[PA-4-17] 復職後の自動車通勤再開についての支援を行った経験
【はじめに】脳血管疾患においては,発症後の治療と仕事の両立支援を留意すべきであり(厚生労働省2023),対象者の自由な移動のために適切な交通手段を選択し,その利用を可能にする支援が重要(藤田佳男2018)であることは周知の通りである.今回,脳出血による開頭血腫除去術後に短時間常勤として復職された事例に対して,自動車通勤再開のための支援を行った.本報告では,復職中の事例に対して外来OTにて自動車運転による通勤再開と就労支援を行い自動車通勤再開に至った要因を考察することを目的とする.本事例に書面で同意を得た.
【事例紹介】50代女性,右利き,独居.病前は療養病院の看護師として,自宅から30分を自動車通勤していた.左皮質下出血による開頭血腫除去術後80日で自宅退院し,外来ST期間中に短時間勤務(週3回日中5時間)で復職されていた.当院には,術後150日で自動車通勤再開を希望し,外来OTを実施することとなった.
【評価】著明な感覚運動障害を認めず,ADLも自立していた.軽度の喚語困難あり,想起の難しい単語の一部や近しい語を書字にて代償し意思伝達の際の補助手段として利用が可能であった.注意面は発話時に誤りに対して固執し切り替えが難しい場面や聞き漏らしを認めた.同僚看護師が家族の意向を確認し可能な限りの同席を希望された.職場への通勤は同僚による送迎を利用していた.
Behavioural Inattention Test(BIT)通常検査は112/146,Raven's Coloured Progressive Matrices(RCPM)34/36(6分42秒),Trail Making Test(TMT)A101秒(エラー1),B74秒と注意機能の低下が低下していた.また,自身の職業歴より病状や復職状況,自動車通勤に関しての認識不足を認めた.
【目標】自動車通勤の再開,現状の復職内容の支援と疲労や健康に関する認識の向上を目的とした.外来OTは本人と同行の同僚看護師とで相談し,月1回(4単位/回)の利用とした.
【介入】自動車運転再開のためのドライビングシミュレーター(HONDAⓇセーフティナビ,DS)による評価と運転適性の確認とアドバイス,仕事内容の経過と困りごとの評価,疲労や健康に関しての聞き取り行った.
【結果】外来OT介入6か月(発症より330日),6回のOTを実施した.言語的な指示を伴った場合や,焦った際には上肢の操作性や立位での動作が拙劣となる場面は軽減を認め,喚語不良や錯誤が出現することもあるため受け手の推測を必要とする場面もわずかに継続していたが,療養病院での病棟勤務では支障は少なく勤務可能となり夜勤も再開予定となっていた.BIT143/146,RCPM36/36(4分42秒),TMT-A43秒,B58秒,コース立方体組み合わせテスト(Kohs-T)IQ107,DS結果は「運転能力測定,危険予測体験,運転適性」の3項目で年齢平均を上回り,Stroke Drivers’ Screening Assessment Japanese Version(J-SDSA)は運転適性あり(合格予測式13,515,不合格予測式12,448)となった.
自家用車による通勤再開に関しては,当院リハ医と主治医(前院外来)と相談し意見書を作成し,免許センターの評価後自動車運転再開となった.また,自動車通勤再開後5年以上が経過した現在においても事故もなく継続した就労が可能となっている.
【考察】本事例が自動車通勤の再開と継続した復職が出来た要因として,発症後の経過と予後予測を考えて介入頻度を検討したこと,DSや仕事面を想定した振り返りや対処方法を,共に考える機会を設けたことが上げられる.本事例のように,今までと異なる認識と積極的な振り返りが,自己の自動車運転への注意や認識の向上につながったと考える.
【事例紹介】50代女性,右利き,独居.病前は療養病院の看護師として,自宅から30分を自動車通勤していた.左皮質下出血による開頭血腫除去術後80日で自宅退院し,外来ST期間中に短時間勤務(週3回日中5時間)で復職されていた.当院には,術後150日で自動車通勤再開を希望し,外来OTを実施することとなった.
【評価】著明な感覚運動障害を認めず,ADLも自立していた.軽度の喚語困難あり,想起の難しい単語の一部や近しい語を書字にて代償し意思伝達の際の補助手段として利用が可能であった.注意面は発話時に誤りに対して固執し切り替えが難しい場面や聞き漏らしを認めた.同僚看護師が家族の意向を確認し可能な限りの同席を希望された.職場への通勤は同僚による送迎を利用していた.
Behavioural Inattention Test(BIT)通常検査は112/146,Raven's Coloured Progressive Matrices(RCPM)34/36(6分42秒),Trail Making Test(TMT)A101秒(エラー1),B74秒と注意機能の低下が低下していた.また,自身の職業歴より病状や復職状況,自動車通勤に関しての認識不足を認めた.
【目標】自動車通勤の再開,現状の復職内容の支援と疲労や健康に関する認識の向上を目的とした.外来OTは本人と同行の同僚看護師とで相談し,月1回(4単位/回)の利用とした.
【介入】自動車運転再開のためのドライビングシミュレーター(HONDAⓇセーフティナビ,DS)による評価と運転適性の確認とアドバイス,仕事内容の経過と困りごとの評価,疲労や健康に関しての聞き取り行った.
【結果】外来OT介入6か月(発症より330日),6回のOTを実施した.言語的な指示を伴った場合や,焦った際には上肢の操作性や立位での動作が拙劣となる場面は軽減を認め,喚語不良や錯誤が出現することもあるため受け手の推測を必要とする場面もわずかに継続していたが,療養病院での病棟勤務では支障は少なく勤務可能となり夜勤も再開予定となっていた.BIT143/146,RCPM36/36(4分42秒),TMT-A43秒,B58秒,コース立方体組み合わせテスト(Kohs-T)IQ107,DS結果は「運転能力測定,危険予測体験,運転適性」の3項目で年齢平均を上回り,Stroke Drivers’ Screening Assessment Japanese Version(J-SDSA)は運転適性あり(合格予測式13,515,不合格予測式12,448)となった.
自家用車による通勤再開に関しては,当院リハ医と主治医(前院外来)と相談し意見書を作成し,免許センターの評価後自動車運転再開となった.また,自動車通勤再開後5年以上が経過した現在においても事故もなく継続した就労が可能となっている.
【考察】本事例が自動車通勤の再開と継続した復職が出来た要因として,発症後の経過と予後予測を考えて介入頻度を検討したこと,DSや仕事面を想定した振り返りや対処方法を,共に考える機会を設けたことが上げられる.本事例のように,今までと異なる認識と積極的な振り返りが,自己の自動車運転への注意や認識の向上につながったと考える.