第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-5] ポスター:脳血管疾患等 5 

2024年11月9日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-5-15] 脳卒中後上肢運動機能改善に関連する急性期評価因子の検討

門川 泰輔, 高岡 夏実, 浦上 慎司 (独立行政法人 地域医療機能推進機構 星ヶ丘医療センター リハビリテーション部)

【はじめに】
脳卒中領域の作業療法において,脳卒中後上肢運動麻痺の改善は患者から要望も多く,セラピストにおいても介入に苦慮する分野である.ガイドライン上でも介入に際して各種評価から予後予測を行い,効率的な介入手段を選択する事が求められており,簡便かつ早期に予後予測が出来る事が望ましい.麻痺側上肢機能改善について先行研究では,年齢・発症3日目の麻痺側肩外転・手指伸展の随意性(Stinear,2017),Action Research Arm Test(ARAT)や握力(Murphy,2022),亜急性期におけるTIS(Gula,2022)などの関連性が指摘されている.発症早期に行える各種評価と麻痺側上肢機能改善の関連性が分かれば,より簡易に上肢機能改善の予後予測を行う事ができ,効果的な介入手法の選択,適切かつ協働的なゴール設定,入院期間の適正化などが期待出来る.そこで今回は発症2週間以内の評価を用いて退院時の脳卒中後上肢麻痺の機能改善にどのような影響があるのかを調べた.
【目的】
発症2週間以内の評価指標により,退院時の麻痺側上肢機能の機能改善に関連する評価因子を検証した
【方法】
対象は2020年1月〜2022年3月の期間中に当院に入院していた症例で,1)18歳以上の成人,2)初発の脳梗塞・脳出血診断での入院,3)作業療法処方あり,4)発症72時間以内の評価実施,5)発症2週時点で端座位評価が可能,とした.除外基準として,1)脳卒中既往,2)くも膜下出血,硬膜下・硬膜外出血,小脳病変,多発病変を有する3)発症から作業療法初回介入に4日以上経過,4)上肢麻痺が明確で無い(72時間以内のShoulder Abduction and Finger Extension score (以下SAFE score) 10/10点かつ,発症2週目のFugl-Meyer Assessment-Upper Limb(以下,FMA-UE) が66/66点,5)発症より1ヶ月以内の退院,とした.一般情報は,性別,年齢,障害側,発症日から退院日までの経過日数を選択した.関連因子を調べる評価項目は,先行研究に加え当院で定期評価を行っている評価指標を取り入れた.メインアウトカムは退院時のFMA-UEを設定した.サブアウトカムは発症72時間以内の麻痺側上肢の肩外転・手指伸展のManual Muscle Test(MMT)としてSAFE scoreを,発症2週評価で,体幹機能評価Trunk Impairment Scale(TIS),Trunk Control Test (TCT),Functional Independence Measure(FIM)の運動・認知項目を評価した.統計処理として,統計ソフトJASPを用い,退院時のFMA-UEを目的変数,その他評価項目を説明変数とした重回帰分析を行い,有意水準5%として結果を算出した. 本発表は臨床研究審査委員会にて承認を得た(承認番号HG-IRB2403)
【結果】
本発表の調査対象となったのは,脳卒中患者82名(73.2±13.2歳.男性48名,女性34名) 麻痺側Rt/Lt (38/43) 起算日から退院日までの経過日数71.4±34.0日であった.重回帰分析の結果,有意な項目として抽出されたのは,TCT (β:0.336,P<0.001) FMA-UE 2w(β:0.736,P<0.001)調整済みR2=0.725であった.その他項目は年齢(β:-0.122,P<0.082) 肩外転(β:-0.025,P<0.889) 手指伸展(β:-0.111,P<0.471) TIS(β:-0173,P< 0.063) FIM-運動項目(β:-0.087,P<0.482) FIM-認知項目(β:-0.059,P<0.470)であった.
【考察】
重回帰分析の結果より,TCT,FMA-UE 2wの2項目に有意差を認めた.体幹機能評価においては,TCTの方がTISよりも臥位から評価可能であり,発症2週間以内の段階では上肢麻痺機能改善の評価因子となる可能性が示唆された.またFMA-UEはメインアウトカムと同位であり,発症2週時点の評価であっても退院時の上肢機能改善の指標となり得る可能性があると考えられた.