[PA-5-7] 脳梗塞により自信を失った事例が,就労移行支援サービスを利用して社会復帰できるまで
【はじめに】今回,脳血管疾患後遺症として左片麻痺がある方の就労支援を行った.就労において自信が乏しく,社会参加ができずにいた.外来リハビリテーション(以下,外来リハ)の担当OTと情報交換をしながら,自信を持って就労に臨めるよう訓練や実習等段階的な支援を行った結果,就労が可能となった.本報告は社会復帰を目指す際に,就労移行支援サービス(以下,就労移行)が当事者の精神的側面の支援となる可能性を示唆するものである.本発表に際し,本人より書面にて同意を得ている.
【基本情報】50代女性.一人暮らしをしながら営業事務の仕事をしていた.X年に脳梗塞を発症し,急性期病院にて保存的加療を受け,X+1か月で回復期病院へ転院,X+7か月で両親宅へ退院した.復職は叶わず退職.外来リハを継続しつつ,徐々に自立生活を獲得した.改造車で自動車運転も自立し,X+3年1か月後に外来リハ担当OTより就労移行の利用を提案.見学,体験ののちに就労移行利用開始となった.
【事例紹介】Br.stage:上肢Ⅲ,手指Ⅲ,下肢Ⅳで高次脳機能障害はなかった.杖歩行での移動,ADLは自立.人混みや段差の多い屋外歩行は困難であった.外来リハは移動能力向上と身体管理のため週1回PT・OTを実施.就労移行は週3回から開始し,自動車で通った.事業所内訓練に積極的に取り組み,開始2か月目には週4回の利用に増えた.
【目標設定・支援計画】利用開始3か月間でPC作業(入力や表計算)や電話応対,事務補助業務全般を習得した.しかし,事例は片手作業により作業を効率よく行えないと自信を失っていた.また,「自分は後で良いです」と遠慮する発言が多く,結果として進捗の報告が遅れることがあり,今後の就労における課題となる可能性があった.企業見学や実習を通してこれらの課題を克服する必要性をご本人と共有し,企業実習に臨んだ.
【実習での取り組み】利用4か月目に特例子会社で連続5日間の実習を行った.実習打ち合わせの際に,苦手な封入作業であったことから「私は片麻痺があるので,効率良くできる人が作業したほうが良いのでは」と発言をしたところ,「まずやってみないと仕事をもらえない.」と企業側から指摘があった.その後,「まずはやってみる」気持ちで実習へ臨んだ結果,「やってみたら,できましたね.」との言葉があり,挑戦の大切さを学んだ.また,思い込みによる確認不足も自覚することができた. 5か月目には医療専門学校で計7日間の実習を経験した.複合機でのスキャン業務やPCでのデータ処理業務を経験し,事務作業の正確性やスピードに定評を得た.また,業務以外のコミュニケーションが報告や相談のしやすさにつながることを体験した.
【結果】実習を経て得意不得意の整理ができ,「工夫次第でできることはある」と考えられるようになった.大学の事務求人へ申し込み,書類選考および雇用前実習を経て利用開始9か月目に就職が決まった.雇用前実習での積極性を評価された結果であった.利用10か月目から勤務を開始し,筆者のフォローアップ訪問や職場との面談を設けつつ,日々仕事に取り組んでいる.
【考察】自信喪失により就労に臨む姿勢がわからずにいたが,企業実習をきっかけに大きな気持ちの変化を認めた.模擬的な訓練だけでは味わえない働く実体験がきっかけとなり,まずはやってみる気持ちで仕事と向き合い,工夫次第でできることが増える成功体験を積んだ.結果,自信をもたらし,積極的な姿勢で仕事に臨めるようになり,雇用へつながったと考える.挑戦に伴走する就労移行が,精神的支援の一助を担った結果だと示唆された.
【基本情報】50代女性.一人暮らしをしながら営業事務の仕事をしていた.X年に脳梗塞を発症し,急性期病院にて保存的加療を受け,X+1か月で回復期病院へ転院,X+7か月で両親宅へ退院した.復職は叶わず退職.外来リハを継続しつつ,徐々に自立生活を獲得した.改造車で自動車運転も自立し,X+3年1か月後に外来リハ担当OTより就労移行の利用を提案.見学,体験ののちに就労移行利用開始となった.
【事例紹介】Br.stage:上肢Ⅲ,手指Ⅲ,下肢Ⅳで高次脳機能障害はなかった.杖歩行での移動,ADLは自立.人混みや段差の多い屋外歩行は困難であった.外来リハは移動能力向上と身体管理のため週1回PT・OTを実施.就労移行は週3回から開始し,自動車で通った.事業所内訓練に積極的に取り組み,開始2か月目には週4回の利用に増えた.
【目標設定・支援計画】利用開始3か月間でPC作業(入力や表計算)や電話応対,事務補助業務全般を習得した.しかし,事例は片手作業により作業を効率よく行えないと自信を失っていた.また,「自分は後で良いです」と遠慮する発言が多く,結果として進捗の報告が遅れることがあり,今後の就労における課題となる可能性があった.企業見学や実習を通してこれらの課題を克服する必要性をご本人と共有し,企業実習に臨んだ.
【実習での取り組み】利用4か月目に特例子会社で連続5日間の実習を行った.実習打ち合わせの際に,苦手な封入作業であったことから「私は片麻痺があるので,効率良くできる人が作業したほうが良いのでは」と発言をしたところ,「まずやってみないと仕事をもらえない.」と企業側から指摘があった.その後,「まずはやってみる」気持ちで実習へ臨んだ結果,「やってみたら,できましたね.」との言葉があり,挑戦の大切さを学んだ.また,思い込みによる確認不足も自覚することができた. 5か月目には医療専門学校で計7日間の実習を経験した.複合機でのスキャン業務やPCでのデータ処理業務を経験し,事務作業の正確性やスピードに定評を得た.また,業務以外のコミュニケーションが報告や相談のしやすさにつながることを体験した.
【結果】実習を経て得意不得意の整理ができ,「工夫次第でできることはある」と考えられるようになった.大学の事務求人へ申し込み,書類選考および雇用前実習を経て利用開始9か月目に就職が決まった.雇用前実習での積極性を評価された結果であった.利用10か月目から勤務を開始し,筆者のフォローアップ訪問や職場との面談を設けつつ,日々仕事に取り組んでいる.
【考察】自信喪失により就労に臨む姿勢がわからずにいたが,企業実習をきっかけに大きな気持ちの変化を認めた.模擬的な訓練だけでは味わえない働く実体験がきっかけとなり,まずはやってみる気持ちで仕事と向き合い,工夫次第でできることが増える成功体験を積んだ.結果,自信をもたらし,積極的な姿勢で仕事に臨めるようになり,雇用へつながったと考える.挑戦に伴走する就労移行が,精神的支援の一助を担った結果だと示唆された.