[PA-4-9] 急性期四肢切断者における食事動作の獲得よりADLの拡大に繋がった事例
【 はじめに 】
国内での四肢切断は稀な出来事である.本邦では上肢切断者の義手に関する報告はあるが,急性期の四肢切断者に関するOT実践について詳細な報告がされた文献は少ない.今回,四肢切断を呈した症例に対して,離床がままならない急性期よりベッドサイドの環境設定を行うことでできるADLの拡大に繋がったため報告する.なお,個人情報は倫理的配慮を行い患者本人より許可を得た.
【 事例紹介 】
A氏60代右利き男性.病前ADLは自立,システムエンジニアとして働き,妻と母親の3人暮らし.日課はKindleやiPadで読書や音楽鑑賞をすることであった.X年Y月Z日に劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症の診断にて入院.Z+18日左右下肢の感染が増悪し左右大腿切断が施行, 作業療法は全身状態の安定したZ+32日より開始した.その後,Z+34日に左前腕切断(前腕1/3),Z+47日に右前腕切断(前腕1/2)を施行した.OT開始時,JCSⅠ-1,コミュニケーションは理解,表出ともに日常会話が可能.両大腿と両前腕切断部には浮腫,腫脹,幻肢痛を認めた.長期臥床により両肩,肘の関節可動域制限やMMT1と筋出力の低下が顕著であった.機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:以下FIM)は33/126点(運動13,認知30),食事は全介助で.A氏は「自分で食事は食べられるようになりたい」と話し,右前腕部に自助具スプーンを使用し食事が行えることを目標とした.
【 経過 】
上肢の関節可動域制限や筋力低下の改善を目指し,iPadを使用したキーボードの打ち込み練習上を開始した.A氏にとって入院後初めて右手で物品操作する機会となった.さらに右前腕部にOTが作成したスプーンを装着し,食事の模擬動作練習を実施した.Z+83日アイスを2口ほど自己摂取し「自分で食べられたよ!」と笑顔で話した.昼食時に食事場面を確認しA氏やNsと一緒にテーブルの高さや食器の位置,自助具の使用方法を共有した.並行して両前腕の状態も改善してきたため断端形成も開始した.その後,食事の自己摂取が7割可能になり,TVリモコンの操作やコップの使用練習も進めた.
【 結果 】
意識清明,コミュニケーションは理解,表出ともに日常会話が可能.両大腿と両前腕切断部には浮腫,腫脹,幻肢痛は軽減.両肩,肘の関節可動域制限は改善され,肩,肘の筋出力も改善されMMT4へ向上.FIMは68/126点(運動33,認知35)で,食事は自助具の着脱や食器の移動,麺類の摂取などには介助を要したが1点から3点に改善した.また,飲水回数が多かったA氏にとって飲水も重要な動作のひとつで蓋付きコップにストローを固定し両手で持つことで自立となった.
【 考察 】
A氏は右前腕が左よりも長く自助具を作成することで食事の自己摂取が行える可能性が考えられた.先行研究より,切断者は患者の動作パターンの変化や新たな動作の学習が求められる.急性期より作業療法士は食事やiPad操作用の自助具を作成し,使用することで患者は新たな動作を身につけ,食事の自己摂取が可能になりADLの拡大に繋がった.個別のアプローチや自助具の改良,患者の能力を引き出すことに焦点を当てた介入が生活向上に寄与していたと考える.
国内での四肢切断は稀な出来事である.本邦では上肢切断者の義手に関する報告はあるが,急性期の四肢切断者に関するOT実践について詳細な報告がされた文献は少ない.今回,四肢切断を呈した症例に対して,離床がままならない急性期よりベッドサイドの環境設定を行うことでできるADLの拡大に繋がったため報告する.なお,個人情報は倫理的配慮を行い患者本人より許可を得た.
【 事例紹介 】
A氏60代右利き男性.病前ADLは自立,システムエンジニアとして働き,妻と母親の3人暮らし.日課はKindleやiPadで読書や音楽鑑賞をすることであった.X年Y月Z日に劇症型A群溶血性連鎖球菌感染症の診断にて入院.Z+18日左右下肢の感染が増悪し左右大腿切断が施行, 作業療法は全身状態の安定したZ+32日より開始した.その後,Z+34日に左前腕切断(前腕1/3),Z+47日に右前腕切断(前腕1/2)を施行した.OT開始時,JCSⅠ-1,コミュニケーションは理解,表出ともに日常会話が可能.両大腿と両前腕切断部には浮腫,腫脹,幻肢痛を認めた.長期臥床により両肩,肘の関節可動域制限やMMT1と筋出力の低下が顕著であった.機能的自立度評価表(Functional Independence Measure:以下FIM)は33/126点(運動13,認知30),食事は全介助で.A氏は「自分で食事は食べられるようになりたい」と話し,右前腕部に自助具スプーンを使用し食事が行えることを目標とした.
【 経過 】
上肢の関節可動域制限や筋力低下の改善を目指し,iPadを使用したキーボードの打ち込み練習上を開始した.A氏にとって入院後初めて右手で物品操作する機会となった.さらに右前腕部にOTが作成したスプーンを装着し,食事の模擬動作練習を実施した.Z+83日アイスを2口ほど自己摂取し「自分で食べられたよ!」と笑顔で話した.昼食時に食事場面を確認しA氏やNsと一緒にテーブルの高さや食器の位置,自助具の使用方法を共有した.並行して両前腕の状態も改善してきたため断端形成も開始した.その後,食事の自己摂取が7割可能になり,TVリモコンの操作やコップの使用練習も進めた.
【 結果 】
意識清明,コミュニケーションは理解,表出ともに日常会話が可能.両大腿と両前腕切断部には浮腫,腫脹,幻肢痛は軽減.両肩,肘の関節可動域制限は改善され,肩,肘の筋出力も改善されMMT4へ向上.FIMは68/126点(運動33,認知35)で,食事は自助具の着脱や食器の移動,麺類の摂取などには介助を要したが1点から3点に改善した.また,飲水回数が多かったA氏にとって飲水も重要な動作のひとつで蓋付きコップにストローを固定し両手で持つことで自立となった.
【 考察 】
A氏は右前腕が左よりも長く自助具を作成することで食事の自己摂取が行える可能性が考えられた.先行研究より,切断者は患者の動作パターンの変化や新たな動作の学習が求められる.急性期より作業療法士は食事やiPad操作用の自助具を作成し,使用することで患者は新たな動作を身につけ,食事の自己摂取が可能になりADLの拡大に繋がった.個別のアプローチや自助具の改良,患者の能力を引き出すことに焦点を当てた介入が生活向上に寄与していたと考える.