[PA-5-12] 急性期脳卒中後上肢機能障害に対するTransfer Packageの効果
ケースシリーズ
【はじめに】2022年度より当院では病棟毎にプロトコルの作成に取り組んでいる.また,脳卒中後の上肢機能障害は対象者のQOL低下へ影響し,要因として上肢機能の改善よりも麻痺手の使用頻度が影響する.麻痺手の不使用に至る要因として様々な報告があるが,急性期特有の環境因子等の影響もあり,学習性不使用の改善,予防に向け早期からの麻痺手参加拡大へ向けた介入が必要である.その為,脳神経外科病棟では早期からの麻痺手の参加拡大目的にTransfer Package(以下TP)を標準化したプロトコルを導入した.
【目的】今回急性期脳卒中後上肢機能障害を呈した3例に対してTPを実施し,ケースシリーズにてTPの介入前後で比較,効果検証を行なった為,以下に報告する.本報告に際して対象者に口頭,紙面にて同意を得ている.
【方法】対象は初発の脳卒中患者であり,TPでの介入を行なった3例(男性2例,女性1例,平均年齢70±16.7歳)とした.評価の計測時期はOT介入開始後5日以内(発症後平均4±1.73日),発症後2週経過時(発症後平均16±2.64日)とし,項目はFugl-Meyer Assessment上肢項目(以下FMA-UE),Box and Block Test(以下BBT),Motor Activity Log-Amount of Use(以下MAL-AOU),Motor Activity Log-Quality of Movement(以下MAL-QOM) とした.介入方法はエビデンスに沿った上肢機能訓練と併用して,当院で作成したプロトコルに準じて介入した.介入方法をⅢ期に分け,Ⅱ期について具体的に記載する.担当OTが麻痺手の日常生活での使用が可能と判断後にTPの3つの構成要素である行動契約,セルフモニタリング,問題解決技法を行う時期とした.具体的に行動契約では紙面を使用し, 麻痺手使用の重要性の説明後に意思決定支援ツールを使用し,麻痺手に関する目標の聴取,共有を行った.セルフモニタリングは急性期では従来の日記法等の実施が困難な事が予想された為,石垣らの報告する簡略化TPを採用し,対象者と麻痺手を使用可能な場面について選出し,個別に麻痺側上肢使用状況確認表を作成した.OT介入時にMAL-AOUを用いて麻痺手の使用状況について自己評価と共に,自ら麻痺手を使用出来る場面を模索するよう促し,使用出来る場面が増える度に麻痺手の使用状況確認表に追加した.その際に必要に応じて問題解決技法を用いて麻痺手を使用した際に生じた問題について聴取し,OTよりアドバイスを伝え,さらなる麻痺手の参加拡大を図った.統計的解析には正規性を確認した後(Shapiro-Wilk),FMA-UE,BBT,MAL-AOU,MAL-QOMに対して対応のあるt検定を実施した.有意水準は5%未満とした.
【結果】各項目の平均点をOT介入開始時/発症後2週経過時(変化量)として示す. FMA-UE:34.3/60.3(26.0)点, MAL-AOU:0.6/2.73(2.1)点,MAL-QOM:0.83/2.9(2.1)点, BBT:12.7/39.3(26.6)個となった.分析の結果MAL-AOU,MAL-QOMにおいて優位な改善を認め,MAL-QOMの変化量についても急性期における臨床上意味のある最小変化量(MCID)である1.0点または1.1点を超える改善を示した.
【考察】急性期よりTPを使用する事でMAL-AOU,MAL-QOMにおいて介入前と介入後で優位な改善を認めた.その要因として急性期は訓練で得た効果を判定する事が難しい環境であり,環境が麻痺手の使用頻度に影響するかは今後検証が必要であるが, 健常人でも10時間上肢を不使用とする事で皮質の興奮性が低下すると報告もある.その為,上肢機能の予後が良好であっても環境が影響し学習性不使用へ移行する可能性も考えられた.その為,急性期よりTPを用いる事で学習性不使用の改善,予防を図る事によりMAL-AOU,MAL-QOMにて優位な改善を認めたのではないかと考える.
【目的】今回急性期脳卒中後上肢機能障害を呈した3例に対してTPを実施し,ケースシリーズにてTPの介入前後で比較,効果検証を行なった為,以下に報告する.本報告に際して対象者に口頭,紙面にて同意を得ている.
【方法】対象は初発の脳卒中患者であり,TPでの介入を行なった3例(男性2例,女性1例,平均年齢70±16.7歳)とした.評価の計測時期はOT介入開始後5日以内(発症後平均4±1.73日),発症後2週経過時(発症後平均16±2.64日)とし,項目はFugl-Meyer Assessment上肢項目(以下FMA-UE),Box and Block Test(以下BBT),Motor Activity Log-Amount of Use(以下MAL-AOU),Motor Activity Log-Quality of Movement(以下MAL-QOM) とした.介入方法はエビデンスに沿った上肢機能訓練と併用して,当院で作成したプロトコルに準じて介入した.介入方法をⅢ期に分け,Ⅱ期について具体的に記載する.担当OTが麻痺手の日常生活での使用が可能と判断後にTPの3つの構成要素である行動契約,セルフモニタリング,問題解決技法を行う時期とした.具体的に行動契約では紙面を使用し, 麻痺手使用の重要性の説明後に意思決定支援ツールを使用し,麻痺手に関する目標の聴取,共有を行った.セルフモニタリングは急性期では従来の日記法等の実施が困難な事が予想された為,石垣らの報告する簡略化TPを採用し,対象者と麻痺手を使用可能な場面について選出し,個別に麻痺側上肢使用状況確認表を作成した.OT介入時にMAL-AOUを用いて麻痺手の使用状況について自己評価と共に,自ら麻痺手を使用出来る場面を模索するよう促し,使用出来る場面が増える度に麻痺手の使用状況確認表に追加した.その際に必要に応じて問題解決技法を用いて麻痺手を使用した際に生じた問題について聴取し,OTよりアドバイスを伝え,さらなる麻痺手の参加拡大を図った.統計的解析には正規性を確認した後(Shapiro-Wilk),FMA-UE,BBT,MAL-AOU,MAL-QOMに対して対応のあるt検定を実施した.有意水準は5%未満とした.
【結果】各項目の平均点をOT介入開始時/発症後2週経過時(変化量)として示す. FMA-UE:34.3/60.3(26.0)点, MAL-AOU:0.6/2.73(2.1)点,MAL-QOM:0.83/2.9(2.1)点, BBT:12.7/39.3(26.6)個となった.分析の結果MAL-AOU,MAL-QOMにおいて優位な改善を認め,MAL-QOMの変化量についても急性期における臨床上意味のある最小変化量(MCID)である1.0点または1.1点を超える改善を示した.
【考察】急性期よりTPを使用する事でMAL-AOU,MAL-QOMにおいて介入前と介入後で優位な改善を認めた.その要因として急性期は訓練で得た効果を判定する事が難しい環境であり,環境が麻痺手の使用頻度に影響するかは今後検証が必要であるが, 健常人でも10時間上肢を不使用とする事で皮質の興奮性が低下すると報告もある.その為,上肢機能の予後が良好であっても環境が影響し学習性不使用へ移行する可能性も考えられた.その為,急性期よりTPを用いる事で学習性不使用の改善,予防を図る事によりMAL-AOU,MAL-QOMにて優位な改善を認めたのではないかと考える.