点,J-SDSAドット抹消494秒誤り数26個おてつき数0個方向12点コンパス17点標識4点となり,合格予測式が不合格予測式を下回った.
CRTでは,注意配分・複数作業での注意の集中分散,認知判断の速さ,注意バランスで同年代と比べ低下がみられた.
実車評価は229病日目に1回目,343病日目に2回目を実施した.2回目の総合判定でも再教育が必要と判断された.1回目は,右側通行,一時不停止,接触が1回,車線変更の不確認,右左折合図なしが2回, 巻き込み不確認,車庫入れ時の切り返し,左折時大回りが3回であった.2回目は右側通行, 巻き込み不確認が2回,車線変更の不確認, 車線踏み, 左折時の大回りが3回,右折準備時の寄せ,左折時の寄せ不足1回となり,1回目より悪化がみられた.運転行動エラーとして,①右側通行では,ブレーキ遅れや速度のコントロール低下によりカーブ時に大回りが見られた.②車線変更時や巻き込み時に不確認が見られた.③走行時に車線踏みが見られた.
【考察】本症例における実車評価での運転行動エラーとして右側通行,車線変更や巻き込みの不確認,車線踏みが見られた.①右側通行では,右脳損傷者はセンターラインのはみ出し,トータルエラースコアが高い(MYOUNGら.2015)ことや,転換性注意低下があると交通状況の変化に対応できず速度調整を行いにくくなる.また,処理速度低下があると交通状況に対してブレーキが遅れる(岩城.2023)と報告があり,先行文献と同様であった.②車線変更や巻き込みの不確認では,TMTの成績低下を示す者は,交差点場面で確認や操作などが不十分となる(山田ら.2018)と報告があり先行文献と同様であった.③車線踏みでは,構成能力低下で走行位置が安定しない(岩城.2023)と報告があり,先行文献と同様であった.
【結論】右脳損傷患者の運転行動エラーとして,右側通行,不確認,車線踏みを認めた.先行研究と同様に注意機能,遂行機能,構成機能の低下との関連が示唆された.