[PA-6-16] 慢性期脳卒中患者の体性感覚障害に対する能動的感覚再学習と低周波治療の試み
【序論】脳卒中後の体性感覚障害は,発症3から6カ月かけて回復するといわれている.また,発症6カ月後の脳卒中患者に対して,能動的感覚再学習を実施した結果,体性感覚の一部が改善した報告があるが,長年に亘り感覚障害を呈した患者が改善したという報告は少ない.
【目的】今回3年前の右視床出血により,左手に重度の体性感覚障害を呈した本事例に対して,能動的感覚再学習,MUROソリューション(低周波治療器)を利用したリハビリテーション,自主トレーニングを提供した結果,体性感覚の一部に改善がみられたため報告する.
【倫理】本報告は医療法人社団 巨樹の会 赤羽リハビリテーション病院の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:2023-B-007).ヘルシンキ宣言に則り,本人,及びご家族に同意説明文に基づき十分な説明を行い,署名による同意を得た.また,インフォームド・コンセントの同意はいつでも撤回可能とした.
【作業療法評価】本事例は脳幹出血により入院された70歳代男性である.今回の出血により左上下肢に運動麻痺がみられた他,3年前,右視床出血により左手に重度の体性感覚障害を呈しており,日常生活に支障がみられていた.入院時,Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)は上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅴであった.Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)は右66点,左22点,STEFは右87点,左0点で左上肢の表在感覚検査で,触覚は10段階のgrade付けのなかで判定し,上腕(Rt/Lt)10/10,前腕10/10,手掌10/2,手背10/0,手指10/0,母指探し試験は右手は正常,左手はⅠ°であった.MMSEは30点で認知面に問題はない.食事は右手のみ使用し,更衣では袖を通す際に左手が引っ掛かり,時間がかかると訴えがあった.
【方法】①感覚障害に対しては,能動的感覚再学習(アクティブタッチ)を実施し,ブロックやペグ,プラスチック容器などを利用した.また,リハビリテーション以外の時間は②MUROソリューションを装着して,ペグ操作などの自主トレーニングを提供した.①は週7回,40から60分実施し,②は週7回,2時間程度実施した.①,②を約2カ月実施した.また,本事例は自主トレーニングの回数や感覚の変化を日常的にメモに残しており,変化を随時セラピストと共有し,生活への利用を検討した.
【結果】BRSは上肢Ⅳ手指Ⅴ下肢ⅤでFMAは右66点,左55点,STEFは右88点,左13点であった.表在感覚検査で,触覚は上腕(Rt/Lt)10/10,前腕10/10,手掌10/7,手背10/7,手指(左手はMPからPIPまでの評価でPIPからDIPにかけての感覚改善はみられていない)は母指10/1,示指10/4,中指10/4,環指10/6,小指10/3.母指探し試験に変化はなかった.生活動作において,手掌と手背・手指の感覚に変化が出てきた際,食事場面では牛乳パックやヨーグルトのカップなど,手掌全体を使って握ることができるようになり,更衣では袖を通す際の手の引っかかりが減り,時間の短縮がみられた.
【考察】本事例の特徴としてリハビリテーション,自主トレーニングも併せて,一日約3時間は手指の訓練を実施していた.感覚障害の改善は,能動的感覚再学習の他,受動的感覚トレーニング(電気刺激など)や訓練の量を確保することが必要とされている.能動的感覚再学習を実施したリハビリテーションだけではなく,低周波治療器を使用した積極的な手の利用が,長年に亘る体性感覚障害に対しても改善の可能性があることが示唆された.また,手の感覚の変化を習慣的にセラピストと共有したこと,方法を一緒に検討した事が,生活動作への汎化に繋がったと考える.
【目的】今回3年前の右視床出血により,左手に重度の体性感覚障害を呈した本事例に対して,能動的感覚再学習,MUROソリューション(低周波治療器)を利用したリハビリテーション,自主トレーニングを提供した結果,体性感覚の一部に改善がみられたため報告する.
【倫理】本報告は医療法人社団 巨樹の会 赤羽リハビリテーション病院の倫理委員会の承認を得て行った(承認番号:2023-B-007).ヘルシンキ宣言に則り,本人,及びご家族に同意説明文に基づき十分な説明を行い,署名による同意を得た.また,インフォームド・コンセントの同意はいつでも撤回可能とした.
【作業療法評価】本事例は脳幹出血により入院された70歳代男性である.今回の出血により左上下肢に運動麻痺がみられた他,3年前,右視床出血により左手に重度の体性感覚障害を呈しており,日常生活に支障がみられていた.入院時,Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS)は上肢Ⅲ手指Ⅳ下肢Ⅴであった.Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)は右66点,左22点,STEFは右87点,左0点で左上肢の表在感覚検査で,触覚は10段階のgrade付けのなかで判定し,上腕(Rt/Lt)10/10,前腕10/10,手掌10/2,手背10/0,手指10/0,母指探し試験は右手は正常,左手はⅠ°であった.MMSEは30点で認知面に問題はない.食事は右手のみ使用し,更衣では袖を通す際に左手が引っ掛かり,時間がかかると訴えがあった.
【方法】①感覚障害に対しては,能動的感覚再学習(アクティブタッチ)を実施し,ブロックやペグ,プラスチック容器などを利用した.また,リハビリテーション以外の時間は②MUROソリューションを装着して,ペグ操作などの自主トレーニングを提供した.①は週7回,40から60分実施し,②は週7回,2時間程度実施した.①,②を約2カ月実施した.また,本事例は自主トレーニングの回数や感覚の変化を日常的にメモに残しており,変化を随時セラピストと共有し,生活への利用を検討した.
【結果】BRSは上肢Ⅳ手指Ⅴ下肢ⅤでFMAは右66点,左55点,STEFは右88点,左13点であった.表在感覚検査で,触覚は上腕(Rt/Lt)10/10,前腕10/10,手掌10/7,手背10/7,手指(左手はMPからPIPまでの評価でPIPからDIPにかけての感覚改善はみられていない)は母指10/1,示指10/4,中指10/4,環指10/6,小指10/3.母指探し試験に変化はなかった.生活動作において,手掌と手背・手指の感覚に変化が出てきた際,食事場面では牛乳パックやヨーグルトのカップなど,手掌全体を使って握ることができるようになり,更衣では袖を通す際の手の引っかかりが減り,時間の短縮がみられた.
【考察】本事例の特徴としてリハビリテーション,自主トレーニングも併せて,一日約3時間は手指の訓練を実施していた.感覚障害の改善は,能動的感覚再学習の他,受動的感覚トレーニング(電気刺激など)や訓練の量を確保することが必要とされている.能動的感覚再学習を実施したリハビリテーションだけではなく,低周波治療器を使用した積極的な手の利用が,長年に亘る体性感覚障害に対しても改善の可能性があることが示唆された.また,手の感覚の変化を習慣的にセラピストと共有したこと,方法を一緒に検討した事が,生活動作への汎化に繋がったと考える.