[PA-5-6] 回復期リハビリテーション病棟で復職支援に関わり,退院後継続的な支援の必要性に気づいた事例
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)において,日常生活活動(ADL)や手段的日常生活活動(IADL)の自立に向けた支援は重要だが,社会参加を促す場面で復職支援に関わる機会もある.入院中の復職支援に関する報告は散見されるが,復職後の就労継続に関する報告は限られる.今回,回リハ病棟で復職支援を行ったが,就業継続困難になった事例を経験した.本事例報告では入院中の作業療法経過を報告するとともに,今後の復職支援について考察を加え報告する.本発表は当院研究委員会の承認を得た上で,患者本人から書面にて同意を得た.
【事例紹介】30歳代男性.X年Y月Z日に左被殻出血を発症し急性期病院で加療後にADLの自立,自動車運転再開と復職を目的にZ+56日で当院転院となった.入院時は右上下肢中等度麻痺と感覚障害に加え,運動性失語,遂行機能障害を呈していた.合併症にネフローゼ症候群による腎不全を呈していた.ADLはFunctional Independence Measure(FIM)で運動項目54点,認知項目23点であった.発症前の仕事はプレス加工業に従事していた.家族や職場との関係は良好で,職場は復職を急がずに治療を優先することを勧めていたが,本人は生真面目な正確から職場に迷惑をかけることを気にかけて早期復職を目指していた.
【作業療法介入経過】初期介入時には麻痺側上肢機能訓練やADL訓練を実施した.訓練中は過剰努力により麻痺側上下肢の痙縮が高まりやすく,動作の障害になることも見られた.Z+133日で院内ADLは全て自立した.その後,自動車運転再開に向けた評価と訓練を行い,最終的には自動車運転再開可能レベルと判断された.復職は本人が窓口となり,職場・病院間の情報共有を行った.職場環境や作業の様子は職場から動画を提供してもらい,仕事に関する必要動作に加えて,制服などの身支度や休憩場所での過ごし方など仕事に関連する事柄についても本例と一緒に検討した.退院前には家族・職場と支援会議を開催し,その時点での作業能力や配慮が必要な作業に関する情報提供,代替手段の提案や配置転換の検討を依頼した.復職後の就労支援機関の関わりの必要性についても伝えるが,職場の支援体制が整っているという理由で断られた.
【結果】退院後2週間程度の自宅療養後,半日出勤から復職したが,復帰時期は夏期で職場は暑熱環境にあり,復帰後約2ヶ月後に職場で熱中症を疑う症状を起こして近医へ救急搬送された.体調が改善するまで再び療養することとなったが,その間体力維持のために自宅周辺で散歩を行った際に,再度熱中症を疑う症状を起こし救急搬送された.職場は体調不良を繰り返すことを理由に,本人との雇用契約を解消した.
【考察】回リハ病棟では仕事の動作や手順などを詳細に評価・練習し,復職までの調整は良好であった.しかし,合併症である腎不全は体温調節,水分や塩分の排出能力の低下を来すと言われており,病院という環境下ではコントロールできていたが,身体的負荷の大きい職場環境ではコントロールできず,就業継続が困難に陥ってしまったと考える.また本人の生真面目な性格ゆえに,焦燥感から自身の体調よりも復職に向けた行動を優先してしまった結果,体調の悪化をきたし就業継続困難に繋がった可能性がある.就労は通年で継続できることが目標で安定した体調管理が大前提となり,復職できたとしても安定して就労が継続できているかの確認や,職場で問題が生じた際の支援が重要となる.本事例では就労支援機関との退院後の関わりは断られたが,そのような場合でも長期の入院で信頼関係ができた病院として継続的に支援する体制作りの必要性が示唆された.
【事例紹介】30歳代男性.X年Y月Z日に左被殻出血を発症し急性期病院で加療後にADLの自立,自動車運転再開と復職を目的にZ+56日で当院転院となった.入院時は右上下肢中等度麻痺と感覚障害に加え,運動性失語,遂行機能障害を呈していた.合併症にネフローゼ症候群による腎不全を呈していた.ADLはFunctional Independence Measure(FIM)で運動項目54点,認知項目23点であった.発症前の仕事はプレス加工業に従事していた.家族や職場との関係は良好で,職場は復職を急がずに治療を優先することを勧めていたが,本人は生真面目な正確から職場に迷惑をかけることを気にかけて早期復職を目指していた.
【作業療法介入経過】初期介入時には麻痺側上肢機能訓練やADL訓練を実施した.訓練中は過剰努力により麻痺側上下肢の痙縮が高まりやすく,動作の障害になることも見られた.Z+133日で院内ADLは全て自立した.その後,自動車運転再開に向けた評価と訓練を行い,最終的には自動車運転再開可能レベルと判断された.復職は本人が窓口となり,職場・病院間の情報共有を行った.職場環境や作業の様子は職場から動画を提供してもらい,仕事に関する必要動作に加えて,制服などの身支度や休憩場所での過ごし方など仕事に関連する事柄についても本例と一緒に検討した.退院前には家族・職場と支援会議を開催し,その時点での作業能力や配慮が必要な作業に関する情報提供,代替手段の提案や配置転換の検討を依頼した.復職後の就労支援機関の関わりの必要性についても伝えるが,職場の支援体制が整っているという理由で断られた.
【結果】退院後2週間程度の自宅療養後,半日出勤から復職したが,復帰時期は夏期で職場は暑熱環境にあり,復帰後約2ヶ月後に職場で熱中症を疑う症状を起こして近医へ救急搬送された.体調が改善するまで再び療養することとなったが,その間体力維持のために自宅周辺で散歩を行った際に,再度熱中症を疑う症状を起こし救急搬送された.職場は体調不良を繰り返すことを理由に,本人との雇用契約を解消した.
【考察】回リハ病棟では仕事の動作や手順などを詳細に評価・練習し,復職までの調整は良好であった.しかし,合併症である腎不全は体温調節,水分や塩分の排出能力の低下を来すと言われており,病院という環境下ではコントロールできていたが,身体的負荷の大きい職場環境ではコントロールできず,就業継続が困難に陥ってしまったと考える.また本人の生真面目な性格ゆえに,焦燥感から自身の体調よりも復職に向けた行動を優先してしまった結果,体調の悪化をきたし就業継続困難に繋がった可能性がある.就労は通年で継続できることが目標で安定した体調管理が大前提となり,復職できたとしても安定して就労が継続できているかの確認や,職場で問題が生じた際の支援が重要となる.本事例では就労支援機関との退院後の関わりは断られたが,そのような場合でも長期の入院で信頼関係ができた病院として継続的に支援する体制作りの必要性が示唆された.