[PA-5-13] 急性期脳卒中患者に対するSingle joint type of Hybrid Assistive Limbの効果 —ケースシリーズ研究—
【序論】
急性期脳卒中患者に対するリハビリテーションでは, 残存している皮質脊髄路の興奮性の増大を目的とした介入が求められ, 高強度の運動を実施する方法としてロボットリハビリテーションが注目されている. しかしStroke Rehabilitation Clinician Handbook 2020において, ロボットリハビリテーションは従来法と比較して有意な改善が得られにくい可能性が指摘されている. 効果については使用機種で違いがあることが想定されるが, 我々の知る限りではSingle joint type of Hybrid Assistive Limb (HAL-SJ)を用いた介入の有効性を示した報告は散見される程度である. 本研究では, 急性期脳卒中患者に対するHAL-SJの有効性や特に効果を得られやすい患者層について分析したため報告する.
【方法】
2021年10月から2023年10月に当院脳卒中センターで治療を受けた脳卒中で上肢運動麻痺を呈した患者より, 適格基準から逸脱する者を除外した11名(男性7名, 女性4名, 平均年齢63.2±14.3歳)を対象とした. HAL-SJ介入前および2週間後に, Fugl Meyer Assessment上肢項目 (FMA), Action Research Arm Test (ARAT)を取得した. 介入は3回/週, 40分/日の頻度でHAL-SJを用いたロボットリハビリテーションを実施した. 基準電極は上腕二頭筋および上腕三頭筋に貼付し, 補助の強度(assist-gain, assist-level), 屈曲・伸展のバランス調整(BES-balance)は高反復回数が達成できるよう, 作業療法士が個別に調整した. 統計解析では各指標の前後比較についてWilcoxon符号付き順位検定を使用し, 統計学的有意水準は5%未満とした. 本研究は, 当院倫理委員会の審査・承認を得て実施した.
【結果】
介入前後で比較し, FMAおよびARATで有意な改善を認め(p<0.05), 全ての対象者で疼痛や擦過傷などの有害事象は認めなかった. 介入時の運動麻痺が中等度(FMA:20〜46点)と重度(FMA:0〜19点)で比較した場合, FMAの変化量は中等度:20.2±9.5, 重度:9.2±8.7であった. また急性期におけるFMAのminimal clinically important difference (MCID)である10点を超えた者の割合は, 中等度:5/6名(80%), 重度:2/5名(40%)であった.
【考察】
本研究では, 急性期脳卒中患者に対してHAL-SJを用いた場合, 特に中等度麻痺を呈した患者でMCIDを超える変化を示す割合を多く認めた. ロボットを用いた先行研究においては, 中等度〜重度麻痺が対象となることが報告されているが, 本研究では中等度麻痺において変化量が大きく, 機器の装着部位などにより適応が異なる可能性が示唆された. また, 運動機能は高反復回数を達成することができた患者において改善度合いが大きく, 麻痺側上肢の積極的な使用は残存している皮質脊髄路の興奮性の増大やHebbian plasticityを促した可能性があり, 急性期よりHAL-SJを用いた積極的な介入は有効であると考える. 今後は対象者数を増やすとともに, 比較対照群を設定して効果を検討する必要がある.
急性期脳卒中患者に対するリハビリテーションでは, 残存している皮質脊髄路の興奮性の増大を目的とした介入が求められ, 高強度の運動を実施する方法としてロボットリハビリテーションが注目されている. しかしStroke Rehabilitation Clinician Handbook 2020において, ロボットリハビリテーションは従来法と比較して有意な改善が得られにくい可能性が指摘されている. 効果については使用機種で違いがあることが想定されるが, 我々の知る限りではSingle joint type of Hybrid Assistive Limb (HAL-SJ)を用いた介入の有効性を示した報告は散見される程度である. 本研究では, 急性期脳卒中患者に対するHAL-SJの有効性や特に効果を得られやすい患者層について分析したため報告する.
【方法】
2021年10月から2023年10月に当院脳卒中センターで治療を受けた脳卒中で上肢運動麻痺を呈した患者より, 適格基準から逸脱する者を除外した11名(男性7名, 女性4名, 平均年齢63.2±14.3歳)を対象とした. HAL-SJ介入前および2週間後に, Fugl Meyer Assessment上肢項目 (FMA), Action Research Arm Test (ARAT)を取得した. 介入は3回/週, 40分/日の頻度でHAL-SJを用いたロボットリハビリテーションを実施した. 基準電極は上腕二頭筋および上腕三頭筋に貼付し, 補助の強度(assist-gain, assist-level), 屈曲・伸展のバランス調整(BES-balance)は高反復回数が達成できるよう, 作業療法士が個別に調整した. 統計解析では各指標の前後比較についてWilcoxon符号付き順位検定を使用し, 統計学的有意水準は5%未満とした. 本研究は, 当院倫理委員会の審査・承認を得て実施した.
【結果】
介入前後で比較し, FMAおよびARATで有意な改善を認め(p<0.05), 全ての対象者で疼痛や擦過傷などの有害事象は認めなかった. 介入時の運動麻痺が中等度(FMA:20〜46点)と重度(FMA:0〜19点)で比較した場合, FMAの変化量は中等度:20.2±9.5, 重度:9.2±8.7であった. また急性期におけるFMAのminimal clinically important difference (MCID)である10点を超えた者の割合は, 中等度:5/6名(80%), 重度:2/5名(40%)であった.
【考察】
本研究では, 急性期脳卒中患者に対してHAL-SJを用いた場合, 特に中等度麻痺を呈した患者でMCIDを超える変化を示す割合を多く認めた. ロボットを用いた先行研究においては, 中等度〜重度麻痺が対象となることが報告されているが, 本研究では中等度麻痺において変化量が大きく, 機器の装着部位などにより適応が異なる可能性が示唆された. また, 運動機能は高反復回数を達成することができた患者において改善度合いが大きく, 麻痺側上肢の積極的な使用は残存している皮質脊髄路の興奮性の増大やHebbian plasticityを促した可能性があり, 急性期よりHAL-SJを用いた積極的な介入は有効であると考える. 今後は対象者数を増やすとともに, 比較対照群を設定して効果を検討する必要がある.