[PA-6-12] 電気刺激療法と作業療法を併用して左手指機能が向上した症例報告
【【はじめに】リハビリテーションにおける電気刺激療法においてkhaslavskaiaらは,電気刺激に合わせて随意収縮を行なった場合のほうが,随意収縮や電極刺激のそれぞれ単独と比較し,皮質運動野の興奮性が優位に増加すると述べている.今回,心原性脳塞栓症により左片麻痺を呈した症例を担当した.治療選択において電気刺激療法を実施した経過を以下に報告する.なお,本報告にあたり倫理的配慮として本人に対し十分な説明の上,書面にて同意を得ている.
【症例紹介】70歳代男性.利き手は右手.診断名は心原性脳塞栓症.Y月Z日,左上肢麻痺を自覚し知人に連絡し,救急要請を依頼し同日搬送. Z日+15病日目に当院回復期病棟へ入棟.病前生活は自立.主訴は指が動かせるようになりたい.
【初期評価】Brunnstrom Stage(以下,BRS)左上肢Ⅴ,左手指Ⅰ,左下肢Ⅴ,握力右21kg,左0kg,Fugl Meyer Assessment上肢項目(以下,FMA-UE)31点,ROM(active)左前腕回内0〜20°,回外0〜10°,左手関節掌屈,背屈0°,撓屈,尺屈0°左母指橈側外転0°,掌側外転0°.tip-palm distance (以下,TPD)6㎝,MMT左前腕回内,回外0.左手関節掌屈,背屈0.左母指対立0,左手指屈曲,伸展0. ADLは下衣更衣にて靴紐,下衣紐の結びは困難.洗体動作にて右上肢と背中は介助が必要であった.また,ペットボトルの把持が困難であったためキャップの開閉に難渋した.
【介入経過】Z 日+15病日目より介入.初日から電気刺激療法を実施した.治療機器は低周波治療器(伊藤超短波,ES420)にてモードはEMS,電気刺激強度は25Hz ,20〜30mAに設定.電気刺激の部位は左手関節掌屈筋群(橈・尺側手根屈筋),左手関節背屈筋群(左長・短橈側手根伸筋,尺側手根伸筋),左母指対立筋群(短母指屈筋,短母指外転筋),左手指屈曲筋群(深指屈筋,浅指屈筋),左手指伸展筋群(短母指伸筋,総指伸筋) の筋腹部周囲,時間は10分間,頻度は週4〜5日を目標に実施.Z日+28病日目に運動先行型トレーニングを参考に,物品把持の模倣動作,運動観察を電気刺激療法と併せて実施.Z日+36病日目以降は左手指伸展の自動運動を促すためにスプリントを作成し2週間程度装着した.Z日+49病日目以降は異常感覚の出現により,電気刺激療法を終了した.終了時のBRSは左手指Ⅳ,TPDは1㎝であった.その後は洗体動作や靴紐,下衣紐結びを実施した.
【結果】Z日+50病日目後の最終評価では,BRS左上肢Ⅴ,左手指Ⅴ,左下肢Ⅴ,握力右23kg,左11kg,FMA56点,ROM(active)左前腕回内0〜90°,回外0〜80°,左手関節掌屈0〜90°,背屈0〜70°,撓屈0〜10°,尺屈0〜20°,左母指橈側外転0〜40°,掌側外転0〜50°,左手指TPD1㎝.MMT左前腕回内,回外4.左手関節掌屈,背屈4.左母指対立3,左手指屈曲,伸展3. ADLは下衣更衣にて靴紐,下衣紐が結べるようになり,洗体動作も可能となった.また,ペットボトルの把持が可能となりキャップの開閉も実用的となった.
【考察】皮質脊髄路の新たな経路の構築は3ヶ月をピークに再構築される(2012:原)と報告されている.また,運動機能回復に影響を与える要因として運動先行型の活動と感覚フィードバックを合わせると効果的と述べられている(N Sharma,2016).今回,麻痺の回復時期も踏まえた上で低周波治療器を用いた電気刺激療法と運動先行型トレーニングを参考とした介入が上肢機能の回復に繋がったのではないかと考える.
【本報告の限界】今回の介入において電気刺激療法のみの実施ではないため,電気刺激療法の効果を示すことは困難であり,他の介入も結果に影響を及ぼした可能性があり,介入デザインの再考が必要である.
【症例紹介】70歳代男性.利き手は右手.診断名は心原性脳塞栓症.Y月Z日,左上肢麻痺を自覚し知人に連絡し,救急要請を依頼し同日搬送. Z日+15病日目に当院回復期病棟へ入棟.病前生活は自立.主訴は指が動かせるようになりたい.
【初期評価】Brunnstrom Stage(以下,BRS)左上肢Ⅴ,左手指Ⅰ,左下肢Ⅴ,握力右21kg,左0kg,Fugl Meyer Assessment上肢項目(以下,FMA-UE)31点,ROM(active)左前腕回内0〜20°,回外0〜10°,左手関節掌屈,背屈0°,撓屈,尺屈0°左母指橈側外転0°,掌側外転0°.tip-palm distance (以下,TPD)6㎝,MMT左前腕回内,回外0.左手関節掌屈,背屈0.左母指対立0,左手指屈曲,伸展0. ADLは下衣更衣にて靴紐,下衣紐の結びは困難.洗体動作にて右上肢と背中は介助が必要であった.また,ペットボトルの把持が困難であったためキャップの開閉に難渋した.
【介入経過】Z 日+15病日目より介入.初日から電気刺激療法を実施した.治療機器は低周波治療器(伊藤超短波,ES420)にてモードはEMS,電気刺激強度は25Hz ,20〜30mAに設定.電気刺激の部位は左手関節掌屈筋群(橈・尺側手根屈筋),左手関節背屈筋群(左長・短橈側手根伸筋,尺側手根伸筋),左母指対立筋群(短母指屈筋,短母指外転筋),左手指屈曲筋群(深指屈筋,浅指屈筋),左手指伸展筋群(短母指伸筋,総指伸筋) の筋腹部周囲,時間は10分間,頻度は週4〜5日を目標に実施.Z日+28病日目に運動先行型トレーニングを参考に,物品把持の模倣動作,運動観察を電気刺激療法と併せて実施.Z日+36病日目以降は左手指伸展の自動運動を促すためにスプリントを作成し2週間程度装着した.Z日+49病日目以降は異常感覚の出現により,電気刺激療法を終了した.終了時のBRSは左手指Ⅳ,TPDは1㎝であった.その後は洗体動作や靴紐,下衣紐結びを実施した.
【結果】Z日+50病日目後の最終評価では,BRS左上肢Ⅴ,左手指Ⅴ,左下肢Ⅴ,握力右23kg,左11kg,FMA56点,ROM(active)左前腕回内0〜90°,回外0〜80°,左手関節掌屈0〜90°,背屈0〜70°,撓屈0〜10°,尺屈0〜20°,左母指橈側外転0〜40°,掌側外転0〜50°,左手指TPD1㎝.MMT左前腕回内,回外4.左手関節掌屈,背屈4.左母指対立3,左手指屈曲,伸展3. ADLは下衣更衣にて靴紐,下衣紐が結べるようになり,洗体動作も可能となった.また,ペットボトルの把持が可能となりキャップの開閉も実用的となった.
【考察】皮質脊髄路の新たな経路の構築は3ヶ月をピークに再構築される(2012:原)と報告されている.また,運動機能回復に影響を与える要因として運動先行型の活動と感覚フィードバックを合わせると効果的と述べられている(N Sharma,2016).今回,麻痺の回復時期も踏まえた上で低周波治療器を用いた電気刺激療法と運動先行型トレーニングを参考とした介入が上肢機能の回復に繋がったのではないかと考える.
【本報告の限界】今回の介入において電気刺激療法のみの実施ではないため,電気刺激療法の効果を示すことは困難であり,他の介入も結果に影響を及ぼした可能性があり,介入デザインの再考が必要である.