[PA-6-18] 軽度認知障害が疑われる軽症脳梗塞患者の回復期リハビリテーション病棟入棟時における栄養状態と大脳白質病変との関連
【はじめに】リハビリテーション(以下,リハ)患者には高齢者が多く,低栄養の合併率は,49-67%と報告されている(吉村ら, 2018).また,リハ関連の施設や病院で最も低栄養の割合が高かったと報告されている(Kaiser MJ, 2010).軽度認知障害(以下,MCI)の粗有病率は,約17.0%であり(Ninomiyaら,2020),適切な治療を行わなければ認知機能の低下が進行し,1年間で約10%の者が認知症へ移行する(Bruscoliら, 2004).さらに低栄養状態が認知症への進展のリスクを増加させることがわかっている.大脳白質病変(以下,WML)において,特に高度な脳室周囲高信号域(以下,PVH)や深部皮質下白質病変(以下,DWMH)を有する例は認知障害発症の高リスク群である.今回,MCIが疑われる軽症脳梗塞症例の当院回復期リハ病棟入棟時における栄養状態とWMLとの関連について検討した.
【対象】2017年4月から2022年3月までに当院回復期リハ病棟に入院した初発脳梗塞症例で,急性期病院においてMRI T1・T2強調画像,FLAIR画像を施行した症例109例の内,NIHSSが0~9点の軽症脳梗塞患者で,MCIの診断基準を基にMMSEの点数が24点から26点のMCIの疑いがある48例を対象とした.平均年齢は74.6±10.0歳,男性22例,女性26例.既往に脳血管障害・認知症を認める症例,入院前のADLが介助レベルの症例,入院中に死亡転帰に至った症例は除外した.
【方法】診療録を基に年齢,性別,病変側,急性期入院時NIHSS,在院日数(回復期リハ病棟),回復期入院時・退院時MMSE,Trail Making Test(TMT),リバーミード行動記憶検査 (RBMT),Vitality Index,FIMについて後方視的に調査した.また,FLAIR画像上検出される側脳室周囲に限局するPVHとDWMHの程度を,Fazekasの分類に従って,各々4段階に分類し評価した.画像の読影は専門医の指導の下に行なった.栄養状態の評価には,GNRI(Geriatric Nutritiona1 Risk Index)を用いた.計算式は14.89×Alb値(g/dL)+41.7×(現体重/標準体重)とした.GNRIは,92以上で軽度栄養リスクまたはリスクなし,92未満で中等度から重度の栄養リスクありと判定される指標である.GNRIが92以上で栄養障害のリスクなし(栄養障害なし群28名),92未満で栄養障害のリスクあり(栄養障害あり群20名)に分類し検討した.統計処理にはMann-Whitney検定を用い,多変量解析には重回帰分析を用いた.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.なお,本研究は当法人研究倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】栄養障害あり群は,なし群と比較し,年齢が高く(P=0.008),入院時TMT-A(P=0.034)/B(P=0.008)・RBMT(P=0.002),退院時TMT-B(P=0.006)・RBMT(P=0.042)・FIM-M(P=0.005)が低い結果となった.また,DWMHのscoreが高い(P=0.043)結果となった.PVHのscoreでは差はみられなかった.DWMHを目的変数とし,年齢,TMT-A/B,RBMT,FIM-M,GNRIを説明変数として重回帰分析を行った結果,GNRIのみが有意な説明変数となった(β=1.204,p=0.006).
【考察】今回の結果より,栄養状態の悪化が,WML,特にDWMHの進行に関連することが示唆された.WMLの存在が注意機能や記憶の低下に影響を及ぼし,退院時におけるFIM運動項目に反映されたものと推察された.MCIの状態に身体的フレイルが共存する病態としてコグニティブフレイルの概念が提唱されている.脳血管障害,低栄養,認知障害は,相互に影響しあい,悪循環を形成しており,この悪循環を断ち切るためには,プレフレイルやMCIの段階で早期より適切なリハビリテーション栄養を行うことが重要であると思われる.
【対象】2017年4月から2022年3月までに当院回復期リハ病棟に入院した初発脳梗塞症例で,急性期病院においてMRI T1・T2強調画像,FLAIR画像を施行した症例109例の内,NIHSSが0~9点の軽症脳梗塞患者で,MCIの診断基準を基にMMSEの点数が24点から26点のMCIの疑いがある48例を対象とした.平均年齢は74.6±10.0歳,男性22例,女性26例.既往に脳血管障害・認知症を認める症例,入院前のADLが介助レベルの症例,入院中に死亡転帰に至った症例は除外した.
【方法】診療録を基に年齢,性別,病変側,急性期入院時NIHSS,在院日数(回復期リハ病棟),回復期入院時・退院時MMSE,Trail Making Test(TMT),リバーミード行動記憶検査 (RBMT),Vitality Index,FIMについて後方視的に調査した.また,FLAIR画像上検出される側脳室周囲に限局するPVHとDWMHの程度を,Fazekasの分類に従って,各々4段階に分類し評価した.画像の読影は専門医の指導の下に行なった.栄養状態の評価には,GNRI(Geriatric Nutritiona1 Risk Index)を用いた.計算式は14.89×Alb値(g/dL)+41.7×(現体重/標準体重)とした.GNRIは,92以上で軽度栄養リスクまたはリスクなし,92未満で中等度から重度の栄養リスクありと判定される指標である.GNRIが92以上で栄養障害のリスクなし(栄養障害なし群28名),92未満で栄養障害のリスクあり(栄養障害あり群20名)に分類し検討した.統計処理にはMann-Whitney検定を用い,多変量解析には重回帰分析を用いた.統計学的有意水準は危険率5%未満とした.なお,本研究は当法人研究倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】栄養障害あり群は,なし群と比較し,年齢が高く(P=0.008),入院時TMT-A(P=0.034)/B(P=0.008)・RBMT(P=0.002),退院時TMT-B(P=0.006)・RBMT(P=0.042)・FIM-M(P=0.005)が低い結果となった.また,DWMHのscoreが高い(P=0.043)結果となった.PVHのscoreでは差はみられなかった.DWMHを目的変数とし,年齢,TMT-A/B,RBMT,FIM-M,GNRIを説明変数として重回帰分析を行った結果,GNRIのみが有意な説明変数となった(β=1.204,p=0.006).
【考察】今回の結果より,栄養状態の悪化が,WML,特にDWMHの進行に関連することが示唆された.WMLの存在が注意機能や記憶の低下に影響を及ぼし,退院時におけるFIM運動項目に反映されたものと推察された.MCIの状態に身体的フレイルが共存する病態としてコグニティブフレイルの概念が提唱されている.脳血管障害,低栄養,認知障害は,相互に影響しあい,悪循環を形成しており,この悪循環を断ち切るためには,プレフレイルやMCIの段階で早期より適切なリハビリテーション栄養を行うことが重要であると思われる.