第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-4] ポスター:脳血管疾患等 4

2024年11月9日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-4-19] 当院における脳損傷者への自動車運転再開支援の取り組みの現状と課題

末次 亮平 (社会医療法人シマダ嶋田病院)

【はじめに】
嶋田病院(以下,当院)のある福岡県小郡市は2020年の国勢調査で人口は59,360人,高齢化率は28.4%の地方中小都市である.公共交通機関は南北・東西に鉄道が走っているものの沿線以外の公共交通手段は乏しく,市内でも利便性には地域差がみられ自動車運転は無くてはならない地域環境である.当院では脳損傷者の自動車運転支援を目的に2014年より医師と作業療法士(以下,OT)を中心に神経心理学的検査の実施やドライビングシミュレーターによる評価・訓練の導入,近隣の自動車学校と連携した実車評価や訓練を開始した.近年では自動車運転中止者に対して代替手段の提案を行うなど「地域での移動」という観点から支援を実施している.
【目的】
本報告の目的は当院の自動車運転支援の取り組みについて報告し,今後の課題について検討することである.
【倫理的配慮】
本報告に際しては当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【支援の実際】
支援に際しては脳損傷後に対象者より運転再開の希望があり,屋外歩行が自立している者(歩行補助具や装具の使用は問わない)を対象としている.支援の内容は,まず神経心理学的検査(MMSE,TMT-J,S-PA,Reyの錯綜図模写,FABを基本とし,必要に応じてWAIS-Ⅲ,CAT,BITなどを実施)を行い,その後ドライビングシミュレーター(Hondaセーフティナビ)での評価・訓練を実施している.また対象者に応じて近隣の自動車学校と連携し実車評価・訓練を実施し,自動車改造が必要な場合には福祉車両業者と連携し,教習所内での改造車での訓練を実施している.最近では自動車運転中止者への支援として近隣の市町村に地域の移動サービス等の地域資源について聞き取りを行い必要な対象者へ情報提供を行っている.
【課題と展望】
2014年より脳損傷者の自動車運転支援を開始し,現在(2023年3月)までに入院/外来合わせて327人(平均36.3名/年)に対して自動車運転支援を実施した.2019年3月から2021年5月までの期間に自動車運転支援を行った対象者にアンケート調査を行った結果59名中19名は運転を中止していた.Shimadaらは運転中止に伴う要介護発生リスクを指摘しているが,当地域では自動車の代替手段が乏しい状況であり,今後は地域ケア会議など通して地域課題の抽出や地域資源の提案を行政に対して行っていくなど自動車運転中止者への取り組みを進めていく.