[PA-5-4] 中等度上肢機能障害を呈した患者に対する手指運動支援型ロボットを含む複合的 アプローチの実践
【はじめに】近年,脳卒中後の上肢機能障害に対して,課題指向型練習に加えてロボットなど補助的手段を組み合わせた複合的アプローチは推奨されているが,手指運動支援型ロボットを補助的手段に用いた実践報告は少ない.今回,中等度上肢機能障害を呈した回復期患者に対して,課題指向型練習に加えて手指運動支援ロボット(以下,MELTz)を用いた複合的な上肢アプローチを実践し,生活上での実用的な使用に近づいた為,以下に報告する.
なお,発表に関して対象者本人より書面にて同意を得ている.
【事例紹介】60歳代,男性.主病名:右延髄内側梗塞.併存疾患:前立腺肥大症,高血圧症,WPW症候群.既往歴:喉頭癌術後.発症後,第13 病日後に当院回復期病棟に入院となった.職業:通信業(高所での電信柱の配線修理,パソコン作業) デマンド:「仕事に戻れるように回復したい」であった.
【初期評価】運動麻痺はStroke Impairment Assessment Set運動項目(以下,SIAS-M)3-1C 3-3-2.Fugl-MeyerAssessment上肢運動項目(以下,FMA-UE)は27/66点であった. Simple Test for Evaluating Hand Function(以下,STEF)は実施出来なかった. Motor Activity Log(以下,MAL)のAmount Of Use(以下,AOU)とQuality of Movement(以下,QOM)は共に0点で手を動かすイメージが湧かない状況であった.表在感覚は左上下肢が過敏,右手も過敏であった.深部感覚は左肩,左肘軽度鈍麻,左手指中等度鈍麻であった.ADLはFunctional Independence Measure(以下,FIM)で87/126点であった.認知機能は良好であった.
【経過】
第1期は,随意運動介助型電気刺激装置(以下,IVES)を用いた反復的な関節運動を中心に実施し,その後, MELTzを用いた課題指向型練習を実施した.対象者から「自分で手を動かしていける感覚がある」との発言がみられた.
第2期は,前述した課題指向型練習に加えて,transfer package(以下,TP)を導入した.麻痺手を使用していく事に前向きな発言を認め,再評価においてAOU,QOM共に1.3となった.また,Aid for Decision Making in Occupation Choice for Hand(以下,ADOC-H)で選択した作業内容を,居室に準備して日々モニタリングし,生活場面での麻痺手の使用について共に検討した.
第3期は,IVESを併用した課題指向型練習とMELTzを用いた自主練習(15日間1回約40分)を実施した.徐々に生活場面で麻痺手の使用も円滑に行えてきた為,第3期の終わりにはロボット療法を終了した.
第4期は,生活場面でのより積極的な麻痺手の使用練習を反復して実施した.経過中,復職は1年間の休養と外来リハビリを継続した後に検討する方針となり,早期自宅退院を目指した生活課題を優先的に練習した.
【結果】運動麻痺はSIAS-M 4-4 5-5-4,FMA-UE 57/66点であった.MALとSTEFは中間評価から実施し,MALのAOUは3.8,QOM:3.5であった.STEFの最終評価は麻痺側82点であった.深部感覚は改善したが,表在感覚は著変なかった.FIMは126/126点であった.
【考察】今回,MELTzを初期から用いる事で麻痺手を使用するイメージの生成や主体感の向上に繋がった可能性があり,TPに基づき早期からの課題指向型練習の補助手段として有益である可能性が示唆された.また, MELTzを用いた課題指向型練習はFMA-UEのC項目の改善に寄与した可能性があるが,MALのQOMの評価を概観すると肩屈曲・外転90度以上の作業や手関節の安定がより求められる作業には課題が残る.今後,外的補助手段の検討や外来リハビリとの連携が必要と考える.
なお,発表に関して対象者本人より書面にて同意を得ている.
【事例紹介】60歳代,男性.主病名:右延髄内側梗塞.併存疾患:前立腺肥大症,高血圧症,WPW症候群.既往歴:喉頭癌術後.発症後,第13 病日後に当院回復期病棟に入院となった.職業:通信業(高所での電信柱の配線修理,パソコン作業) デマンド:「仕事に戻れるように回復したい」であった.
【初期評価】運動麻痺はStroke Impairment Assessment Set運動項目(以下,SIAS-M)3-1C 3-3-2.Fugl-MeyerAssessment上肢運動項目(以下,FMA-UE)は27/66点であった. Simple Test for Evaluating Hand Function(以下,STEF)は実施出来なかった. Motor Activity Log(以下,MAL)のAmount Of Use(以下,AOU)とQuality of Movement(以下,QOM)は共に0点で手を動かすイメージが湧かない状況であった.表在感覚は左上下肢が過敏,右手も過敏であった.深部感覚は左肩,左肘軽度鈍麻,左手指中等度鈍麻であった.ADLはFunctional Independence Measure(以下,FIM)で87/126点であった.認知機能は良好であった.
【経過】
第1期は,随意運動介助型電気刺激装置(以下,IVES)を用いた反復的な関節運動を中心に実施し,その後, MELTzを用いた課題指向型練習を実施した.対象者から「自分で手を動かしていける感覚がある」との発言がみられた.
第2期は,前述した課題指向型練習に加えて,transfer package(以下,TP)を導入した.麻痺手を使用していく事に前向きな発言を認め,再評価においてAOU,QOM共に1.3となった.また,Aid for Decision Making in Occupation Choice for Hand(以下,ADOC-H)で選択した作業内容を,居室に準備して日々モニタリングし,生活場面での麻痺手の使用について共に検討した.
第3期は,IVESを併用した課題指向型練習とMELTzを用いた自主練習(15日間1回約40分)を実施した.徐々に生活場面で麻痺手の使用も円滑に行えてきた為,第3期の終わりにはロボット療法を終了した.
第4期は,生活場面でのより積極的な麻痺手の使用練習を反復して実施した.経過中,復職は1年間の休養と外来リハビリを継続した後に検討する方針となり,早期自宅退院を目指した生活課題を優先的に練習した.
【結果】運動麻痺はSIAS-M 4-4 5-5-4,FMA-UE 57/66点であった.MALとSTEFは中間評価から実施し,MALのAOUは3.8,QOM:3.5であった.STEFの最終評価は麻痺側82点であった.深部感覚は改善したが,表在感覚は著変なかった.FIMは126/126点であった.
【考察】今回,MELTzを初期から用いる事で麻痺手を使用するイメージの生成や主体感の向上に繋がった可能性があり,TPに基づき早期からの課題指向型練習の補助手段として有益である可能性が示唆された.また, MELTzを用いた課題指向型練習はFMA-UEのC項目の改善に寄与した可能性があるが,MALのQOMの評価を概観すると肩屈曲・外転90度以上の作業や手関節の安定がより求められる作業には課題が残る.今後,外的補助手段の検討や外来リハビリとの連携が必要と考える.