[PA-5-9] 回復期リハビリテーション病棟を退院した患者が語った住環境整備の成果と課題
はじめに
回復期病棟において,住環境整備の指導は,退院直後の対象者の生活の負担軽減や移動の安全を確保するため重要となっている.住環境整備に関する先行研究は ADLや転倒の有無,移動の支援に関してFIMで変化を捉えたものが散見されており,対象者の視点で調査されているものは少ない.そこで,住環境整備をより質の高い支援とするため,住環境整備の成果や課題について,対象者一人ひとりの声を聞くことによりこれまでと異なる視点での把握が必要である.さらに対象者の語りを分析することで,住環境整備に携わる多職種へ新たな視点や今後の目指すべき方向性を提供することができると考える.なお,本研究は筆頭筆者の所属する病院および大学の倫理審査委員会の承認を得て実施し,報告にあたり対象者から同意を得ている.
目的
本研究の目的は,作業療法士の専門性を活かした住環境整備による支援のあり方を検討するため,回復期病棟を退院した患者の語りから住環境整備が作業遂行へもたらす効果と支援の課題を明らかにすることである.
方法
回復期病棟で住環境整備を実施した患者9名の自宅へ退院1〜2ヶ月後に訪問し,インタビューガイドとCOPMを使用して半構造化面接を実施した.インタビューと作業遂行の観察で得られた9人分の逐語録から,KJ法に準じて123のラベルを抽出した.このラベルから探検ネットを作成し,多段ピックアップで32ラベルを精選し,構造化・図解化・叙述化した.
結果
対象者の平均年齢は72.1±8.4歳,男性2名,女性7名であった.インタビュー時間の合計は554分,1人あたりの平均時間は61.5±17.6分であった.回復期病棟を退院した対象者は,住環境整備によって【生活の支えとなる高い肯定感】を得ていた.また,その人らしい作業が実現することで住環境整備による【作業遂行への貢献】を感じていた.そのような生活が,住環境整備への信頼感を高め,対象者に生活における住環境整備の重要性を認識させていた.これにより,【新たな作業のニーズが生まれる】こととなり,【手すりを生活しながら増やす】ことに至っていた.一方で,作業に焦点を当てた住環境整備が実施されず,住環境と【作業遂行とのギャップ】が生じると,作業の実現を困難にしてしまい,住環境整備の【作業遂行への貢献】とは相反する状況を生じさせていた.さらに,作業療法士の提案した福祉用具等が生活環境に適合していないと,【住環境整備のミスマッチ】が起こり,在宅復帰から住環境整備の完成までに一定の期間が生じることで,【タイムラグの発生】が起き,作業の実現が遅れることもあることが分かった.
考察
住環境整備は,転倒予防や動線の確保だけではなく,余暇活動や地域での社会参加の拡大に貢献していた.さらに,住環境整備は単なる環境の改善にとどまらず,対象者の生活に対する意識を変容させる影響を持っていることが示唆された.そのため,退院後の生活における対象者のニーズの変化や発展を想定し,生活期の専門職種へ作業遂行の視点を繋ぐことが求められる.作業療法士が,対象者の希望する作業への理解や重要性の認識を不足している,または住環境整備に関する知識や経験が不足している場合,退院後の作業遂行や満足度が阻害されることが明らかになった.
回復期病棟において,住環境整備の指導は,退院直後の対象者の生活の負担軽減や移動の安全を確保するため重要となっている.住環境整備に関する先行研究は ADLや転倒の有無,移動の支援に関してFIMで変化を捉えたものが散見されており,対象者の視点で調査されているものは少ない.そこで,住環境整備をより質の高い支援とするため,住環境整備の成果や課題について,対象者一人ひとりの声を聞くことによりこれまでと異なる視点での把握が必要である.さらに対象者の語りを分析することで,住環境整備に携わる多職種へ新たな視点や今後の目指すべき方向性を提供することができると考える.なお,本研究は筆頭筆者の所属する病院および大学の倫理審査委員会の承認を得て実施し,報告にあたり対象者から同意を得ている.
目的
本研究の目的は,作業療法士の専門性を活かした住環境整備による支援のあり方を検討するため,回復期病棟を退院した患者の語りから住環境整備が作業遂行へもたらす効果と支援の課題を明らかにすることである.
方法
回復期病棟で住環境整備を実施した患者9名の自宅へ退院1〜2ヶ月後に訪問し,インタビューガイドとCOPMを使用して半構造化面接を実施した.インタビューと作業遂行の観察で得られた9人分の逐語録から,KJ法に準じて123のラベルを抽出した.このラベルから探検ネットを作成し,多段ピックアップで32ラベルを精選し,構造化・図解化・叙述化した.
結果
対象者の平均年齢は72.1±8.4歳,男性2名,女性7名であった.インタビュー時間の合計は554分,1人あたりの平均時間は61.5±17.6分であった.回復期病棟を退院した対象者は,住環境整備によって【生活の支えとなる高い肯定感】を得ていた.また,その人らしい作業が実現することで住環境整備による【作業遂行への貢献】を感じていた.そのような生活が,住環境整備への信頼感を高め,対象者に生活における住環境整備の重要性を認識させていた.これにより,【新たな作業のニーズが生まれる】こととなり,【手すりを生活しながら増やす】ことに至っていた.一方で,作業に焦点を当てた住環境整備が実施されず,住環境と【作業遂行とのギャップ】が生じると,作業の実現を困難にしてしまい,住環境整備の【作業遂行への貢献】とは相反する状況を生じさせていた.さらに,作業療法士の提案した福祉用具等が生活環境に適合していないと,【住環境整備のミスマッチ】が起こり,在宅復帰から住環境整備の完成までに一定の期間が生じることで,【タイムラグの発生】が起き,作業の実現が遅れることもあることが分かった.
考察
住環境整備は,転倒予防や動線の確保だけではなく,余暇活動や地域での社会参加の拡大に貢献していた.さらに,住環境整備は単なる環境の改善にとどまらず,対象者の生活に対する意識を変容させる影響を持っていることが示唆された.そのため,退院後の生活における対象者のニーズの変化や発展を想定し,生活期の専門職種へ作業遂行の視点を繋ぐことが求められる.作業療法士が,対象者の希望する作業への理解や重要性の認識を不足している,または住環境整備に関する知識や経験が不足している場合,退院後の作業遂行や満足度が阻害されることが明らかになった.