[PA-5-11] 修正CI療法による段階的アプローチによって一部の家事が獲得できた症例
使えない手から使える手への行動変容
【はじめに】今回,重度麻痺を呈し消極的思考に陥りやすくなった症例を担当した.麻痺手への介入方法の1つにCI療法があり多くのエビデンスが示されている.CI療法は症例によっては適応が困難なことも多いが電気療法や装具療法等を併用することで適応可能とされることもある.そのためself-regulatory理論を基に修正CI療法による介入を行った.結果,麻痺手の機能と自己効力感の向上を認め,自宅復帰に至った為ここに報告する.
【介入モデル】・修正CI療法 ・self-regulatory理論
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき本報告に対して説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例紹介】50歳代女性.右利き.左視床出血.息子と同居し病前家事は全て本人.Brunnstrom Stage(以下Br.s):上肢Ⅱ手指Ⅱ,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下FMA-UE)4点,母指探し試験:Ⅱ度,感覚検査,上肢感覚検査:触圧覚・痛覚重度鈍麻,運動項目FIM30点(食事以外重~中等度介助).主訴「息子に迷惑をかけたくない.何もできない」
【経過】
1,「動かない手」から「少しだけ動く手」に認識を変える段階(入院~2か月)
随意的な運動が困難であった為,まずは肩甲骨~手指にかけての随意性獲得を目的に関わりを行った.介入は,各関節への反復促通療法に電気療法を加えより筋収縮の知覚を意識した.また麻痺手の使用頻度向上を目的に,ミラーセラピーと両手での机拭きを各100回以上を自主訓練として設定した.評価(変化のみ):Br.s:Ⅲ‐Ⅲ,FMA-UE:16点,FIM:55点,発言「すごい!動いたー!」
2,「できる」を増やし能動性向上を図る段階(2~3か月)
随意的な運動が可能になった為,軟性の対立装具とテーピング,電気療法を併用し課題指向型訓練(shaping)を開始した.このころから「食器に手を添える」「ハンドクリームの開閉時容器を把持する」「雑巾を絞る」など生活上での麻痺手の使用も可能となってきた.尚「雑巾を絞る」は本人自ら提案された.評価(変化):Br.s:Ⅲ‐Ⅳ,FMA-UE:27点,FIM:66点,発言「雑巾を絞るって自分でできないかな?」
3,設定場面以外でも自主的に麻痺手を使用できる段階(3~5か月)
肩甲骨周囲の固定性が向上したため,課題指向型訓練に(transfer package)を加え生活上での使用イメージの賦活を図っていった.病棟では,「薬の袋を開ける」「お菓子を食べる」「衣服を畳む」「ドアを開ける」「ファスナーを操作する」「ボディークリームを左肩に塗る」で麻痺手を使用することが日常的に可能となった.評価(変化):Br.s:Ⅳ‐Ⅳ,FMA-UE:31点,FIM:73点,発言「眼鏡もかけられるようになりたいな」
【結果】Br.s:Ⅳ-Ⅳ,FMA-UE:37点,母指探し試験:Ⅱ度,感覚検査:肩甲骨~肘関節の触圧覚・痛覚中等度鈍麻,肘関節以遠の触圧覚・痛覚重度鈍麻,運動項目FIM75点(入浴・階段4点),家事:クイックルワイパー操作・洗濯畳み・食器洗い自立,主訴「腕がもっと外に広がれば息子のYシャツを畳むときに楽かも」と自身で具体的目標を述べることが可能となった.
【考察】今回,電気療法や装具療法を併用しながらCI療法を行ったことで,機能向上のみならず「工夫すれば使える手」との認識を持つことが可能となった.訓練効果から得られる達成感と訓練効果を段階的に生活上に落とし込む関わりが行動変容へ大きく影響を及ぼしたと考えられる.
【介入モデル】・修正CI療法 ・self-regulatory理論
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき本報告に対して説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例紹介】50歳代女性.右利き.左視床出血.息子と同居し病前家事は全て本人.Brunnstrom Stage(以下Br.s):上肢Ⅱ手指Ⅱ,Fugl-Meyer Assessmentの上肢項目(以下FMA-UE)4点,母指探し試験:Ⅱ度,感覚検査,上肢感覚検査:触圧覚・痛覚重度鈍麻,運動項目FIM30点(食事以外重~中等度介助).主訴「息子に迷惑をかけたくない.何もできない」
【経過】
1,「動かない手」から「少しだけ動く手」に認識を変える段階(入院~2か月)
随意的な運動が困難であった為,まずは肩甲骨~手指にかけての随意性獲得を目的に関わりを行った.介入は,各関節への反復促通療法に電気療法を加えより筋収縮の知覚を意識した.また麻痺手の使用頻度向上を目的に,ミラーセラピーと両手での机拭きを各100回以上を自主訓練として設定した.評価(変化のみ):Br.s:Ⅲ‐Ⅲ,FMA-UE:16点,FIM:55点,発言「すごい!動いたー!」
2,「できる」を増やし能動性向上を図る段階(2~3か月)
随意的な運動が可能になった為,軟性の対立装具とテーピング,電気療法を併用し課題指向型訓練(shaping)を開始した.このころから「食器に手を添える」「ハンドクリームの開閉時容器を把持する」「雑巾を絞る」など生活上での麻痺手の使用も可能となってきた.尚「雑巾を絞る」は本人自ら提案された.評価(変化):Br.s:Ⅲ‐Ⅳ,FMA-UE:27点,FIM:66点,発言「雑巾を絞るって自分でできないかな?」
3,設定場面以外でも自主的に麻痺手を使用できる段階(3~5か月)
肩甲骨周囲の固定性が向上したため,課題指向型訓練に(transfer package)を加え生活上での使用イメージの賦活を図っていった.病棟では,「薬の袋を開ける」「お菓子を食べる」「衣服を畳む」「ドアを開ける」「ファスナーを操作する」「ボディークリームを左肩に塗る」で麻痺手を使用することが日常的に可能となった.評価(変化):Br.s:Ⅳ‐Ⅳ,FMA-UE:31点,FIM:73点,発言「眼鏡もかけられるようになりたいな」
【結果】Br.s:Ⅳ-Ⅳ,FMA-UE:37点,母指探し試験:Ⅱ度,感覚検査:肩甲骨~肘関節の触圧覚・痛覚中等度鈍麻,肘関節以遠の触圧覚・痛覚重度鈍麻,運動項目FIM75点(入浴・階段4点),家事:クイックルワイパー操作・洗濯畳み・食器洗い自立,主訴「腕がもっと外に広がれば息子のYシャツを畳むときに楽かも」と自身で具体的目標を述べることが可能となった.
【考察】今回,電気療法や装具療法を併用しながらCI療法を行ったことで,機能向上のみならず「工夫すれば使える手」との認識を持つことが可能となった.訓練効果から得られる達成感と訓練効果を段階的に生活上に落とし込む関わりが行動変容へ大きく影響を及ぼしたと考えられる.