第58回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

脳血管疾患等

[PA-6] ポスター:脳血管疾患等 6 

2024年11月9日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (大ホール)

[PA-6-13] 回復期で修正CI療法を実施した脳血管疾患患者に対する退院後調査

柴田 仰, 田邉 晃平, 赤穂 善行 (愛仁会リハビリテーション病院 リハ技術部作業療法科)

【はじめに】
 CI療法は脳卒中治療ガイドラインにてグレードAに設定されており,1日の練習時間を調整した回復期における修正CI療法に関する研究も多数報告されている.当院でも修正CI療法を実施しており,実施患者は麻痺手の機能及び使用機会の向上を認めている.しかし,麻痺手の使用を積極的に促す療法の特性上,麻痺手の使用状況は療法直後が最高到達点となっている可能性は否定できない.「療法中はルールや約束があるため意識して使っていた」といった患者の声も度々耳にする.標準的なCI療法に関する先行研究では,麻痺手の使用は療法後も維持されると報告されているが,回復期における修正CI療法での報告は少なく同様の結果が得られるのか検証していく必要性がある.また,麻痺手使用を継続しているのであれば,どのような使用感や意識で使っているのかを明確にするため追跡調査を実施した.
【方法】
 本研究は当院回復期病棟で修正CI療法を実施した患者を対象とした前向き観察研究である.2021年11月1日~2023年10月31日までに修正CI療法を行った患者に対し,療法後4カ月経過時点で,電話にてMotor Activity Log(MAL)と麻痺手の使用感に関するアンケート調査を行った.除外基準は療法後から調査までの期間に新たな疾病や事故により心身機能が低下した患者とした.
 MALは全患者の平均値とSD値を算出し,療法直後と調査時との単純比較を行った.麻痺手の使用感に関するアンケートでは,療法直後と調査時を比べた「①使用頻度の変化」と「②動作の質の変化」,「③麻痺手使用はどの程度意識しているか」について選択回答形式で質問を行った.①は「増えた」「同じくらい」「減った」,②は「使いやすくなった」「同じくらい」「使いにくくなった」,③は「意識して使用」「無意識で使用」「その他」の三件法で質問し単純集計を行った.
 本研究の対象者には研究概要と個人情報保護に関して書面と口頭にて説明を行い署名にて同意を得た.なお,本研究は当院倫理審査委員会の承認後,実施した.
【結果】
 全対象者21名のうち17名から同意を得,15名から追跡調査を実施した.なお,除外基準に該当した患者は2名であった.
 MALのAOUは療法後が平均3.81±0.81点に対し,4か月後が4.22±0.81点であった.QOMは療法後が平均3.4±0.74点に対し,4か月後が3.89±0.78点と共に向上を認めた.
 麻痺手の使用感について,「①使用頻度の変化」は15名全員が「増えた」と回答し,「②動作の質の変化」は11名が「使いやすくなった」,2名が「同じくらい」,2名が「使いにくくなった」との回答であった.「③麻痺手使用はどの程度意識しているか」は,4名が「無意識で使っている」,8名が「意識して使っている」,3名は「その他」で部分的に意識して使っていると回答が得られた.
【考察】
 本研究の結果,療法4か月後のMALは向上を認めた.使用感については,病前のように無意識で使用できている患者は少数であり,中には動作の質も低下したと回答した患者もいたが,麻痺手の使用頻度は全患者が増えたと感じていた.CI療法の治療効果の根幹は学習性不使用の克服であり,麻痺手使用とそれによる課題達成が更なる使用動機の強化と大脳皮質の再構成を生み出すとされている.本研究でも療法後の麻痺手使用に関して継続と改善を認めており,同様の効果が得られたと考える.件数は少ないが標準CI療法と同様に療法後も効果が持続することが示唆された.今後も回復期での修正CI療法が円滑に提供できるよう本研究を役立てたい.