[PA-5-5] 「食事よりプラモデルがしたい!」
趣味活動再開にむけた作業療法士としての取り組み
【はじめに】現在,回復期リハビリテーション(リハ)病棟は実績指数が重要視されているが,本来,作業療法士はQOL向上の為,対象者にとって意味のある作業を重要視すべきである(岩﨑2010).今回,車のプラモデル作製を重要とする症例に対して趣味再開を目標にする事が,リハに対する意欲向上へと繋がり離床やADL獲得に至った為,以下に報告する.本報告は,当院の倫理委員会の承認を得ており,本人に書面にて説明・同意を得ている.
【事例紹介】60代男性,右利き.X日右中大脳動脈閉塞により左片麻痺,高次脳機能障害を発症.X+44日胃癌に対して幽門側胃切除術施行StageⅡ.X+105日,術後経過が安定し当院回リハ病棟に転院,1日PT・OT・ST各60分の介入を開始.趣味は,車の書籍やグッズ収集・プラモデル作製.母と2人暮らし.
【作業療法評価】上肢機能はFMA15/66で亜脱臼あり,機能的使用が困難.坐位・立位は不安定.高次脳機能障害は注意障害を中心に認めた.MMSE・線分二等分線・模写課題は問題なし,FAB9/18,CAB23/30,仮名拾いテスト2分間正答数36,TMTj-A63秒,TMTj-B282秒.活動・参加は,FIM61/126で生活全般に介助を要した.カナダ作業遂行測定(COPM)は「プラモデル作製」重要度10遂行度1満足度1.作製手順の混乱があった.作業は片手で出来ず,机上は物品が散乱しカッター落下等でリスク管理が困難だった.
【介入経過】介入初期は,食思低下や肩の痛みによる不眠,易疲労性により臥床傾向であった.車椅子乗車5分で疲労あり,訓練は無表情で消極的な事が多かったが,車の話は笑顔で饒舌になる場面がみられた.そのため,趣味の再獲得を目標に定めて環境設定,機能訓練や離床,ADL訓練を促した.1~4週目は,食事・良眠環境を検討した.趣味活動再開の為,ベッド上は鞄・籠で整理し,床頭台に本棚を置き読書やメモを推奨した.車の色塗りにて車椅子離床を促した.
5~11週目は,良眠・体力向上に伴い,立位を含む機能訓練・ADL練習を実施した.移乗時の車椅子ブレーキ操作忘れに,印等を設置した.装具を含む更衣は,麻痺側管理や物の向きを合わせる事が困難な為,鏡等で活動分析を共有し手順習得した.チェック表の導入で他職種と練習する回数を増やした.定期的に症例と結果を回顧して,注意点の認識を高めた.投げやりな言動には,趣味再開への激励をした.
12~14週目は,日中は入浴以外のADLが自立した.趣味再開の為,プラモデルや工具を選別して1つの籠に収納し,車椅子にて全てを取り組める様にした.作製は1工程毎とし,机上の場所を決めて物品の散乱・落下防止を図り,固定や開閉作業を工夫して片手で行える様にした.混乱には写真付きの手順書にて自己修正を促進した.その結果,車のプラモデル作製が可能となった.退院後先の施設でも行える様に情報共有した.
【結果】X+206日は,FMA17/66,把持物ありの立位安定.高次脳機能障害は注意障害が残存したが,CAB24/30,仮名拾いテスト2分間正答数38,TMTj-A53秒,TMTj-B245秒と向上した.FIM88/126,日中離床して過ごし,入浴以外のADLは自立した.車のプラモデル作製が再開しCOPMは重要度10遂行度8満足度8となった.
【考察】作業と人間の関わりについて,作業が人を活性化し生きがいを作り生活を豊かにするとし,作業療法士として一人の人間として,対象者に対して何が出来るのかを考える事は大切である(矢谷,2003).今回,症例にとって生きがいである車のプラモデル作製再開を目標とした.その過程で体力向上を図り,それを基盤にADL自立の拡大へと至り,結果として趣味の再開に至った.そのため,作業療法士は対象者にとって重要で意味のある作業に着目したリハをすると良いと考える.
【事例紹介】60代男性,右利き.X日右中大脳動脈閉塞により左片麻痺,高次脳機能障害を発症.X+44日胃癌に対して幽門側胃切除術施行StageⅡ.X+105日,術後経過が安定し当院回リハ病棟に転院,1日PT・OT・ST各60分の介入を開始.趣味は,車の書籍やグッズ収集・プラモデル作製.母と2人暮らし.
【作業療法評価】上肢機能はFMA15/66で亜脱臼あり,機能的使用が困難.坐位・立位は不安定.高次脳機能障害は注意障害を中心に認めた.MMSE・線分二等分線・模写課題は問題なし,FAB9/18,CAB23/30,仮名拾いテスト2分間正答数36,TMTj-A63秒,TMTj-B282秒.活動・参加は,FIM61/126で生活全般に介助を要した.カナダ作業遂行測定(COPM)は「プラモデル作製」重要度10遂行度1満足度1.作製手順の混乱があった.作業は片手で出来ず,机上は物品が散乱しカッター落下等でリスク管理が困難だった.
【介入経過】介入初期は,食思低下や肩の痛みによる不眠,易疲労性により臥床傾向であった.車椅子乗車5分で疲労あり,訓練は無表情で消極的な事が多かったが,車の話は笑顔で饒舌になる場面がみられた.そのため,趣味の再獲得を目標に定めて環境設定,機能訓練や離床,ADL訓練を促した.1~4週目は,食事・良眠環境を検討した.趣味活動再開の為,ベッド上は鞄・籠で整理し,床頭台に本棚を置き読書やメモを推奨した.車の色塗りにて車椅子離床を促した.
5~11週目は,良眠・体力向上に伴い,立位を含む機能訓練・ADL練習を実施した.移乗時の車椅子ブレーキ操作忘れに,印等を設置した.装具を含む更衣は,麻痺側管理や物の向きを合わせる事が困難な為,鏡等で活動分析を共有し手順習得した.チェック表の導入で他職種と練習する回数を増やした.定期的に症例と結果を回顧して,注意点の認識を高めた.投げやりな言動には,趣味再開への激励をした.
12~14週目は,日中は入浴以外のADLが自立した.趣味再開の為,プラモデルや工具を選別して1つの籠に収納し,車椅子にて全てを取り組める様にした.作製は1工程毎とし,机上の場所を決めて物品の散乱・落下防止を図り,固定や開閉作業を工夫して片手で行える様にした.混乱には写真付きの手順書にて自己修正を促進した.その結果,車のプラモデル作製が可能となった.退院後先の施設でも行える様に情報共有した.
【結果】X+206日は,FMA17/66,把持物ありの立位安定.高次脳機能障害は注意障害が残存したが,CAB24/30,仮名拾いテスト2分間正答数38,TMTj-A53秒,TMTj-B245秒と向上した.FIM88/126,日中離床して過ごし,入浴以外のADLは自立した.車のプラモデル作製が再開しCOPMは重要度10遂行度8満足度8となった.
【考察】作業と人間の関わりについて,作業が人を活性化し生きがいを作り生活を豊かにするとし,作業療法士として一人の人間として,対象者に対して何が出来るのかを考える事は大切である(矢谷,2003).今回,症例にとって生きがいである車のプラモデル作製再開を目標とした.その過程で体力向上を図り,それを基盤にADL自立の拡大へと至り,結果として趣味の再開に至った.そのため,作業療法士は対象者にとって重要で意味のある作業に着目したリハをすると良いと考える.